ペット保険で治療費が支払われない理由って? よくあるトラブルを解説

2020年07月22日
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ペット保険で治療費が支払われない理由って? よくあるトラブルを解説

犬や猫などのペットは、生活を豊かにするパートナーであり、大切な家族となっている方も多いことでしょう。

岸和田市のある大阪府の統計によれば、平成30年の犬の登録頭数は16万2065件でした。また、同年に集計された厚生労働省の発表によると、大阪府の犬の登録頭数は、東京・神奈川・愛知についで全国で4番目であり、多くの方がペットとの生活を楽しんでいることがうかがえます。

家族の一員でもあるペットには、いつまでも健康で長生きしてほしいと、病気や怪我に備えて、ペット保険に加入している方も少なくないかもしれません。ところが、せっかくペット保険に加入して病気や怪我に備えても、支払いの対象外であるという理由で保険金が受け取れないケースがあります。

そこで今回は、なぜペット保険に加入しても保険金が支払われないのかについて、よくあるトラブルや回避法を含めて、弁護士が解説していきます。

1、ペット保険のトラブルはなぜ起こるのか

ペット保険でなぜトラブルが起こるのかについて、ペットの病気の多様性や保険業界の特徴などを踏まえて解説していきます。

  1. (1)ペット保険のトラブルとは

    ペット保険におけるトラブルの多くは、ペット保険に加入したものの、受け取れると思っていた保険金を受け取ることができなかったというものです。

    保険金を受け取れなかった場合、それまでに払い込んだ保険料が無駄になってしまいます。手術をするのに高額な費用が必要な場合などは、保険金が支払われないことでペットの治療を断念せざるを得ない状況になることもあります。

  2. (2)病気や怪我の多様性

    ペット保険の中には、犬や猫だけでなく、鳥類や爬虫(はちゅう)類などさまざまな動物を対象にしているところもあります。

    しかし、ペットによってかかりやすい病気や怪我は異なるため、保険会社がペット保険を導入する際には、さまざまなペットの性質を考慮する必要があります。

    そのため、多くの種類の動物の病気や怪我を扱うことから、結果としてペット保険の内容は複雑になりがちです。ペットの多様性に合わせた結果、加入者にとってペット保険はわかりにくいものとなり、誤解やトラブルの一因となってしまったといえるでしょう。

  3. (3)ペット保険業界の特徴

    世の中にはさまざまな種類の保険がありますが、ペット保険は保険の中では比較的新しく登場した商品です。日本でペット保険が本格的に導入されるようになったのは1990年代で、動物愛護が進んでいたイギリスをはじめとした欧州に続いて、広がりました。

    その後、2000年代には日本初の少額短期保険のペット保険が誕生するなど、制度が普及する一方、保険商品としてはまだ若いこともあり、加入の増加とともにトラブルが発生するケースもでてきました。

    また、ペット保険はインターネットだけで契約できる商品も少なくないため、複雑な補償内容であったとしてもユーザーが気付かずに契約をすることもあります。こうした、ユーザーの誤解やインターネットショップの説明不足なども、トラブルの一因と考えられます。

2、ペット保険でよくあるトラブル

ペット保険に加入した場合によくあるトラブルをご紹介します。

  1. (1)補償の対象外となるトラブル

    ペット保険では、保険が適用される対象となる範囲が定められています。補償の対象外となった場合、せっかくペット保険に加入しても保険金が支払われなくなるので注意しましょう。

    まず、病気や怪我によっては保険の対象外になります。保険の対象外になることが多いのは、フィラリアなどのワクチンで予防可能な病気や、個体の先天性や発達異常を原因とする病気です。

    次に、病気や怪我が発生した状況によっても対象外になる場合があります。対象外になることが多いのは、飼い主の故意や重過失による病気や怪我、地震や台風などの自然災害を原因とする怪我などです。

    そのほか、一般に補償の対象外になるケースとしては、妊娠や出産にかかる費用、マイクロチップの装着費用、予防を目的とする診療費、サプリメントや医薬部外品費、温泉療法などの代替療法費用、ペットホテル費用、時間外診療費などがあります。

    ただし、保険会社により詳細は異なります。必ず加入保険の補償内容を確かめるようにしましょう。

  2. (2)治療費の金額に関するトラブル

    ペット保険の補償対象になっても、支払われる治療費の金額が期待よりも少ないとトラブルになる場合があります。治療費の金額については、補償割合の不知や誤解が原因となることが少なくありません。

    ●補償割合とは
    補償割合とは、ペットの治療にかかった医療費のうち、どの程度の割合を保険がカバーするかを示すものです。

    たとえば、医療費として合計10万円かかって補償割合が7割の場合、保険金が支払われるのは7万円です。したがって3万円は加入者の自己負担になります。

    ペット保険の補償割合は保険商品によって異なりますが、5割〜9割程度が一般的です。補償割合が高いほど医療費の自己負担は少なくなりますが、保険料も高額になるのが一般的です。

  3. (3)更新の際のトラブル

    ペット保険には1年ごとに更新する短期保険があります。この更新の際にトラブルになるケースがあります。

    典型例としては、契約の期間中にペットが病気になって治療したところ、更新の際にそれまで保険の対象だった病気が突然不担保になったり、保険の更新を断られたりすることです。

    1年更新のペット保険は手軽さがある半面、更新の際にトラブルが生じることもあります。更新が不可となるケースはどのような場合か、事前に確認しておくと安心です。

3、ペット保険のトラブルを避けるためのポイント

ペット保険のトラブルを避けるために押さえておくべきポイントをご紹介します。

  1. (1)ペット保険の内容を確認する

    保険に関するトラブルを避けるために重要なポイントは、まずは保険の内容を十分に確認することです。保険内容を確認するための重要なポイントは、以下のものがあります。

    ●補償内容
    ペット保険の補償内容については、どのような病気や怪我が対象外になってしまうか特に注意しましょう。また、保険の中には保険料が割安なものの、通院のみや手術・入院のみなどの限定的なタイプもあります。

    ●加入できるペットの年齢
    ペット保険によっては加入できるペットの年齢に制限があるものもあります。加入できない年齢に達すると保険を更新できなくなります。一般に高齢になるほど病気のリスクが高まる点にも注意しましょう。

    ●限度額
    ペット保険は通院・入院や手術に限度額が設定されているのが一般的です。たとえば、通院・入院は1日あたり最高1万円、手術は1回あたり最高15万円までなどです。限度額を超えた分は自己負担になります。

    ●待機期間
    待機期間とは、保険の申し込みをしてから一定期間、保険金の支払い対象外となる期間のことです。ペット保険に限らず、被保険者の病気の潜伏期間を考慮した日数が設定されています。したがって、待機期間中の病気や怪我については保険の対象外になります。

    ●保険金の請求方法
    保険金の請求方法は大きく分けて2種類あります。加入者が病院などにいったん全額を支払ってから後日保険会社に請求する方法と、人間の医療保険のように自己負担分だけを窓口で精算できる方法です。

  2. (2)免責金額の有無と金額をチェックする

    免責金額とは、保険が適用される場合でも加入者が自己負担しなければならない金額のことです。たとえば、ペット保険に免責金額として1万円が設定されている場合、治療費のうち1万円については基本的に加入者が負担することになります。

    免責金額が1万円の保険に加入してペットの治療費に5000円かかった場合、治療費が免責金額を下回っているので保険金は支払われません。5000円全額を自己負担する必要があります。

    免責金額が高いと、せっかく保険に加入しても少しの怪我などでは毎回自己負担だけになる可能性もあります。ペット保険に加入する際には、免責金額の有無と金額は必ずチェックしておきましょう。

  3. (3)特約や付帯サービスを確認する

    ペット保険の主な目的は病気や怪我の治療費に対する保険金の支払いですが、有料で追加できる特約や無料でついてくる付帯サービスなどもあります。

    特約や付帯サービスにも目を通しておくと、ペットに関して何らかのトラブルが発生した場合に解決に役立つことがあります。

    ペット保険の一般的な特約には以下のものがあります。

    ●賠償責任特約
    ペットが他人の身体を傷つけたり財産を損壊したりした場合に、賠償費用を賄う保険金が支払われます。

    ●埋葬費用特約
    ペットが亡くなった場合に埋葬やセレモニーの費用が支払われます。

    ●補助器具特約
    ペットが何らかの障害を負った場合に、車いすなどの補助器具の購入費用が支払われます。


    ペット保険の一般的な付帯サービスとしては、健康診断サービス、電話やインターネットによる獣医師のサポート、複数のペットが加入した場合の割引制度などがあります。

4、悪質なケースは弁護士に相談を

ペット保険のトラブルでよくあるケースを把握し、トラブルを避けるための方法を理解したとしても、悪質な保険業者にひっかかると思わぬトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。

悪質性の高い業者の行為の一例は、保険の更新時に不透明な審査をすることで、それまで保険の対象であった病気を対象外にするというものです。

たとえば、ペットの白内障の治療のために動物病院で手術をし、加入していたペット保険を使って保険金の支払いを受けたところ、保険の更新時に目の疾患を不担保とすることを更新の条件にされてしまうなどです。

この場合、保険を使ってペットの病気の治療ができるのは1年だけで、次の年からは同様の病気で治療が必要になっても保険を使えなくなってしまいます。

そのほか、補償対象であるにもかかわらず保険金を支払わない、説明責任を果たさないなど、明らかな悪質性を感じた場合には、弁護士に相談して解決法を探ってみるのもひとつの方法です。

5、まとめ

ペット保険はペットの病気や怪我などの治療に対して保険金が支払われる保険商品ですが、加入者がもらえるはずと思っていた保険金が支払われないなどのトラブルが生じることもあります。

トラブルの原因としてよくあるのは、保険の対象外になってしまう、保険金の負担割合を誤解していた、保険の更新を拒否されるなどです。トラブルを防ぐためのポイントは、保険の内容をきちんと確認すること、免責金額を知っておくこと、特約や付帯サービスを把握することなどです。

もっとも、トラブルをどれだけ防ごうとしても、心ない業者の不当な対応に巻き込まれてしまうこともあります。ペットも家族の大切な一員です。正当な補償を受けられないなど、ペット保険に関するトラブルでお悩みの場合は、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。経験豊富な弁護士がトラブル解決に向けて全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています