交通事故で全治1週間の診断を受けたとき受け取れる慰謝料は?

2022年07月25日
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交通事故で全治1週間の診断を受けたとき受け取れる慰謝料は?

大阪府警察が公表している「大阪の交通白書(令和3年版)」によると、令和3年中に大阪府内で発生した交通事故の件数は、2万4818件でした(ただし、高速道路交通警察隊の管轄する道路を除く)。そのうち、岸和田市内で発生した交通事故件数は562件でした。

交通事故でケガをした場合、比較的軽微なケガのために、全治1週間と診断を受けることがあります。しかし、たとえ全治1週間と診断を受けたとしても、「全治」と「完治」は異なることから、必ずしも1週間でケガが完治するわけではありません。

適切な慰謝料を受け取るためにも、診断書に記載の全治日数にかかわらず、改善するまで、しっかりと治療を継続することが大切です。

今回は、交通事故で全治1週間の診断を受けたときの対応方法や注意点、そして慰謝料について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、医師による全治1週間の判断とは

比較的軽微なケガであれば、医師から全治1週間との診断がなされることがあります。この場合の全治1週間とはどのような意味を持つのでしょうか。

  1. (1)全治1週間の意味

    交通事故でケガをした場合には、物損事故ではなく人身事故で処理してもらうために警察署に診断書を提出する必要があります。その診断書には、通常「全治〇週間」という記載がなされています。

    全治とは、一般的に治療に必要な期間のことをいい、ケガが完治するまでの期間ではありません。全治の期間は、治療を担当した医師が初期治療の段階で、ケガが治癒するまでの期間を見込みで判断したものになります。明確な基準があるわけではなく、医師の経験に基づいて決められるものですので、実際の治療期間とは異なる場合があります。

  2. (2)全治1週間と判断されがちな症状

    全治1週間という診断は、交通事故によるケガの中でも比較的軽微なケガになります。

    具体的には、以下のような症状については、全治1週間と診断される可能性があります。

    • むちうち
    • 打撲
    • 挫創
    • 挫傷
    • 捻挫
    など

2、完治するまで保険会社の書類に記入すべきではない理由

全治1週間と診断された場合には1週間経過後に保険会社から示談書等の書類への記入を求められることがあります。しかし、以下の理由から、これら保険会社からの書類に直ちに記入することは控えるようにしましょう。

  1. (1)治療の継続が必要な場合がある

    全治1週間と診断されたとしても、1週間でケガが完治するとは限りません。全治までの期間は、医師が治療の初期段階で経験に基づいて診断したに過ぎず、その後の治療経過によっては、完治までの期間が延びることもあります。

    そのため、保険会社の担当者から「1週間を過ぎたため治療は終了です」と言われたとしても、保険会社には治療の終了を判断する権限はありませんので、それに従う必要はありません

    治療の終了時期は、治療を担当している医師と相談しながら決めるようにしましょう。

  2. (2)後遺障害が生じる可能性がある

    全治1週間と診断されたとしても、痛みやしびれなどの症状が残る場合もあります。

    治療を継続したとしても完治せず、このような症状が残ってしまった場合には、後遺障害の認定を受けることができる場合があります。

    注意したいのは、「全治1週間」と診断された時点で保険会社の書類に記入をして示談をしてしまうと、その後、たとえ後遺障害が生じていたとしてもそれに対する賠償を受けることができなくなってしまう点です。

    後遺障害の認定を受けることができれば、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求も可能になりますので、何らかの症状が残っているような場合には、事故から1週間を経過したとしても直ちに治療を中断するのではなく、治療を継続することが大切です。

  3. (3)不利な示談内容の場合がある

    保険会社から示談書への記入を求められたとしても、すぐにそれに応じてはいけません。

    保険会社は、交通事故の被害者に対して賠償金や保険金を支払う立場にありますので、自社の利益を守る必要があります。そのため、必ずしも被害者に有利な示談内容であるとは限りません。

    不利な示談内容であったとしても、一度サインをしてしまうと後日示談を撤回することはできなくなってしまいます

    そのため、保険会社から示談書への記入を求められた場合には、自分だけで判断するのではなく、一度弁護士に相談をすることをおすすめします。

3、弁護士に相談することでより適切な慰謝料を受け取れる

交通事故の被害にあった場合には、弁護士に相談をした方が適切な慰謝料を受け取ることができる可能性が高くなります。その理由は、慰謝料の額を決めるために、3つの基準が存在しているからです。

  1. (1)慰謝料の算定基準

    交通事故でケガをした場合には、それによって被った精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。これを「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」といいます。

    しかし、精神的苦痛の程度は、人によってさまざまであるところ、その人の主観を基準にしてしまうと不公平な結果になってしまいます。そこで、慰謝料の金額については、以下のような算定基準が設けられており、それに従って算定できるようになっています。

    どの算定基準を採用するかによって、交通事故の慰謝料額に差がでますので、適切な算定基準を採用することが大切です。

    ① 自賠責保険基準
    自賠責保険とは、車を運転する際にすべての車の所有者に対して加入が義務付けられている強制保険です。自賠責保険基準は、被害者に対して最低限の補償を提供するという目的から、3つの算定基準の中で最も慰謝料の金額が低くなります。

    交通事故の被害者が自賠責保険に保険金を請求した場合には、この自賠責保険基準に基づいて算定された慰謝料が支払われることになります。

    ② 任意保険基準
    任意保険基準とは、任意保険会社が独自に定めている慰謝料の算定基準です。具体的な計算方法については、外部に公表されていませんので、任意保険基準による慰謝料の算定方法は不明ですが、自賠責保険基準と同程度かそれに少し上乗せした程度の金額であることがほとんどです。

    加害者の任意保険会社から示談の提案がなされる場合には、この任意保険基準によって算定された慰謝料の金額が提示されます。

    ③ 裁判所基準(弁護士基準)
    裁判所基準とは、過去の裁判例の蓄積によって数値化された慰謝料の算定基準です。3つの算定基準の中では、最も慰謝料の金額が高くなる基準です

    そのため、交通事故の被害者としては、この裁判所基準を用いて慰謝料額を算定するのが得策です。ただし、裁判所基準を用いることができるのは、弁護士が代理人として保険会社と交渉をする場合か裁判をした場合に限られます。個人で保険会社と交渉をする場合には、裁判所基準を用いることはできないので注意が必要です。
  2. (2)具体的なケースでの慰謝料額

    具体的なケースで、慰謝料の金額はどの程度異なってくるのでしょうか。任意保険基準の算定方法は不明ですので、以下では、自賠責保険基準と裁判所基準による慰謝料額を見ていきます。

    (設例)
    交通事故によって軽度の打撲と診断され、実通院日数10日間、総治療期間30日


    ① 自賠責保険基準
    自賠責保険基準では、慰謝料として1日につき4300円が支払われます。支払いの対象となる日数は、以下のうちいずれか少ない方となります。

    • 実通院日数の2倍
    • 総治療期間

    上記の例では、実通院日数の2倍(10日×2)が総治療期間(30日)よりも短くなりますので、実通院日数の2倍が適用されます。

    その結果、自賠責保険基準での慰謝料額は、8万6000円になります。

    ② 裁判所基準
    裁判所基準では、原則として入通院期間を基礎として慰謝料を算定します。その際には、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」の別表ⅠまたはⅡを用いて、慰謝料額の計算をします。

    設例に沿って別表Ⅱで算出すると、裁判所基準での慰謝料額は19万円となります。

4、事故後、適切な慰謝料を受け取るためにすべきこと

交通事故の被害にあった場合には、適切な慰謝料を受け取るためにも以下のような対応が必要になります。

  1. (1)すぐに医師の診断を受ける

    交通事故の被害にあった場合には、すぐに病院を受診して医師の診断を受けることが大切です。

    軽症であった場合には、病院の受診が面倒になり、ついつい後回しにしてしまいがちですが、事故から受診までの期間が空いてしまうと事故とケガとの因果関係が否定されてしまい、治療費や慰謝料の支払いに影響が及ぶ可能性があります。

    そのため、軽症であったとしても事故当日か遅くとも翌日には病院を受診するようにしましょう

  2. (2)適切に通院をする

    交通事故の慰謝料額は、通院日数や通院期間に応じて変わってきます。

    無意味な治療をする必要はありませんが、痛みやしびれなどがある場合には、適切な頻度で通院を継続することが大切です。症状がよくなったからといって、自己判断で通院を中断してしまうと、再度症状がでたとしても、中断日以降の治療については事故とケガとの因果関係が否定されてしまうおそれがありますので注意が必要です。

  3. (3)弁護士に相談をする

    交通事故の被害にあった場合には、上記のように治療を続けるとともに、早めに弁護士に相談をすることが大切です。

    弁護士であれば被害者に代わって保険会社と交渉をすることができますので、面倒な示談交渉のすべてを弁護士に任せることによって精神的負担を軽減するとともに、治療に専念することが可能になります。

    裁判所基準を用いて示談交渉をすることができるのは弁護士だけですので、弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者個人で対応するよりも慰謝料の金額を増額することができる可能性が高まります

    少しでも有利な条件で示談をするためにも、弁護士への依頼を検討しましょう。

5、まとめ

交通事故で全治1週間と診断された場合には、比較的軽微なケガであることが多いです。しかし、治療経過によっては治療期間が1週間を超えることもありますので、1週間たったからといって、安易に治療を中断しないようにしましょう。

また、適切な慰謝料を請求するためには弁護士のサポートが不可欠となりますので、交通事故の被害にあった場合には、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています