遺産分割協議書の書き方とポイントを岸和田オフィスの弁護士が徹底解説!

2020年01月14日
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遺産分割協議書の書き方とポイントを岸和田オフィスの弁護士が徹底解説!

相続が発生した場合、遺言があればそれに従えばいいので簡単ですが、遺言がない場合には、相続人同士で協議し遺産を分けていくことになります。

そのとき作成するのが、「遺産分割協議書」です。ただ、一般の方で遺産分割協議書を作り慣れているという方はまずいません。

そこで、今回は遺産分割協議書の書き方について解説するとともに、弁護士に依頼するメリットについて説明したいと思います。

1、遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、相続人全員が遺産分割について協議した内容を書面にまとめたものです。死亡した人を「被相続人」と言い、相続を受ける人を「相続人」と言います。

相続人が一人の場合、相続財産はその人ひとりが相続するので、遺産を分割する必要はありませんが、相続人が複数いる場合には、遺言がなければ、遺産をその相続人らで分配しなければなりません。そこで、遺産分割協議が必要になります。

その協議の結果、誰がどの遺産をもらうかが決まったら、それを確定させるため、証拠として書面化しておく必要があります。それが、「遺産分割協議書」です。遺産分割協議書には、相続人全員の署名押印が必要になります。

遺産分割協議書は、遺産分割協議の内容を確定させる証拠書類であると同時に、権利を行使する際に必要な書類となります。第三者からすると相続人の誰がどの遺産を受け取ったかがわからないので、それを明らかにした書類が必要なわけです。その役割を遺産分割協議書が担います。具体的には、不動産の名義変更などで遺産分割協議書が必要になります。

このように、相続手続では重要な役割を果たす遺産分割協議書ですが、法律上作成が義務付けられているわけではありません。そのため、遺産分割協議書を作成しなくても問題が発生することはありません。

ただ、その場合、相続財産は共同相続人の共有ということになってしまうため、不動産の固定資産税などは共同相続人が法定相続分の割合で負担しなければならなくなります。

また、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行うことになっています。このとき、遺産分割がされていないと、各相続人などが民法に規定する法定相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。

その際、相続税の特例である「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」や「配偶者の税額の軽減の特例」などが適用できないので、多額の相続税を納めなければならなくなる可能性があります。また、法定相続分より少ない相続財産しかもらわない相続人は、法定相続分の割合で相続税を支払わなくてはならず、負担が大きくなります。

その後、遺産分割が成立すれば、「配偶者の税額の軽減の特例」などの各種控除は認められるようになりますが、そうするためには、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告または更正の請求をする必要があります。その際、遺産分割協議書が必要になります。

2、遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書は、誰がどの遺産を受け取るのかを明確にする書類なので、それがわかるような書類でなければなりません。以下、項目ごとに解説します。

  1. (1)被相続人の特定

    誰が亡くなり、いつ相続が開始したのかを明らかにするため、①被相続人(死亡した人)の氏名、②被相続人の本籍、③最後の住所、④生年月日、⑤死亡日を記入します。本籍や最後の住所を書くのは同姓同名の人物がいる場合があるので、本籍や住所で本人を特定するものです。生年月日については必須ではありませんが、書いておいた方が、特定性が高まりますので書くことをおすすめします。

  2. (2)相続人らが合意した旨の記載

    相続開始後、共同相続人間で協議し、全員で合意した旨を記載します。その際、合意があった日も記載します。

  3. (3)誰が何を相続したか

    遺産分割協議書で一番大事なのが、この「誰が何を相続したか」です。財産を特定して、それを誰が相続するのか明記します。財産の特定があいまいだとトラブルの元になるので、しっかりと特定することが重要です。それぞれの具体例を記載します。

    【土地の場合】
    土地を特定するためには、登記事項証明書(登記簿)に記載されているとおりに書く必要があります。具体的には次のように記載します。続柄の記載は必須ではありませんが、わかりやすいので記載しておいた方がいいです。

    下記の土地は妻○○○○が相続する
    所在:大阪府岸和田市○○1丁目
    地番:○番地○
    地目:宅地
    地積:○○平方メートル

    【建物の場合】
    建物を特定するためには、登記事項証明書(登記簿)に記載されているとおりに書く必要があります。具体的には次のように記載します。

    下記の建物は妻○○○○が相続する
    所在:大阪府岸和田市○○1丁目
    家屋番号:○番○
    種類:居宅
    構造:鉄骨造2階建
    床面積:1階○○平方メートル、2階○○平方メートル

