同性間のストーカー行為は犯罪になる? 相手の心理や対策方法とは
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ストーカー行為に関するトラブルは、異性間だけでなく、同性間でも報告されています。
同性・異性にかかわらず、ストーカー行為は犯罪に該当し得るため、被害を受けた場合には速やかに弁護士や警察に相談しましょう。
今回は、同性間で問題になるストーカー行為について、成立する犯罪や行為の具体例、やめさせるための対処法などを、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。
1、同性に対してストーカーをする心理の例
同性に対してストーカー行為をする背景には、恋愛感情にまつわるケースも多い一方で、依存心が原因となるケースもあります。
同性同士で親しくなると、一緒に過ごす機会が多くなり、時には一方的に依存してしまう関係性になることもあるでしょう。相手への依存が強まってしまうと、相手が他の友達や異性と仲良くしているのが許せなかったり、少しそっけない態度を取られただけで深刻に落ち込んでしまったりする方もいます。
その結果、相手の行動を監視したり、あらゆる場所へつきまとうようになったりして、ストーカー行為に発展するケースもあります。
2、ストーカー行為について成立する犯罪|同性同士でも罰せられるのか?
「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規制法)では、恋愛感情などの好意の感情や、それが満たされなかったことに対する恨みの感情を充足する目的で行われるストーカー行為などを犯罪として禁止しています。
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(1)ストーカー規制法違反に当たる犯罪行為
ストーカー規制法では、以下の行為が犯罪として処罰の対象とされています。なお、「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」に当たる行為の具体例については、後述します。
① 禁止命令に違反するつきまとい等、位置情報無承諾取得等
ストーカー規制法では「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」が禁止されており、違反者に対しては都道府県公安委員会から禁止命令が発せられることがあります。
禁止命令に違反して、さらにつきまとい等または位置情報無承諾取得等を行った場合、「6か月以下の懲役また50万円以下の罰金」に処されます(同法第20条)。
② ストーカー行為
「つきまとい等」(一部を除く)または「位置情報無承諾取得等」を同一の者に対して繰り返し行った者は、「ストーカー行為」をしたとして処罰されます。
ストーカー行為に対して科される法定刑は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(同法第18条)。
また、都道府県公安委員会の禁止命令が出ている状態でストーカー行為をした場合などは、さらに重い「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科されます(同法第19条)。 -
(2)同性同士でもストーカー規制法違反に該当する
ストーカー規制法によって禁止されている行為には、異性間で行われるものに限らず、同性間で行われるものも含まれます。
したがって、同性に対して抱く好意の感情や、それが満たされなかった場合に抱く恨みの感情からストーカー化した場合も、ストーカー規制法による処罰の対象です。
3、犯罪に当たるストーカー行為の具体例
ストーカー事案はかなりの頻度で報道されており、実際に多数の被害者が生まれているものと思われます。
同性同士のストーカートラブルでは、元交際相手の女性の祖父に対して、男性がストーカー行為をして逮捕された事案や、同性の元同級生につきまといをしたケースも報道されています。
ストーカー規制法では、同一の者に対して「つきまとい等」(一部を除く)または「位置情報無承諾取得等」を繰り返す行為が「ストーカー行為」と定義されています(同法第2条第4項)。
「つきまとい等」または「位置情報無承諾取得等」に該当する行為は、特定の者に対する好意の感情や、それが満たされなかったことに対する怨恨(えんこん)感情を充足する目的で行う行為です。
なお、以下より説明する具体的な「つきまとい等」のうち、【※】の行為は、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限り、ストーカー行為等になりえます。
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(1)つきまとい・待ち伏せなど【※】
以下の行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項)。
- つきまとい
- 待ち伏せ
- 進路に立ちふさがる行為
- 住居、勤務先、学校その他現在いる場所もしくは通常いる場所(住居等)における見張り
- 住居等への押し掛け
- 住居等の付近をみだりにうろつく行為
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(2)行動の監視を告げるなどの行為【※】
被害者の行動を監視していると思わせるような事項を告げ、またはその事項を被害者の知り得る状態に置く行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項第2号)。
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(3)面会・交際などの要求【※】
面会や交際など、義務のないことを要求する行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項第3号)。
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(4)著しく粗野・乱暴な言動【※】
著しく粗野または乱暴な言動をする行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項第4号)。好意の感情が満たされなかったことによる恨みの感情が、粗野・乱暴な言動につながるケースが多いです。
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(5)無言電話・しつこい連絡
以下の行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項第5号)。
① 電話をかけて何も告げない行為(無言電話)
② 拒否されたにもかかわらず、連続して以下の行為をすること
- 電話をかける
- 文書(手紙など)を送付する
- FAXを送信する
- 電子メールの送信等をする※
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(6)汚物や動物の死体などの送付等
汚物や動物の死体など、著しく不快・嫌悪の情を催させるような物を被害者に送付し、または被害者の知り得る状態に置く行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項第6号)。
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(7)名誉を害する事項の告知
被害者に対して名誉を害する事項を告知し、または被害者の知り得る状態に置く行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項第7号)。
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(8)わいせつな文書・画像などの送付等
以下の行為は、つきまとい等に該当します(ストーカー規制法第2条第1項第8号)。
- 被害者の性的羞恥心を害する事項を告げ、または被害者の知り得る状態に置く行為
- 被害者の性的羞恥心を害する文書、図画、データの記録媒体などの物を送付し、または被害者の知り得る状態に置く行為
- 被害者の性的羞恥心を害するデータなどを送信し、または被害者の知り得る状態に置く行為
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(9)GPS情報の無承諾取得
被害者の承諾を得ずに、被害者が所有するGPS装置(スマートフォンなど)により記録・送信される位置情報を不正取得する行為は、位置情報無承諾取得等に該当します(ストーカー規制法第2条第3項第1号)。
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(10)GPS装置の無承諾取り付けなど
被害者の承諾を得ずに、被害者の所持物にGPS装置を取り付けたり、GPS装置を取り付けた物を被害者に交付したりする行為などは、位置情報無承諾取得等に該当します(ストーカー規制法第2条第3項第2号)。
4、ストーカー行為をやめさせるための対処法
同性によるストーカー行為をやめさせるためには、ご自身だけで対応するのではなく、警察や弁護士の協力を得ることが解決への近道です。
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(1)相手と連絡を絶つ
まずはストーカー行為をする相手との連絡を一切絶ち、できる限り相手に刺激を与えないようにしましょう。
連絡を絶ってもストーカー行為は続く可能性が高いですが、状況を悪化させるリスクは抑えることができます。 -
(2)警察に相談する
ストーカー行為は犯罪であり、場合によっては生命・身体に危害が加えられる可能性もあるため、警察に相談すれば捜査に動いてくれることが多いです。
逮捕などの強制処分により、ストーカー行為を強制的にやめさせることができるのは警察と検察だけなので、必ず協力を得るようにしてください。 -
(3)弁護士に相談する
ストーカーに対しては、弁護士を通じて交渉を試みることも有力な対処法です。
被害者本人ではなく弁護士が対応することで、ストーカーを落ち着かせたうえで話し合いができる可能性があります。また、ストーカー被害に関する損害賠償を請求したい場合などにも、弁護士によるサポートが大いに役立つでしょう。
ストーカー被害に遭った場合には、警察への相談と並行して弁護士にもご相談ください。
5、まとめ
同性同士であっても、好意の感情から相手に対して夢中になった結果、ストーカー行為に発展してしまうケースはしばしばあります。
もしストーカー被害に遭った場合、ご自身だけで対応すると、相手の感情を刺激してしまって危険が増すおそれが否定できません。そのため、警察や弁護士のサポートを得ながら対応することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、警察とも随時連携を行いつつ、ストーカー問題を早期に解決できるようサポートいたします。同性ストーカーによる被害にお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています