交通事故で防犯カメラは開示できる? 過失割合の交渉でできること

2022年12月08日
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交通事故で防犯カメラは開示できる? 過失割合の交渉でできること

「大阪の交通白書」によると、2021年中に大阪府内で発生した交通事故の件数は2万5388件で、前年比155件の減少となりました。負傷者数は2万9560人で、前年比328人の減少となりましたが、死者数は140人で、前年比16人の増加となっています。

こうした交通事故で損害賠償請求を行う際には、相手方との間の過失割合が重要になります。過失割合の立証に役立つのが、防犯カメラ映像などの客観的な証拠です。もし事故現場に防犯カメラが設置されていれば、弁護士を通じて映像の開示を求めるとよいでしょう。

今回は、交通事故の損害賠償請求における防犯カメラ映像の重要性や、防犯カメラ映像の開示を求める方法などについて、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

参考:「大阪の交通白書 令和3年版」(一般財団法人大阪府交通安全協会)

1、交通事故の損害賠償請求では、過失割合が重要

交通事故による被害について、相手方から十分な損害賠償を獲得できるかどうかは、「過失割合」に大きく左右されます。

  1. (1)過失割合によって損害賠償額が大きく変わる

    「過失割合」とは、交通事故の当事者の間で、どちらにどの程度の責任があるかを示した割合です。

    過失割合が「10対0(100%対0%)」であれば、どちらか一方だけに責任がある交通事故となります。これに対して「9対1(90%対10%)」や「8対2(80%対20%)」のように、程度の差はあれども、当事者がお互いに責任を負うべき交通事故もあります。

    交通事故の過失割合は、「過失相殺」によって損害賠償額に大きく影響します。過失相殺とは、過失割合に応じて損害賠償額を調整するという考え方です(民法第722条第2項)。
    過失割合が少し違うだけで、損害賠償額が数百万円~数千万円異なるケースもあります。

  2. (2)過失割合に応じた損害賠償額の計算例

    過失割合の違いにより、交通事故の損害賠償額がどの程度異なるのかについて、設例を用いて確認してみましょう。

    <設例>
    • AとBが運転する車両が側面衝突した
    • Aに生じた損害額は2900万円(後遺障害慰謝料、逸失利益などを含む)
    • Bに生じた損害額は100万円(車の修理代などが中心、B自身は無傷)
    • AとBの過失割合は「0対10」or「1対9」
    →AがBに対して請求できる損害賠償の金額は?


    設例では、Aに生じた2900万円の損害とBに生じた100万円の損害を、過失相殺により、それぞれAとBの過失割合に応じて配分することになります。

    AとBの過失割合が「0対10」であれば、3000万円の損害全額をBが負担します。したがって、Aは自らに生じた2900万円の損害全額につき、Bに対して損害賠償を請求することが可能です。

    これに対して、AとBの過失割合が「1対9」の場合、AはAの2900万円の損害のうち、1割に当たる290万円は自己負担となり、Bの100万円の損害のうち、1割に当たる10万円を負担しなければなりません。つまり、AはBに対して、2900万円全額の損害賠償は請求できず、結果として、Aの負担額は300万円、実質的に賠償される金額は2600万円にとどまります。

    このように、過失割合が1割違うだけで、損害賠償額に300万円もの差が生じました。もし損害額がさらに高額であれば、過失割合の違いが損害賠償額に与える影響も、よりいっそう大きくなります。

2、防犯カメラ映像は、過失割合の重要な証拠になり得る

交通事故の過失割合が裁判(訴訟)で争われた場合、過失割合を基礎づける証拠をそろえて提出することが重要になります。

警察官が作成する実況見分調書や目撃者の証言も有力な証拠となりますが、それ以上に強力なのが、機械的に記録された映像です。特にドライブレコーダーや防犯カメラの映像は客観性が高いため、交通事故の過失割合を基礎づける強力な証拠として働きます。

最近ではドライブレコーダーを搭載している車も増えましたが、まだまだ未搭載の車も多い状況です。ドライブレコーダー未搭載の車が交通事故にあってしまったら、周囲に防犯カメラ(監視カメラ)が設置されていないかを確認するのがよいでしょう。

防犯カメラにもドライブレコーダーと同様に、事故当時の衝突状況が映像として記録されている可能性があります。相手方が事実と異なる主張をしてきても、防犯カメラ映像を基に矛盾を示すことができれば、損害賠償請求の交渉や法的手続きを有利に進められるでしょう

3、防犯カメラ映像の開示を求める方法

ドライブレコーダーの映像とは異なり、防犯カメラの映像は、運転者(被害者)の手元にありません。

そのため、交通事故の損害賠償請求において防犯カメラ映像を利用するには、映像の開示を受ける必要があります。防犯カメラ映像を開示してもらう方法の例は、以下のとおりです。

  1. (1)防犯カメラの所有者に開示をお願いする

    まずは、防犯カメラの所有者に対して、映像の開示を頼んでみましょう。開示依頼に応じてくれれば、スムーズに防犯カメラ映像を入手できます。

    ただし、トラブルに巻き込まれることなどを嫌がり、防犯カメラの所有者が映像の開示に難色を示すケースがあるかもしれません。その場合は、開示によって責任を問われる可能性はないことなどを伝え、防犯カメラの所有者を説得しましょう。

    ご自身での説得が難しければ、弁護士を通じて説得を試みることが有力な方法です。

  2. (2)弁護士会照会を行う

    防犯カメラの所有者が映像の開示に応じない場合は、弁護士会照会(弁護士法第23条の2)を行うことも考えられます。

    弁護士会照会とは、弁護士の申し出に応じて、所属弁護士会が公務所や公私の団体に対し、必要な事項の報告を求める手続きです。防犯カメラ映像の開示請求についても、弁護士会照会の一環として行うことができます。

    弁護士会照会を受けた公務所または公私の団体は、正当な理由がない限り、紹介された事項について報告をすべき義務を負うと解されています(最高裁平成28年10月18日判決)。

    防犯カメラの所有者が、映像の開示をかたくなに拒否している場合には、弁護士に依頼して弁護士会照会を行うこともご検討ください

  3. (3)民事訴訟を提起して、証拠保全を申し立てる

    防犯カメラの所有者に映像を開示させるためには、民事訴訟を提起して証拠保全を申し立てる方法も考えられます。

    証拠保全とは、あらかじめ証拠調べをしておかなければ、その証拠を使用することが困難となる事情がある場合に、裁判所が証拠を確保(保全)するために行う手続きです(民事
    訴訟法第234条)。

    証拠保全が決定された場合、裁判官が防犯カメラ映像の保管場所に直接赴き、その場で映像を確認します。

    訴訟提起が前提となりますが、防犯カメラ映像を証拠として利用するための最後の手段として、証拠保全という方法があることを知っておきましょう

4、交通事故被害を早めに弁護士へ相談すべき理由

交通事故の被害にあってしまった場合、以下の理由から、速やかに弁護士へご相談いただくことをおすすめします。

  1. (1)防犯カメラ映像が削除される可能性がある

    防犯カメラの所有者は、記録された映像を永久に保存しているわけではありません。撮影から数か月が経過すると、古い映像から順に削除するのが一般的です。

    防犯カメラ映像が削除されると、交通事故の貴重な客観的証拠が失われてしまいます。
    そうなる前に、弁護士にご相談のうえで映像の開示を求めましょう。

  2. (2)今後の損害賠償請求についてアドバイスを受けられる

    弁護士は、交通事故被害者の代理人として、損害賠償請求を全般的にサポートいたします。

    どの程度の損害賠償を獲得できる見込みがあるのか、適正な損害賠償を獲得するにはどのように対応すべきかなど、弁護士はさまざまな観点からアドバイスを行います。交通事故被害者の方にとっては、今後の損害賠償請求の見通しを具体的に持つことができるため、安心感をお持ちいただけるかと思います。

  3. (3)事故直後から保険会社への対応を一任できる

    ご依頼いただいた時点で、弁護士は直ちに、交通事故の損害賠償請求に関する対応を一括して代行いたします。

    加害者側の任意保険会社は、支払う保険金を低額に抑えるため、さまざまな手段を用いて被害者を誘導してくることが想定されます。弁護士は、加害者側の任意保険会社の不合理な主張を拒否し、被害者の方が適正な損害賠償を獲得できるようにサポートいたします。

    交通事故の損害賠償請求は、ぜひお早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

交通事故の損害賠償請求を成功させるには、事故当時の状況を客観的に記録した映像を確保することが重要になります。

車にドライブレコーダーを搭載していなかった場合は、事故現場の周囲に防犯カメラが設置されていなかったかを確認しましょう。防犯カメラがあった場合は、速やかに弁護士へ依頼のうえ、映像の開示請求などを行うことをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスは、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。交通事故によって重いケガや後遺症を負ってしまった方、事故状況に関する証拠がなかなか確保できずにお悩みの方などは、ぜひ一度当事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています