悪質なネットの書き込みを削除する方法と知っておきたい損害賠償請求

2019年11月22日
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悪質なネットの書き込みを削除する方法と知っておきたい損害賠償請求

誰でも簡単に情報発信ができるようになった現代では、ネット上での悪質な書き込みが社会問題化しています。平成28年には岸和田市でも、市役所や市内の学校など複数箇所に爆薬を仕掛けたとの書き込みがあり、市の施設約100カ所が閉鎖される事態が起きています。

このように個人や企業だけではなく、自治体までもが悪質な書き込みに悩まされているのです。そこで本コラムでは、悪質な書き込みを削除する方法や相談窓口について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。誰にでも起こりうる不利益を回避するためにも、できるだけ早めに対処しましょう。

1、悪質な書き込みによる影響は?

インターネット上は基本的に誰でも閲覧ができるため、掲示板などに悪質な書き込みをされるとその内容が多くの人の目に触れてしまいます。悪質な書き込みをされると、当然ながら不愉快な気持ちになるでしょう。しかし、それだけでは終わらないことも考えられます。どのような影響があるのか、個人の場合と企業の場合に分けて見ていきましょう。

  1. (1)個人への影響

    個人が悪質な書き込みをされた場合に考えられるのは、個人情報の流出です。氏名や年齢、住所、家族構成、学校や勤務先などが特定され、その情報がさらされる可能性があります。マイナスの情報が拡散されると、いじめにつながることも少なくありません。エスカレートすると、ひどい場合は退学、退職、転居に追い込まれ、家族を巻き込む問題にもなりかねません。
    もし一時的に事態が収束したとしても、何らかのきっかけで過去の書き込みが発覚し、就職活動に影響したり婚約が破談になったりと、将来にまで影響する可能性があります。

  2. (2)企業への影響

    企業が悪質な書き込みをされた場合、まず売り上げへの影響が考えられます。根も葉もない誹謗中傷であったとしても、消費者からしてみれば購入をためらう大きなきっかけになってしまいます。
    また、書き込みが企業イメージに直結することもあり、取引先の信頼や株価の低迷にもつながりかねません。負の連鎖として、従業員の退職や就職希望者が減少してしまうことも考えられます。

2、ネットの書き込みを削除する3つの方法

ネット上で悪質な書き込みされてしまうと、あっという間に情報は拡散していきます。大きな問題に発展する前に削除しなければなりません。そこで、書き込みを削除する方法を解説します。

  1. (1)発信者に取り消しを依頼する

    SNSなどのメッセージ機能があるサイトに書き込まれた場合は、メッセージ機能を利用して発信者に直接削除依頼をしてみてください。ただ、相手は悪質な書き込みをした人物です。スムーズに話は進まないかもしれませんが、法的手段を含めて弁護士や警察への相談を検討している旨を伝えれば、削除に応じる可能性も高くなります。

  2. (2)サイト管理者やプロバイダに削除を依頼する

    発信者が削除に応じない場合、書き込みされたサイトの管理者やプロバイダに削除依頼を出しましょう。サイト上の削除依頼フォームや問い合わせフォーム、メールで依頼をします。

    上記でも対応してもらえなかった場合は、一般社団法人テレコムサービス協会のガイドラインに沿って、送信防止措置依頼を実施します。依頼に必要な項目やフォーマットは一般に公開されています。それらを参照のうえで、書き込みがどのような権利を侵害しているのかなどを記入した依頼書を作成し、サイト管理者やプロバイダへ送ります。本人(または、その代理人)からの依頼であることを確認できれば、書き込みをした発信者に対して削除の申し入れが行われます。

    これらの手続きは個人で対応することも可能です。ただ、依頼書には侵害された権利、理由を記入しなければなりません。また必要があれば、主張を明らかにするための資料を添付する必要が発生することもあります。個人で作成した場合、要件を満たす適切な記載にならず、時間をかけて作成しても受理されないこともあります。少しでも不安な場合は、削除請求手続きになれている弁護士へ相談するとよいでしょう。

  3. (3)裁判所に仮処分を申し立てる

    発信者やサイト管理者、プロバイダに削除依頼をしても応じてもらえない場合、裁判所に「仮処分」を申し立てする方法があります。仮処分とは、一刻も早い解決が求められる場合、裁判に勝訴したときと同様の状態を確保できる手続きです。仮処分によって書き込みの削除命令が出れば、ほとんどの場合は書き込みの削除に応じてもらえます。削除に応じない場合は、強制執行の手続きをとることもできます。

3、悪質な書き込みをした相手に損害賠償請求するには?

悪質な書き込みによって被害を受けた場合、書き込みをした相手に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。また、書き込みの内容によっては名誉毀損(きそん)罪や威力業務妨害罪などで、刑事告訴をすることも考えられます。

しかし、いずれにしても書き込んだ相手を特定できなければ損害賠償請求はもちろん、告訴することもできません。損害賠償をする側が、相手が不法行為をしたことを証明する必要があるのです。

そこで知っておきたいのが、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき行われる「発信者情報開示請求」と呼ばれる手続きです。ネット上で誹謗中傷された場合に、書き込みを行った人物の住所や氏名を特定するための情報開示を請求できます。書き込んだ本人が特定されれば損害賠償請求も可能になりますし、相手からの書き込みの再発を防げる可能性を高めることができるでしょう。

ただし、情報開示はプライバシーにかかわる重要な判断です。そのため、発信者情報開示請求の手続きを行っても、開示請求を認めてもらえない場合も少なくありません。また、ネットカフェからの書き込みや、アクセスの痕跡が偽装されていると、発信者情報を特定することが難しくなります。必ずしも開示にたどり着けるとは限りませんので注意しましょう。

4、悪質な書き込みの削除はどこに相談する?

サイト管理者やプロバイダに書き込みの削除を依頼する段階までは、自力で対応できるかもしれません。ただし、個人同士が抱えた感情のもつれが原因だった場合、本人が直接削除を依頼することによってさらに書き込みが激化してしまい、炎上してしまう可能性は否定できません。

また、仮処分や発信者情報開示請求などの手続きとなると、書類手続きが伴うため、自力での対応が難しくなります。なぜなら、裁判所に対して根拠ある理由を具体的に主張、疎明するとともに適切な証拠を提出しなければ、裁判所から削除命令を出してもらえないためです。発信者情報開示請求にしても、開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるか、発信者情報の開示請求を受けるべき正当な理由があるかなど、プロバイダ責任制限法に定められた要件を満たしている必要があります。

迅速な対応で被害を最小限に抑えたいのであれば、いずれのケースでも弁護士に依頼したほうがスムーズに進められるでしょう。

5、ネットの書き込みを削除する代行業者に注意

ネット上の掲示板などで「削除代行します」と広告を出している、書き込みを削除する代行業者があることをご存じでしょうか?

早く削除したいと焦っていると、つい依頼したくなるかもしれません。ただ、ここで注意したいのは、代行業者は弁護士法に違反している可能性があるということです。なぜならば、「本人の代わりに削除依頼する」という手続きを行うためには、弁護士資格を有していなければなりません。弁護士以外のものが削除請求を行うこと自体が、不法行為なのです。不法行為を公然と行う事業に個人情報を渡した結果、高額な費用を請求されるなどのトラブルに巻き込まれる危険性もあります。

もちろん、不審な代行業者に依頼しないのが大前提ですが、もしすでに依頼してしまったという場合は、弁護士に相談してください。代行業者が弁護士法に違反している場合には、依頼の際に支払った費用を、返還請求できるケースもあります。

6、まとめ

ネットで悪質な書き込みをされてしまうと、その情報が拡散されるのはあっという間です。また、ネット上での誹謗中傷だけでは収まらず、私生活にも被害が及んでくる可能性も十分に考えられます。もし悪質な書き込みを発見した場合は、まずはスクリーンショットを取るなど、確実に証拠をおさえるとともに、できる限り早く対応するようにしましょう。

ネット上の悪質な書き込みでお困りの際は、ベリーベスト法律事務所 岸和田市オフィスまでご連絡ください。岸和田オフィスの弁護士が迅速な対応で被害を最小限に止められるように全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています