【前編】異母兄弟にも相続権がある? 岸和田オフィスの弁護士が解説

2019年09月06日
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【前編】異母兄弟にも相続権がある? 岸和田オフィスの弁護士が解説

平成22年に亡くなった母が所有していた財産のうち、金融機関に預けていた自分の法定相続分の払い戻しを求めた裁判の判決が、平成29年4月、最高裁第1小法廷で下されました。大阪高裁による判決では、預貯金の払い戻しが認められていましたが、最高裁では払い戻しを認めないという判決に覆っています。相続問題では、このように数年越しの裁判になるようなもめごとが数多く起こっています。

あなたに母親の違う兄弟がいるのであれば、父親が他界したあとの相続はどのように行われるのか、非常に気になるところではないでしょうか。本コラムでは、異母兄弟の相続について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、異母兄弟でも状況によって相続は可能

異母兄弟とは、その言葉のとおり、「父親は同じ人物ではあるが、母親が異なる子どもたち」を指します。「腹違いの兄弟」と呼ぶ方もいるでしょう。

法律上、婚姻中の男女間に生まれた子どもを「嫡出子」、婚姻していない男女の間に生まれた子どもは「非嫡出子」と区別されています。あなたの母親が前妻と子どもがいる男性と再婚したケースをはじめ、母親は父親と婚姻せずに生まれ育った方などが該当するでしょう。

また、相続関連の基礎用語として、まずは「被相続人」とは亡くなった方を指し、「相続人」とは被相続人の財産をもらう権利を持つ方を指すことを知っておきましょう。ここでは主に、あなたの父親が他界して相続が発生したとして解説します。つまり、あなたの父親が「被相続人」となったケースです。

異母兄弟が相続にかかわるケースとかかわらないケースの答えは、戸籍が握っているのです。

  1. (1)相続の権利があるケース

    結論からいえば、異母兄弟であっても相続できる権利を持つ方は、2パターンあります。ひとつは、「被相続人の名前が戸籍上の父親の欄に記載されているケース」です。もうひとつは、「被相続人と養子縁組をしているケース」が該当します。

    ●被相続人の名前が戸籍上の父親の欄に記載されているケース
    被相続人とあなたの母親が婚姻中にあなたが生まれたのであれば、戸籍の「父」を記す欄には被相続人の名前が入っているはずです。また、たとえあなたの母親と被相続人が婚姻をしていなかったとしても、被相続人があなたを認知していれば、戸籍の「父」を記す欄に被相続人の名前が入っています。

    これらの状態であれば、たとえ世間的には非嫡出子と嫡出子という違いがあったとしても、同じく相続する権利を有するといえます。

    なお、かつて非嫡出子と嫡出子では、相続の面で大きな差が設けられていました。しかし、平成25年に最高裁判所による判決で憲法違反であることが明確にされてからは、この規定が削除されています。したがって、嫡出子であればもちろん非嫡出子であっても、戸籍上の父親の欄に亡くなった父親の名前が記載されているのであれば、同じ子どもとして扱うことになっています。

    ●被相続人と養子縁組をしているケース
    たとえば、あなた自身が亡くなった父親とはまったく血がつながっていなくても、養子縁組をしていれば相続権があります。あなたの母親が被相続人と再婚したあと、あなたと被相続人が養子縁組をしたケースなどが該当するでしょう。

    ただし、養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組があります。たとえば、あなたの異母兄弟が被相続人の実の子であっても、別の親と特別養子縁組をしていれば、実親との相続権は消滅していることになります。

  2. (2)相続する権利がないケース

    たとえ、被相続人とあなたの間に血がつながっている父親であっても、被相続人があなたを認知していない状態であれば相続する権利はありません。ただし、あなたが「死後認知の訴え」と呼ばれる請求を行い、DNA鑑定を通じて親子関係が証明されれば、相続する権利を得られる可能性が出てきます。

    また、実際に父のように育てられたとしても養子縁組をしていない場合、残念ながら相続する権利はないといえます。さらに、かつて養子縁組をしていたとしても解消してしまうと相続権が消滅します。

2、異母兄弟の相続分について

異母兄弟にも相続の権利はあると書きましたが、では具体的にどのような場合に相続に関係してくるのでしょうか。

  1. (1)父親が死亡した場合の相続

    まず、被相続人となった父親に配偶者がいれば、まずは遺産の半分を配偶者へ分割相続されます。

    そして、前述の「(1)相続の権利があるケース」に該当する被相続人の子どもたちが、配偶者の受け取り分を引いて残った財産を兄弟で均等に分け合うことになります。前述で解説したとおり、嫡出子や非嫡出子の差があったとしても、相続における分配の割合について差はありません。

  2. (2)母親が死亡した場合の相続

    もし、異母兄弟の子どもがいるあなたの父親と婚姻関係にあるあなたの母親が死亡した場合、あなたの母親が被相続人となります。

    異母兄弟とあなた母親との間には血縁はありません。さらに、養子縁組なども行っていない状態で戸籍上のつながりがなければ、あなたの異母兄弟に相続権はないといえます。

    ただし、どこまでが母親固有の財産かという異議を申し立ててくる可能性はあるでしょう。そのような事態が起きたときは、弁護士へ相談することをおすすめします。

  3. (3)兄弟が死亡した場合の相続

    あなたの異母兄弟が死亡した場合、没交渉状態であれば自分とは関係がないことと思うかもしれません。しかし、その死亡した兄弟に直系の家族がおらず、すでにふたりの共通している親も死亡している場合は、相続権は異母兄弟であるあなたにまで範囲が広がります。

    ただし、異母兄弟が被相続人になった場合における兄弟間の相続では、血のつながりで違いがあります。被相続人と親子関係間における相続の場合は血縁関係によって分配比率に差がありませんでしたが、両方の親が同じ兄弟はそれぞれ同じ比率で分配することになります。

    しかし、片方の親しか同じでない兄弟は、両親が同じ兄弟が受け取る相続のさらに2分の1だけ相続する権利が設けられています。また、異母兄弟には遺留分減殺請求権を持ちません。したがって、遺言書に従って相続がなされれば、遺留分減殺請求を行われることはありません。なお、遺留分減殺請求権とは、遺言をされていても、法律で定められた「最低限度はもらえる遺産の割合」を求める権利を指します。

    ここまでは、相続の際、異母兄弟がいるケースにおいて、相続する権利の有無から、相続の割合などについて解説しました。後編では、引き続き岸和田オフィスの弁護士が、異母兄弟がいる場合における相続で起こりやすいトラブルや、トラブルを回避する方法について解説します。

    >後編はこちら

ご注意ください

「遺留分減殺請求」は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」へ名称変更、および、制度内容も変更となりました。

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