交通事故の治療費の打ち切りを打診されたら? 延長する方法とは
- 治療・症状固定
- 交通事故
- 治療費
- 打ち切り
大阪府警が発表した令和2年版の交通白書によると、令和2年中に岸和田市で発生した交通事故は634件でした。そのうち、767名の方が負傷し2名の方が亡くなっています。
交通事故の被害に遭った多くの方は、病院でケガの治療を行うでしょう。その際、通院中にもかかわらず、加害者の保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。また打ち切りを打診されたらどのような対応をすべきなのでしょうか。
本コラムでは、交通事故の治療費の打ち切りにあいそうなとき、被害者の方が押さえておきたい基礎知識や、適切な対応方法について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。
1、治療費の打ち切り問題について
-
(1)治療費の打ち切りとは
交通事故により身体にケガを負うと、ケガの治療が終了した後、加害者が加入する保険会社から一定の賠償金が支払われます。事故のために支出した治療費・通院費、精神的苦痛や後遺障害に対する慰謝料など、事故によって受けた損害は、賠償金という形で補償されます。
しかし、ケガが完治していないにもかかわらず、保険会社から「治療を終了する時期なので病院への治療費の支払いを打ち切ります」「症状固定なので支払いを停止します」などと言われることがあります。
症状固定とは、医師が治療を継続してもこれ以上大幅に改善する見込みがない状態のことです。保険会社が支払う治療関係費は、原則、症状固定までとされています。したがって、症状固定日が交通事故に基づく損害賠償の区切りとなり、それ以降の治療関係費は交通事故による損害として計上されない(=加害者が払うべき賠償金とならない)ことになります。
したがって、保険会社から「症状固定にしましょう」といわれた場合には、保険会社としては治療費を打ち切りたいと考えていることを意味しています。ただし、これはあくまでも保険会社の見解であって、保険会社のいう症状固定日以降の治療が不要であるとか、治療を受けてはいけない、ということでありませんので注意してください。 -
(2)治療費の打ち切りによって生じる問題
保険会社の治療費の打ち切りが、主治医が症状固定とした、もしくは完治したという判断に基づくものであれば、これに従う必要があるでしょう。
しかし、本来は治療を継続する必要があるのに、治療費の打ち切りを打診されたことで通院を止めてしまえば、「その後通院を再開しても治療費を保険会社に請求できなくなる」「治療期間が足りず適切な後遺障害等級認定を得られない」などといった問題が生じます。
また、後遺障害等級認定を受けた場合には、等級に応じた後遺障害慰謝料と、労働能力の一部喪失による逸失利益を相手方に請求することができます。そのため後遺障害認定を受けられるかどうかによって、大幅に慰謝料を含めた賠償金の総額に差が生じることになります。つまり、保険会社の治療費の打ち切りに対してどのような対応をするかによって、適切な損害賠償金を受け取れるかどうかが決まるといえるでしょう。
2、保険会社が治療費の打ち切りを打診する理由とは?
前述のとおり、治療費の打ち切りによって、受け取れる損害賠償金が大幅に減少してしまう可能性があります。
つまり、保険会社が可能な限り早期に治療費の打ち切りをすることで、治療関係費はもちろん、後遺障害慰謝料や後遺症逸失利益の支払いを抑えることに繋がるのです。
保険会社は営利企業ですので、必ずしも100%被害者のためだけを考えて症状固定をすすめたり治療費の打ち切りを打診する立場ではないことを理解されておくとよいでしょう。
3、交通事故で多いケガ3つ。治療期間の目安
交通事故によるケガの治療にかかる時間などは、ケガの内容や程度によって異なります。しかし、保険会社は日々大量の案件を処理しなければならないため、被害者ひとりひとりに合わせて治療期間を設定する可能性は低く、一般的とされる治療期間を目安として治療費の打ち切りを打診してくることがほとんどといえるでしょう。
下記が、交通事故の代表的なケガにおける、治療期間の目安です。
-
(1)打撲の目安……1か月
交通事故により身体を強打したときに、骨折等は認められないものの痛みや腫れといった症状がでるのが打撲です。交通事故のケガでは比較的軽度の症状とみられ、他の神経症状や骨折などの症状がなければ、痛みや腫れが引くことで治療終了となります。
保険会社の打撲における治療期間の目安は1か月程度に設定されていることが多いでしょう。
ただし、頚部打撲や腰部打撲の場合は、下記のむち打ちと同様に扱われることが多いようです。 -
(2)むち打ちの目安……3か月
むち打ちは、交通事故の追突等による衝撃で頭や首などに負荷がかかり損傷することによって生じる症状です。むち打ちの症状は、首や腰などの痛みだけでなく、頭痛やめまい、手足のしびれなど、多岐にわたる可能性があります。
また、むち打ちは自覚症状が主になり、レントゲンなど外部からの他覚的な証明が難しいのも特徴です。痛みの感じ方についても個人差が大きく、適切な治療期間が客観的に証明しにくいケガといえるでしょう。
保険会社では一般的に3か月程度を目安として治療費打ち切りを打診してくることが多いようです。 -
(3)骨折の目安……6か月
骨折の場合は、骨が癒合し、リハビリで機能が回復する、もしくはこれ以上の回復が見込めないと判断された時点で治療が終了し、症状固定となります。
骨折した部位や程度によって治療期間は異なりますが、保険会社では骨折の治療期間を6か月と設定しているところが多いようです。
4、治療費の打ち切りへの対応方法
保険会社からの治療費打ち切りに対して、個人で直接保険会社と交渉することもできますが、治療期間の延長を認めさせるには明確な証拠(レントゲン写真や、医師の診断書等)が必要となります。
交通事故に経験の深い弁護士に相談すれば、ストレスフルな保険会社との交渉を一任することができるのはもちろん、適切な後遺障害の認定をサポートしてくれたり、それによる後遺障害慰謝料等の賠償金の増額を期待することもできます。
なぜなら、弁護士は、保険会社の損害賠償金の算出方法「自賠責基準・任意保険基準」ではなく、それらの基準よりもより高額な賠償金が算出されやすい「裁判所基準」によって算出した金額で慰謝料等の交渉を行いますので、保険会社が提示する額よりも多くの慰謝料を得る可能性が高まるからです。
5、治療費が打ち切られてしまった場合
たとえ治療費が打ち切られても、痛みが残っているなど、治療の必要性を感じるのであれば、自身の健康保険を使って治療を続けることが大切です。
なお、交通事故は健康保険が使用できないと考える方もいらっしゃいますが「第三者行為による傷病届」を提出すれば、適用になることもあります。治療の継続を望む場合は、かかりつけ医や自身の加入する健康保険の窓口に相談してみましょう。
治療費打ち切りによって通院をやめてしまえば、適切な後遺障害等級認定を受けられない、または通院期間や通院頻度に応じて支払われる入通院慰謝料の金額が減少するなどの可能性があります。
主治医から、「保険会社の治療費の打ち切りが早すぎる」という意見をもらうことができれば、自身で支払った治療費も、後から保険会社に支払ってもらえる可能性が出てきます。
6、まとめ
本コラムでは、交通事故の治療費の打ち切りを打診されたときに被害者の方が押さえておきたい注意点や適切な対応方法についてご説明していきました。ケガの治療が必要な時期に相手方保険会社からの治療費打ち切りを打診されることは、被害者にとって大きな負担です。少しでも負担を軽減して納得できる示談にするためにも、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士は、交通事故に関する豊富な知識と経験で被害者の方にとって有利な解決が得られるように全力でサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|