代襲相続(だいしゅうそうぞく)の範囲はどこまで? 該当するケースとは

2022年11月09日
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代襲相続(だいしゅうそうぞく)の範囲はどこまで? 該当するケースとは

大阪府岸和田市が公表している「岸和田市人口ビジョン」によると、岸和田市の人口は2002年の20万1500人をピークに減少に転じました。2022年9月1日現在、岸和田市の人口は18万9742人となっています。

こうした状況下相続人が死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合、その子どもが相続権を取得します。これを「代襲相続」といいます。代襲相続が発生すると、遠い親戚同士で遺産分割協議を行うことになる可能性があります。

その分トラブルに発展しやすいため、一度弁護士までご相談ください。今回は、代襲相続について知っておくべきことを、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

出典:「岸和田市人口ビジョン」(岸和田市)
出典:「人口・世帯数(令和4年9月1日)」(岸和田市)

1、代襲相続とは?

代襲相続が発生すると、亡くなった被相続人の孫や甥・姪などが相続人になることがあります。
まずは代襲相続について、基本的な知識を確認しておきましょう。

  1. (1)代襲相続=相続権を失った者の子が相続人となること

    「代襲相続」とは、相続権を失った者の子が相続人となることを意味します。

    相続人の子は本来、被相続人から相続人が承継した財産を、次の相続によって承継できる可能性があります。相続人本人に原因があり相続権を失ったとしても、そのせいで相続人の子が一切被相続人の財産を承継できなくなるのは酷です。

    そこで、被相続人の子が持つ、被相続人の財産への合理的な期待を保護するため、一定の場合には相続権を失った者の子が代襲相続人となり、親の代わりに財産を相続することが認められています。

  2. (2)代襲相続の原因となる事由

    代襲相続が発生するのは、死亡・相続欠格・相続廃除のいずれかによって、相続人が相続権を失った場合です。(相続欠格・相続廃除については、2章で後述)

    なお、相続人が相続放棄をした場合については、代襲相続が発生しない点にご注意ください。

  3. (3)代襲相続人の範囲

    代襲相続人となるのは、以下の相続人の子です(民法第887条第2項、第3項、第889条第2項)。

    1. ① 被相続人の子
    2. ② 被相続人の兄弟姉妹
    3. ③ 代襲相続人である被相続人の直系卑属


    ①の場合は被相続人の孫、②の場合は被相続人の甥・姪が代襲相続人となります。

    ②については、被相続人の兄弟姉妹に相続権がない場合(=被相続人の子または直系尊属がいる場合)には、代襲相続は発生しません。

    ③は「再代襲相続」と呼ばれるものです。たとえば、被相続人の子も孫も亡くなっている場合は、ひ孫が相続人となります(それ以降も同様)。

    なお、被相続人の甥・姪が相続権を失った場合は、さらにその子が代襲相続人となることはないのでご注意ください

2、相続欠格・相続廃除とは?

代襲相続は、相続人が死亡した場合のほか、相続欠格または相続廃除によって相続権を失った場合にも発生します。

  1. (1)相続欠格|当然に相続権を失う

    「相続欠格」とは、きわめて悪質な行為をした相続人が、相続権をはく奪されるという制度です(民法第891条)。

    相続欠格に該当する事由は、以下のとおりです。

    1. ① 故意に被相続人・先順位相続人・同順位相続人のいずれかを死亡させ、または死亡させようとしたために、刑に処せられたこと
    2. ② 被相続人が殺害されたことを知っていながら、告発または告訴をしなかったこと(是非の弁別がない場合、または殺害者が自己の配偶者または直系血族であった場合を除く)
    3. ③ 詐欺または強迫によって、遺言やその撤回・取り消し・変更を妨げたこと
    4. ④ 詐欺または強迫によって、遺言をさせ、または遺言を撤回・取り消し・変更させたこと
    5. ⑤ 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿したこと


    相続欠格に該当した者は、法律上当然に相続権を失います。

    したがって、被相続人の子もしくは兄弟姉妹、または代襲相続人である被相続人の直系卑属が相続欠格に該当した場合には、特に手続きを要することなく、欠格者の子が代襲相続人となります。

  2. (2)相続廃除|被相続人の請求により相続権を失う

    「相続廃除(相続人廃除)」とは、著しい非行があった相続人の相続権を、家庭裁判所が審判によってはく奪することを意味します。

    被相続人は、自分に対する虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行があった推定相続人につき、家庭裁判所に対して廃除を請求できます(民法第892条)

    また、遺言によって廃除の意思表示を行うこともでき、その場合は遺言執行者が家庭裁判所に対して推定相続人の廃除を請求します(民法第893条)。

    審判によって廃除された推定相続人は、相続権を失います。もし、被相続人の子、兄弟姉妹、または代襲相続人である被相続人の直系卑属が廃除された場合は、その子が代襲相続人となります。

3、代襲相続人の相続割合・相続税

代襲相続人の相続割合は被代襲者と同じですが、代襲相続人が複数いる場合は頭割りとなります。

また、代襲相続人が複数いるケースでは、相続税の基礎控除額が増えるため、結果的に相続税が軽減される可能性があります。

  1. (1)代襲相続人の相続割合は、被代襲者と同じ|複数の場合は人数割り

    代襲相続人の相続分は、被代襲者が受けるべき相続分と同じです(民法第901条)。「被代襲者」とは、死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った者を指します。

    ただし、代襲相続人が複数いる場合には、相続分を頭割りします(民法第901条第1項、第900条第4号)。

    たとえば、以下の設例を考えてみましょう。

    <設例>
    • もとの相続人は、配偶者A、子B、子Cの3人
      被相続人が死亡する前に子Bが死亡し、子Bの子であるD・E(被相続人の孫)が代襲相続人となった


    設例①では、当初のA・B・Cの相続割合(法定相続分)は、それぞれ2分の1・4分の1・4分の1です。

    子Bは被相続人が死亡する前に死亡し、その結果、子Bの子であるD・Eが代襲相続人となっています。
    D・Eの相続割合はBと同じ、つまり合わせて4分の1です。
    D・Eの相続割合は等しいため、それぞれ8分の1ずつとなります。

    したがって、最終的な相続割合は以下のとおりです。

    配偶者A:2分の1
    子C:4分の1
    孫D:8分の1
    孫E:8分の1
  2. (2)代襲相続人が複数の場合、相続税の基礎控除額が増える

    相続税については、相続財産等のうち一定額が非課税となる「基礎控除」が設けられています。

    基礎控除額の計算式は、以下のとおりです。

    基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数


    代襲相続人については、その全員が法定相続人の数にカウントされますしたがって、1人の相続人が死亡し、複数の代襲相続人が発生した場合には、相続税の基礎控除額が増えることになります

    たとえば前掲の設例では、当初はA・B・Cの3人が法定相続人であり、相続税の基礎控除額は4800万円でした。しかし、代襲相続によってA・C・D・Eの4人が法定相続人となったため、相続税の基礎控除額は5400万円に増えます。

4、代襲相続人に遺産を相続させないことはできるか?

特に甥・姪などによる代襲相続が発生した場合、被相続人にとって関係性の遠い親族に遺産を渡すことになります。
それが嫌だと考えた場合、代襲相続人に遺産を相続させないことはできるのでしょうか?

  1. (1)遺言書で相続分をゼロと指定することは可能

    被相続人は遺言書を作成して、代襲相続人の相続分をゼロと指定することはできます。
    遺言により、財産を自由に処分することが認められているからです(民法第964条)。

    遺言書があるケースでは、原則としてそのとおりに遺産分割が行われるので、代襲相続人に遺産を渡したくない場合は、遺言書を作成するのがよいでしょう。

  2. (2)甥・姪以外の代襲相続人には、遺留分があることに注意

    ただし、代襲相続人に遺留分がある場合は、遺言書によって相続分をゼロと指定すると、相続人間で遺留分侵害額請求を巡るトラブルに発展する可能性があります。

    遺留分とは、相続人が相続できる遺産の最低保障額です。遺言書により、遺留分に満たない相続分を指定された相続人は、遺産を多く取得した者に対して遺留分侵害額請求を行い、金銭の支払いを受けることができます(民法第1046条第1項)。

    代襲相続人については、被代襲者が被相続人の直系卑属である場合に限り、遺留分が認められます。

    つまり、遺留分が認められる代襲相続人は孫・ひ孫……などですこれらの代襲相続人については、相続分をゼロと指定しても、遺留分侵害額請求が行われてしまう可能性がある点にご注意ください

    これに対して、被相続人の兄弟姉妹を被代襲者とする代襲相続人については、遺留分が認められません。

    したがって、甥・姪に遺産を相続させたくない場合は、遺言書で相続分をゼロと指定しておけばよいでしょう。

5、まとめ

相続人が死亡・相続欠格・相続廃除により相続権を失った場合、代襲相続によってその子どもが相続人となることがあります。

代襲相続が発生すると、関係性の遠い親族間で遺産分割を行うことになり、トラブルに発展しやすいため、弁護士への相談をおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスは、数次相続・代襲相続などの複雑な相続事案についても、綿密なサポートにより迅速な解決を目指します。相続に関するご相談は、ぜひ当事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています