風俗で盗聴がバレたら? 慰謝料請求された場合に示談するポイントを解説
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大阪には、飛田新地や松島新地などの古くからあるネオン街から、梅田や難波などの巨大な歓楽街まで、たくさんのきらびやかな夜の街が広がっています。
そういった街の、いわゆる風俗店でつい出来心で盗聴をしてしまい、店のスタッフや従業員女性に発見されて慰謝料を請求されたら、どうすればよいのでしょうか。
盗聴をした後ろめたさから、いわれた金額の慰謝料を支払って穏便にすませたいと思うかもしれません。しかし、慰謝料の金額が高すぎるのではないか、一度払ってもまた脅されるのではないか、など疑問や不安に思うこともあるでしょう。
そこで今回は、そもそも盗聴とは犯罪なのか、慰謝料を請求されたら注意すべき点は何かなど、盗聴を理由に慰謝料を請求された場合に知っておくべき具体的な対策や基礎知識を、岸和田オフィスの弁護士が解説していきます。
1、盗聴はどのような罪に問われるか?
盗聴とは、当人に知られないように、会話や音などをこっそり聞いたり録音したりすることですが、場合によっては大きなトラブルや刑事事件に発展する可能性のある危険な行為です。
ここでは、盗聴がどのような罪に問われる可能性があるのかを解説していきます。
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(1)盗聴自体は犯罪を構成しない
風俗店では禁止行為として、盗聴・盗撮などを掲げていることがありますが、刑法においては、盗聴が犯罪として処罰の対象になっているわけではありません。
第一に、盗聴するための電波は、専用の機材があれば基本的には誰でも傍受することができます。たまたま機材が盗聴器の電波を受信した場合もあることから、盗聴を犯罪として規定するのは難しくなっているのです。
また、盗聴自体は原則として犯罪を構成しないため、盗聴器を購入することは、違法な目的に使用するために購入したなどの場合を除いては、基本的に犯罪ではありません。
さらに、盗聴器を自分の所有する不動産や所有物に仕掛けることも、基本的には犯罪を構成しません。たとえば、重要な会話を録音するために自分が所有する自動車に盗聴器を設置し、証拠とするなどの行為があります。 -
(2)盗聴に付随する行為が犯罪になる場合がある
盗聴自体は原則として犯罪にはなりませんが、盗聴に付随する行為が何らかの犯罪を構成する場合、処罰の対象になる可能性があります。
盗聴に付随する行為として処罰の対象になることが多い犯罪は、建造物侵入罪や器物損壊罪などです。 -
(3)盗聴と建造物侵入罪
建造物侵入罪は、住居侵入罪とともに刑法第130条に規定されている犯罪です。正当な理由がないにもかかわらず他人の建造物に侵入した場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金の対象になります。
どのような場合に建造物に「侵入」したといえるかですが、判例に基づく基本的な判断基準は、管理権者の意思に反して立ち入ったと判断される場合に、侵入したとされます。
たとえば、風俗店で料金を支払った上でサービスを受け、その際に盗聴をしたケースの場合、サービスを受けるために入店することは管理権者が容認する範囲内といえますので、管理権者の意思に反して立ち入ったことには当たりません。
しかし、入店をした際に盗聴をすることは、管理権者が容認する範囲を超えた行為となり、管理権者の意思に反して立ち入ったことに当たります。そのため、「侵入」があったと評価され、建造物侵入罪に該当する可能性が高まるのです。 -
(4)盗聴と器物損壊罪
器物損壊罪は刑法第261条に規定されている犯罪です。他人の所有物を損壊した場合に、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料の対象になります。科料とは1000円以上1万円未満の財産刑です。
盗聴すること自体は他人の物を壊すことになりませんが、盗聴器を仕掛けることが器物損壊罪にあたる場合があります。たとえば、盗聴器を仕掛けるために家電、家具、ぬいぐるみなどを壊すことです。
つまり、風俗店に盗聴器を仕掛けるために店の備品や従業員女性の私物などを損壊した場合、器物損壊罪が成立する可能性があります。 -
(5)盗聴に付随するその他の犯罪
建造物侵入罪や器物損壊罪以外にも、盗聴に関連して処罰の対象になる可能性があるものとして、以下の例があります。
- 電話回線に盗聴器を仕掛けて盗聴することによる有線電気通信法違反
- 盗聴した内容を第三者に漏らすことによる電波法違反
- 盗聴で知り得た情報で相手を脅すことによる脅迫罪
- 盗聴で知り得た情報で相手に金品を要求することによる恐喝罪
- 盗聴で住所などを知って相手を待ち伏せたりすることによるストーカー規制法違反
2、慰謝料を請求される理由や根拠
盗聴が発覚した場合に店側が慰謝料を請求する理由は、基本的には金銭を得たいからです。裁判でも認められるような妥当な金額であれば別ですが、悪質な業者の場合はこの機会を利用して不相当に高い金額を請求しようとするケースもあるでしょう。
盗聴による被害とは、基本的には従業員女性が受けた精神的苦痛です。
自分が盗撮の加害者である場合、その後ろめたさから不当な要求にもつい応じてしまいがちですが、相手の請求に応じる前に、請求された内容の妥当性を十分に検討することが重要です。
慰謝料を請求された時点で、まずは弁護士に相談することをおすすめします。妥当な金額を知る手だてとなるでしょう。刑事トラブルの経験豊富な弁護士が代理として店や従業員女性と交渉することで、適正な慰謝料に収まる可能性も高まります。
3、慰謝料を請求された場合に確認すべき注意点
店や従業員女性から慰謝料を請求された場合に注意すべきポイントを解説していきます。
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(1)慰謝料は基本的に従業員女性に支払う
風俗店で盗聴をしてしまった場合、慰謝料を支払うべき相手は原則として店ではなく、盗聴の対象となった従業員女性です。
盗聴器を仕掛けるために店の備品を壊してしまった場合などを除けば、盗聴によって精神的苦痛の被害を受けたのは従業員女性であって、店ではないからです。
店にいわれるがまま、安易に慰謝料を支払ってしまうと、個人への賠償は別問題であるとして、あとから従業員女性に慰謝料を請求される可能性があります。 -
(2)示談書の内容に注意する
店や従業員女性から示談書が提示された場合は、軽率にサインしないように注意しましょう。金額が不相当に高額なだけでなく、示談書の内容に清算条項が書かれていないなど、意図的に不備があるケースがあるからです。
清算条項とは、示談書に記載されている内容以外には、債権債務がないことを互いに合意する旨の条項です。清算条項を入れておくことで、あとで何度も請求されることを防止することができます。
清算条項がない場合、新しい損害が見つかった、よく考えれば賠償金額が不十分だった、などとさまざまな理由をつけられて、いつまでも損害賠償を請求される危険性があります。
したがって、示談を成立させる場合は清算条項など示談書の記載内容に細心の注意を払う必要がありますが、法的知識がない場合は不利な内容を見逃してしまうことも少なくありません。示談書の内容に不安がある場合は、サインする前に、まず弁護士に相談するのがおすすめです。
4、風俗のトラブルを弁護士に相談するメリット
風俗でのトラブルを弁護士に相談するメリットをご紹介します。
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(1)被害者との示談に対応できる
盗聴などの行為によって加害者になってしまった場合、被害者と自力で交渉するのは困難です。被害者である女性店員が怖がって話を聞いてくれない、店側から法外な金額を請求されるなどのトラブルに発展してしまうケースもあります。
そういった相手との示談交渉が困難な場合、弁護士が示談をすると話がスムーズに進む可能性が高くなります。経験豊富な弁護士であれば、感情的になっている被害者と冷静に話し合う、不当な要求に毅然(きぜん)と対応するなどが期待できます。 -
(2)店側からの嫌がらせに対応できる
風俗店でトラブルになって慰謝料を請求された場合、悪質な業者であれば要求に応じなければさまざまな嫌がらせをされる可能性もゼロではありません。
たとえば、保険証や運転免許証のコピーをとられる、職場に電話をされる、自宅に押しかけられて慰謝料を要求されるなどです。他者や職場を巻き込むような嫌がらせであれば、社会的信用などにも影響してきます。
店側から何らかの嫌がらせを受けたら、早期に弁護士に相談することが重要です。
法律の専門家である弁護士は、嫌がらせに対してどのように対処すべきかを法的な観点からアドバイスすることができます。また、悪質な嫌がらせには、内容証明郵便で警告書を送ったりするなどして店舗側をけん制することができます。 -
(3)逮捕や起訴に対応できる
万が一、加害者として警察に逮捕されてしまった場合でも、弁護士に依頼することは自身の権利を最大限に守ることにつながります。捜査機関の取り調べでは想像以上に動揺し思わぬ供述をしてしまう可能性も否めません。不適切な発言により不利な状況に陥らないよう、弁護士に法的なアドバイスを求めることをおすすめします。
また、身内の方との接見(面談)がなかなか認められないような状況になっても、弁護士には接見の自由が認められているため、家族とのパイプ役になって活動が可能です。弁護士がついていることで安心感を得ることにもつながるでしょう。
さらに、弁護士が被害者と適切に示談を成立させることができれば、示談がすんでいることを理由に不起訴処分になる場合もあります。不起訴処分になれば刑事裁判にかけられることなく、身柄が解放されます。
5、まとめ
盗聴自体は原則として犯罪ではありませんが、盗聴に付随する行為の結果として、建造物侵入罪や器物損壊罪などの犯罪が成立する場合があります。
また、風俗で盗聴をしてしまった場合、店や従業員女性から慰謝料を請求される可能性があります。この場合、盗聴によって精神的な苦痛を受けたのは店ではなく、盗聴をされた従業員女性である点がポイントです。そのため、安易に店側の要求をのみ示談書にサインをしないよう注意しましょう。慰謝料を支払う場合でも、原則として従業員個人に支払うことが重要であり、相手の要求や金額が妥当であるかは十分な検討が必要です。
風俗で盗聴をしてトラブルになってしまった場合、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。慰謝料の金額の妥当性などについて、経験豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。
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