    【預金の場合】
    預貯金は、預金通帳を見て、金融機関名、支店名、預金種類、口座番号、金額で特定します。具体的には次のように記載します。

    下記の預貯金は長男○○○○が相続する
    ○○銀行○○支店
    普通預金 口座番号○○○○○○
    残高:○○○○○円

    【自動車】
    自動車は、車検証を見て、車名、車両番号、車台番号で特定します。具体的には次のように記載します。

    下記の自動車は長女○○○○が相続する
    車名:BMW
    車両番号:和泉○○あ○○○○
    車台番号:ABC-123456

    【株式】
    株式は、会社名、株式の種類、株数で特定します。具体的には次のように記載します。

    下記の株式は、次男○○○○が相続する
    会社名:○○○○株式会社
    株式の種類:普通株式
    株数:5万株

    なお、財産が少ない場合には、遺産分割協議書の中に、上記のように記載すれば足りますが、財産が多い場合には、別紙として財産目録を作成し、遺産分割協議書には、「別紙財産目録1は、長男○○○○が相続する」というような記載をすることも認められます。

  4. (4)後から発見された遺産の処理

    後になって、遺産が発見されるということもあるため、その場合には誰が取得するかについて記載しておく必要があります。具体的には以下のように記載します。

    本協議書に記載のない財産が後日発見された場合は、次女○○○○が取得することに同意する。

  5. (5)書面作成日

    いつ遺産分割協議書を作成したかを明らかにするために、作成した日付を記載します。

  6. (6)相続人の特定と署名・押印

    最後に、相続人全員の氏名、住所を記載して相続人を特定します。そして、相続人がこの遺産分割協議書に同意していることを明らかにするために、署名と押印をします。氏名を印刷しておき記名としても無効ではありませんが、金融機関よっては記名の遺産分割協議書を認めないところもあるようなので自筆で署名しておくことが無難です。また、押印は必ず実印で押すようにしてください。実印と印鑑証明書がなければ、金融機関は名義変更に応じてくれない場合が多いからです。

  7. (7)作成上の注意点

    遺産分割協議書が複数枚になるときは、「契印」が必要になります。これは、勝手に差し替えが行われていないことを明らかにするためです。また、複数部数が必要な場合には「割印」を押印してください。なお、「捨印」は改ざんされるおそれがありますので、絶対に押印しないよう注意が必要です。

    相続人の中に未成年がいる場合には、親が法定代理人となって協議し契約することになりますが、親と子どもがともに相続人となるような場合には利益相反(親が子どもの権利を害するなど利害が対立する状況)となるので、その場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求し、特別代理人に子どもの代理をさせなければなりません。

3、ひな型やサンプルをそのまま使う危険性

これまで記入の方法について説明してきましたが、インターネットを検索すると遺産分割協議書の「ひな形」や「サンプル書式」がダウンロードできるようになっています。これらは、あらかじめ項目などが記載されているので、とても便利なものです。

ただ、誰が作ったかわからないような書式もたくさんあるので、きちっと要件を満たしているのか見極めるのは結構難しいと言えます。相続はひとつとして同じものはなく、遺産にもいろいろな物があります。ひな形には典型例しか載っていないので、イレギュラーな物に対応することができないというデメリットがあります。

たとえば、遺産として3000万円の土地がひとつしかなく、法定相続人が3人いる場合、ひとりが土地を相続して、土地を相続した人が残りのふたりの相続人に1000万円ずつ代わりにお金を支払うということがあります。これを「代償分割」と言いますが、このような例について記載してあるサンプルは少ないと言えます。

4、弁護士に相談するメリット

相続は、ある日突然訪れますし、遺産が多いような場合、その処理も大変です。遺言があればそれに従えばよいので簡単ですが、遺産分割協議となると利害の対立が激しくなるので兄弟間でもしばしば争いになるものです。

このようなときこそ第三者である弁護士が間に入り合理的に利害を調整することで、遺産分割協議が順調に成立することが期待できます。相続人が感情的に主張しても信用されませんが、弁護士が法的根拠を示しながら説明すれば納得してもらえることがあるものです。

弁護士であれば正確な遺産分割協議書を作成することができるので、書類の作成を任せることができます。その他、相続にかかるさまざまな相談にも応じ、対応できますので、安心できるはずです。面倒な手続きを任せられるだけでもメリットがあると言えます。

また、弁護士が相続の状況を整理することで、見落としをなくし、後々のトラブルを回避できるようになります。

弁護士に依頼することで、これらのメリットを受けられます。慣れない相続手続で不安の中、兄弟間で争いを避けるためにも、弁護士への依頼を検討してみることをおすすめします。

5、まとめ

今回は、遺産分割協議書の内容とその書き方について解説してきました。遺産分割協議書のサンプルを見ると自分で作るのも簡単のように思えるかも知れませんが、サンプルにない内容をどのようにすればよいのかなど、迷われることも多いと思います。

弁護士であれば、正確に事実関係を整理し、間違いのない遺産分割協議書を作成することができますので、相続が発生した場合には、まずは相談してみることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスでは、相続の相談を受け付けておりますので、相続のことでわからないことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

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