住宅ローンがある家を残して債務整理はできる? 岸和田の弁護士が解説

2020年06月12日
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住宅ローンがある家を残して債務整理はできる? 岸和田の弁護士が解説

平成29年の岸和田市の発表によると、岸和田市民の持ち家率は65.3%で、大阪府平均の53.0%を上回っており、定住意識が高い傾向にあることが読み取れます(社会資本総合整備計画 地域住宅計画「岸和田市地域」)。

しかし突然のリストラや景気の悪化など、思わぬ収入の変動によって多重債務に陥り、住宅ローンのほかに抱えた借金を返済できなくなってしまうケースもあるでしょう。その場合、住宅ローンがまだ残っているわが家を手放さず、債務整理をすることはできるのでしょうか。また、債務整理をしたら住宅ローンを組めず、持ち家を諦めなければならないのではないかと思われる方もいるかもしれません。

本コラムでは、そういった不安がある方へ、住宅ローンがある家を手放さずに債務整理を行う方法をベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、借金や住宅ローンを滞納するとどうなるか

  1. (1)借金を滞納した場合

    カードのキャッシングや消費者金融などから借り入れた借金などを返済できず滞納すると、以下のようなことが起こる可能性があります。

    • 債権者からの取り立てや督促
    • 遅延損害金(遅延利息)の発生
    • 債権者が裁判所に、債務者の給与差し押さえの申し立てを行う
  2. (2)住宅ローンを滞納した場合

    家を新築・購入する時に、銀行などの金融機関から住宅ローンを融資してもらっていた場合はどうなるのでしょうか。

    住宅ローンを組む際、金融機関は住宅ローンの返済ができなくなった時のために「抵当権」という担保権を土地や建物に設定しています。そして債務者が住宅ローンを返済することができず、定められた期間以上の滞納をした場合には、最終的に金融機関は設定した「抵当権」を実行し、家を競売にかけ、その売却代金から優先的に返済残額を回収することになります。

    つまり、住宅ローンを定められた期間以上に滞納した場合、家を失うことになるということです。

2、債務整理の方法にはどのようなものがあるか

借金がある場合、早期に適切な債務整理を行うことで、生活を立て直せる可能性が高くなります。

債務整理には、主に以下の4つの方法があります。

  1. (1)任意整理

    任意整理は、裁判所を通さず直接債権者と交渉して債務を整理する方法です。一般的には、将来発生する利息や遅延損害金などを免除してもらい、残りの債務を分割して毎月の支払額を減額し、債務者の負担を減らしながら返済していく手続きをいいます。

    ただし抵当権などの担保を持っている債権者は、たとえ返済がなくても担保から債権を回収することができるので、任意整理に応じてもらうことが難しいケースも少なくありません。

    債権者と交渉しても受け入れてもらうことが難しいケースは、まずは弁護士に相談することをおすすめします。なお、すでに長期間にわたって返済を続けている場合には、弁護士が介入した結果、過払い金が発生していることが明らかになる可能性もあります。過払い金がある場合には、弁護士が債権者に過払い金請求を行い、過払い分を回収できることがあります。

  2. (2)特定調停

    特定調停は、簡易裁判所で調停委員を交えて債務者が債権者と交渉して債務を整理する方法です。調停では、債務の減額や毎月の弁済額の減額や利息の免除などの条件を交渉して、債権者との和解を試みます。和解が成立すれば判決と同様の効力を持つ和解調書が作成されます。

    調停委員を交えて行うこともあり、債務者自身で行うことができる手続きです。しかし調停が実施されるのは平日のみ、過払い金があっても特定調停の際に取り戻すことができない、免除してもらえる金額が少なくなる可能性がある、などのデメリットもあります。

  3. (3)個人再生

    個人再生は、地方裁判所に申し立てて、借金の一部を原則として3年で支払うことを条件に、借金を最大で10分の1程度まで減額してもらう手続きです。なお、返済が困難であると認められれば、最大5年まで延長することも可能です。

    個人再生は、債務者に継続した収入がある場合などに認められますが、厳格な手続きやさまざまな条件を満たす必要があります。個人再生を申し立てる場合には、弁護士に依頼することで、手続きがスムーズに進むことが見込まれます。

  4. (4)自己破産

    自己破産は、地方裁判所に申し立てて、債務者の財産を換金して債権者に分配することで、すべての債務の支払い義務を免除(免責)してもらう手続きです。

    自己破産では、免責が決定すれば債務者はすべての借金を支払わなくてよくなる反面、債務者が保有している資産を、最低限を残して清算しなければなりません。つまり自己破産では、住宅ローンの支払い義務も免除される反面、家は売却され失うことになります。

3、家を残したい場合の債務整理の方法とは

これまでご説明した4つの債務整理の方法のうち「自己破産」以外の方法であれば、住宅ローンの返済を続けながら借金を整理することができます。
中でも、比較的メリットの多い「任意整理」と「個人再生」について、家を残しながら債務整理をする方法をご説明します。

  1. (1)「任意整理」では対象の借金を選べる

    任意整理は直接それぞれの借金の債権者と交渉するので、どの借金について整理するかを選ぶことができます。そのため、任意整理では、住宅ローンや保証人が付いた奨学金や車のローンなどは除外して行うことが少なくありません。

    したがって、影響を及ぼしたくない住宅ローンは任意整理の対象とせず、その他のクレジットカードの借金や銀行のカードローン、消費者金融から借り入れた借金などを整理することが可能です。

    住宅ローン以外の借金を任意整理することで、整理した借金の月々の返済額は減額できるでしょう。その結果、月々の生活費のうち返済に回せる金額が増え、それを住宅ローン返済に充てることができるため、家を残したい場合のメリットは大きいといえるでしょう。

  2. (2)「個人再生」では借金を減額できる可能性がある

    個人再生は、任意整理で将来発生する利息を軽減する、月々の返済額を減らす、などしても返済が難しい場合に利用できる制度です。

    個人再生手続きでは、民事再生法第196条以下に定められた「住宅資金貸付債権に関する特則」(住宅ローン特則)という制度を利用することが可能です。この制度では、返済期間の見直しをするなどして、住宅ローンの減額をせずに支払いを続ける一方、その他の借金を最大5分の1まで減額したり、長期にわたって分割して支払ったりすることが認められています。

    そのため個人再生を利用できる条件を満たしていれば、家を残しながら借金を大幅に減額できる可能性があり、非常に有効な方法といえます。具体的にご自身が個人再生を利用できるかどうかは、弁護士に相談して確認するとよいでしょう。

4、債務整理をしたら住宅ローンは組めなくなるのか

もし債務整理をしたら、今後住宅ローンを組めなくなって家を持つことを諦めなければならないのではないか、と不安に思われている方もいるかもしれません。

結論からいえば、債務整理をしたからといって、ずっと住宅ローンを組めないというわけではありません。

ただし、債務整理は債権者に不利益を生じさせることになるので、債務者にとっても一定の負担が生じます。中でも、住宅ローンに関わるのは、一定期間において信用情報機関に事故情報が登録されるという点です。

住宅ローンを組む際には、銀行などが信用情報機関の個人信用情報を確認して審査を行います。その際信用情報に事故情報が登録されていれば、審査に通ることが非常に難しくなります。

しかし信用情報機関の事故情報は、任意整理では5年程度、個人再生や自己破産では10年程度経過すれば自動的に削除されます。そのため債務整理を行った金融機関系列などでは住宅ローンを組むことは難しいかもしれませんが、その他の金融機関などでは事故情報が削除されていれば審査は問題なく通る可能性もあります。

なお債務整理をしなくても借金の延滞が続けば、信用情報機関に事故情報が登録されます。
したがって将来的に家を持ちたいと考えている場合であっても、債務整理という選択肢を必要以上におそれずに早期に対処することが重要だといえるでしょう。

5、まとめ

本コラムでは、住宅ローンがある場合に家を残しながら行う債務整理の方法を解説していきました。住宅ローンの返済を続けて家を残しつつ借金を整理するためには、「自己破産」を避けられる状況であれば弁護士に依頼して「任意整理」や「個人再生」を行う方法がおすすめです。
弁護士に依頼すると

  • 貸金業者への受任通知を送付することで、債権者からの取り立てが止まる可能性がある
  • 借金の状況に応じてどのような債務整理の方法が最良かアドバイスしてもらえる
  • 過払い金があれば返金してもらえるよう代理手続きを行う
  • 裁判所への複雑な提出書類の作成などを任せられる

などさまざまなメリットがあります。

ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士は、家を残したいといったご希望を可能な限りかなえる方法で債務整理ができるよう尽力いたします。おひとりで悩むことなく、お早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています