交通事故で腱板損傷に……後遺障害が認定されるケースを解説
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令和元年中に、大阪府内で発生した交通事故の死傷者数は3万6794人、そのうち二輪乗車中の死者数は32人でした。
二輪車で事故を起こした場合、四輪車よりも怪我が重くなり、後遺障害が出ることもあるでしょう。特に、二輪車は転倒したことによって、腱板損傷という診断を受けることがあります。腱板損傷と診断されて、治療の甲斐なく症状が残ってしまったらどうなるのでしょうか。
本記事では、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が腱板損傷と診断された方に向けて、腱板損傷の概要や後遺障害の認定、受け取ることができる慰謝料等について解説します。
1、腱板損傷(けんばんそんしょう)とは
腱板損傷の原因や症状、治療法を確認しておきましょう。
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(1)腱板損傷の発症原因と症状
腱板とは、肩関節付近の筋肉の腱で構成される部位で、具体的には、以下の4つの筋肉の腱で構成されています。
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
肩の前と後に位置しており、肩をさまざまな角度に動かす役割を持っています。
ちなみに、腱とは、骨と筋肉をくっつけている筋肉の組織です。腱の損傷具合に応じて、完全断裂と、部分断裂という状態にわけられます。 -
(2)腱板損傷の治療法
バイクの転倒など、外部からの衝撃による腱板損傷と診断された場合、受傷直後は三角巾で固定して1週間から2週間ほど安静にする必要があります。痛みがある場合は、水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤を注射する等の措置がとられます。
こういった、治療を保存療法といいますが、保存療法で痛みや運動障害が改善されない場合は、手術も検討されます。手術をした場合は、4週間ほど固定した後、3か月から4か月ほどかけてリハビリを行います。
2、交通事故における後遺障害とは?
交通事故における後遺障害について確認しておきましょう。腱板損傷で、適切な治療を受けたにもかかわらず、症状が残っているという場合は、後遺障害に該当する可能性がありますので、後遺障害についての基礎知識を知っておく必要があります。
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(1)後遺障害ってどんな状態?
一般的には、後遺症とは、治療をしても、機能障害や痛みなどがある状態のことです。交通事故における後遺障害とは、一定期間適切な治療を受けているにもかかわらず、治癒せず労働能力が低下してしまった状態で、自賠責保険の基準の後遺障害等級が認定された状態のことをいいます。
交通事故において、後遺障害と認定されるためには、医師に後遺症があること、労働能力が低下していること、そしてそれらの原因が交通事故にあることを診断してもらう必要があります。さらに、自賠責保険の基準の後遺障害等級の認定を受けなければなりません。つまり、腱板損傷で痛みが残っている、肩が上がらないといった症状が残っているだけでは、後遺障害とはいえないのです。 -
(2)後遺障害等級が認定されると、受け取ることができる慰謝料と逸失利益
後遺障害等級が認定された場合、加害者側から、後遺障害の慰謝料と逸失利益を受け取ることができます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛を償うものです。慰謝料は、後遺障害と認定されない、「障害」だけの状態であっても治療期間もしくは通院日数に応じて支払われます。(これを傷害慰謝料といいます。)後遺障害等級が認定された場合は、傷害慰謝料にプラスして慰謝料が支払われるのです。後遺障害の慰謝料は、認定された後遺障害の等級に応じて算定されます。
さらに、「逸失利益」と呼ばれるお金も支払われます。逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより、将来受け取るはずだった利益が減少する場合に支払われるお金です。たとえば、後遺障害が原因で配置換えとなってしまい、将来にわたって収入が減少したという場合は、逸失利益が支払われます。
3、腱板損傷の後遺障害の内容と想定できる等級
では、腱板損傷の後遺症はどのようなものなのでしょうか。また、後遺障害等級が認定されるのはどのような症状がある場合でしょうか。腱板損傷の後遺障害について解説します。
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(1)腱板損傷の後遺症とは
腱板損傷の主な後遺症は、機能障害と、神経症状の2つに大別されます。
● 機能障害
腱板損傷の機能障害は、主に「肩関節の可動域制限」です。可動域制限とは、肩の関節が健康な側の肩と同じように動かすことができない状態のことをいいます。制限の程度によって、認定される後遺障害の等級が異なります。
原則として、自分で肩関節を完全に動かすことができなくても、他人が動かすことができれば、機能障害があるとは認められません。
● 神経症状
神経症状とは、腱板損傷の痛みが残っている状態のことです。痛みが残っている場合は、痛みの度合いではなく、痛みを画像などで医学的に証明できるか、推定できるかどうかで、後遺障害等級が異なります。
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(2)腱板損傷で認定される後遺障害等級
腱板損傷で、認定される後遺障害等級は、以下のいずれかです。後遺障害等級は、数字が小さいほど後遺障害の程度が重く、受け取ることができる慰謝料や逸失利益が多くなります。
● 機能障害の後遺障害等級
- 肩関節の可動域が2分の1以下に制限……第10級10号
- 肩関節の可動域が4分の3以下に制限……第12級6号
- 画像などで神経症状が残っていることを証明できる……第12級13号
- 画像などで神経症状が残っていることを証明できないが、医学的に残っていることが推定できる……第14級9号
4、腱板損傷で後遺障害認定を受けるためのポイントと注意点
最後に腱板損傷で、後遺障害等級の認定を受けるためのポイント、注意点を解説します。
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(1)腱板損傷で後遺障害等級の認定を受けるためのポイント
後遺障害等級の認定ポイントは以下の2つです。
● 交通事故と腱板損傷の因果関係が明らかであること
腱板損傷で後遺障害等級を受けるためには、交通事故と腱板損傷の因果関係が明らかでなければなりません。「事故直後に肩の打撲」や、「腱板損傷」と診断されていること、そして症状固定まで連続して経過診断書や診療報酬明細書などで、診断傷病名等が確認できている必要があります。
事故前に、腱板損傷と診断されている診断書がある場合は、「交通事故による腱板損傷ではない」とみなされるおそれがあります。
● MRIや画像による腱板損傷の確認
MRIやレントゲンなどで、腱板損傷を確認しなければなりません。断裂がある場合はMRIで確認できます。また、レントゲンによっても、腱の断裂を確認することができます。 -
(2)腱板損傷で後遺障害等級の認定を受ける際の注意点
後遺障害等級の認定を受ける方法は、「事前認定」と「被害者請求」の2通りです。このうち、一般的なのは加害者側の保険会社担当者が行う「事前認定」という手続きです。被害者が書類を用意する必要はなく、手間はかかりませんが、被害者側の保険会社担当者が行うため、必ずしも被害者に親身になって手続きを行うとは限りません。
一方で、被害者請求は、被害者本人が書類を用意して自賠責保険会社に後遺障害等級の認定を求めるものです。手間はかかる分、自分で後遺障害等級の認定を受けやすいように検査を受けたり診断書を用意したりできるため、後遺障害等級が認定される可能性が高まります。
しかしながら、手続きが煩雑で、適切な資料を用意できない可能性もあることから、個人ではなく弁護士に後遺障害等級の認定手続きを依頼するのが得策でしょう。
腱板損傷の、後遺症がつらく、後遺障害等級の認定を受けたいと考えている方は弁護士に相談してみましょう。
5、まとめ
腱板損傷は、バイクで転倒したときに負いやすい怪我です。また腱板損傷は、自然治癒しにくく後遺症が出やすい怪我でもあります。
この場合は、医師による診断を受けて、労働力の低下が認められ、交通事故との因果関係があると判断されると、後遺障害等級を受けることができる場合があります。後遺障害等級が認定されると、通常の慰謝料に加えて、後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができます。
交通事故に遭い肩腱板にケガを負ってしまった方は、弁護士への相談をご検討ください。ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が、親身になって状況を伺い、適切な補償が受けられるよう、サポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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