家族が大麻で逮捕された! 初犯の刑罰や手続きはどうなる?
- 薬物事件
- 大麻
- 初犯
- 岸和田
大阪では、大麻を使用した少年の検挙人員が、平成30年は100人、令和元年は96人と、深刻な状況になっています。
また、平成28年4月、大阪府岸和田市で中学3年生だった男子生徒に大麻を譲り渡したとして、19歳の少年が逮捕されたというニュースが報道されました。男子生徒はその前年の平成27年9月に大麻所持の容疑で現行犯逮捕されていたと伝えられています。
万が一、家族が大麻を所持していたとして逮捕された場合、その後はどのようになってしまうのでしょうか。家族としてできることはあるのでしょうか。
この記事では、初犯という特殊性も踏まえつつ、大麻取締法違反について弁護士が解説します。
1、大麻で逮捕されるケースはさまざま
大麻は、吸うと幻覚症状などが現れ、本人だけでなく他人にも害が及ぶ危険があることから、大麻取締法で規制されています。
大麻は化学物質を用いて作られる覚せい剤と異なり、大麻という植物を乾燥させて作られているため、個人で栽培して作ることができてしまう特徴があります。大麻取締法では、大麻を所持するだけでなく、栽培すること、誰かに譲ること、誰かから譲り受けることなど、を幅広く規制していて、逮捕されるケースもさまざまとなります。
他方、大麻を使用しただけでは犯罪に該当せず、逮捕されません。ここは覚せい剤を使用しただけでも逮捕される場合と異なる点です。なぜなら、伝統的に大麻を使用する産業が現在も存在しているため、従事する者を守る目的があるためです。
しかし、一般的な職業や学生であれば、誰かからもらったり、自分で作ったりしなければ、大麻を使用することはできません。よって、「使用はしたけれども譲ってもらったり栽培したりはしていない」という言い訳が認められることはほとんどないでしょう。
2、大麻で逮捕されるのは、通常逮捕も現行犯逮捕もある
大麻で逮捕されるケースはさまざまであることをお伝えしましたが、逮捕される場合は、通常逮捕と現行犯逮捕の2通りあります。
通常逮捕とは、逮捕状を用いて逮捕に至ることを指します。たとえば、自分の所持していた大麻を誰かに売り、売られた人が逮捕されれば、当然誰から受け取ったか、取り調べで聞かれることになります。この取り調べを受けて捜査がなされ、容疑が定まったとき、逮捕状を請求され通常逮捕となります。
他方、現行犯逮捕は、犯行中もしくは犯行直後に身柄を拘束される逮捕方法を指します。大麻を持ち歩いているときに、警察からの職務質問によって所持が発覚し、逮捕されるケースなどが想定できます。また、おとり捜査によって、大麻の客と見せかけた捜査員に大麻を売ろうとしてしまい、その場で現行犯逮捕されるケースもあるでしょう。
3、大麻で逮捕されたらどうなる?
大麻で逮捕されたときも、原則として、刑事訴訟法で定められた刑事事件の手続きで進められていきます。他方、冒頭の事件のように逮捕された者が14歳以上の未成年者だった場合は、少年法に基づいた手続きによって処分が下されることになります。なお、14歳未満の少年が罪を犯したとしても罪を問うことができないため、その身柄は保護されることになります。
まず、通常逮捕でも現行犯逮捕でも、逮捕後は「被疑者」として、警察官による取り調べを受けることになります。警察側で逮捕から48時間以内に検察に事件や被疑者自身の身柄を送る「送致」を行うか、釈放するかどうかについて決定します。
送致されると、次は検察官からの取り調べが行われます。検察は、送致から24時間以内に、さらに身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」の必要性を検討します。必要があれば勾留請求を裁判所に対して行い、勾留が決定するとさらに10日間、帰宅が許されないまま取り調べを受けることになります。勾留には延長制度が認められており、さらに最大10日間延長されるケースもあります。ここまでの流れは、原則、逮捕された者が未成年者であっても、14歳以上であれば同じプロセスを踏むことになります。
検察官は、勾留中に被疑者を起訴するか不起訴とするかを決定します。起訴されれば裁判の手続きに移行します。保釈手続きを行い、認められない限りは、裁判が終わるまでは自宅に帰ることができなくなります。
少年事件の場合は、その身柄と事件は検察から家庭裁判所へ送られ、将来の更生を見据えてどのようにすべきかが検討されていきます。
4、初犯の場合の刑罰は? 特別な取り扱いはないの?
大麻に関する犯罪の場合、刑罰はそれぞれのケースで異なります。たとえば、持っていたり、誰かからもらったり、誰かに渡したりした場合は、5年以下の懲役になります。これが営利目的によるものだった場合は、7年以下の懲役になります。情状によっては、7年以下の懲役に200万円以下の罰金が科される場合もあります。
他方、大麻を栽培したり、外国から輸入したり、はたまた輸出したような場合にも、7年以下の懲役です。これが営利目的によるものだった場合は、10年以下の懲役となります。情状によっては、10年以下の懲役と300万円以下の罰金も科されることがあります。
このように、大麻に関する犯罪をしてしまうと、量刑はかなり厳しいものになると理解する必要があるでしょう。ただし、初犯の場合は、執行猶予がつくケースが多い傾向にあります。また、所持罪の場合、実際に持っていた大麻の量が微量であれば、不起訴処分になるケースも多く見られます。
不起訴処分になれば有罪判決を受けることなく手続きが終了します。仮に有罪判決が出たとしても、執行猶予つき判決がくだれば刑務所に入らなくて済むことになりますので、社会復帰ができるようになります。
もっとも、前科があるような場合や大麻の栽培や販売まで行っていたような場合は、もはや素人の犯罪ではないため、刑罰が厳しくなっている傾向があります。
5、家族が大麻で逮捕されたときすべきこととは?
家族が大麻の所持などで逮捕されてしまった場合、残念ながら身内だけで対応できることはあまり多くありません。逮捕されてから勾留まで家族であっても面会することはできないためです。
では、どうしたらよいのでしょうか。
-
(1)なるべく早く弁護士に相談する
まずはできるだけ早いタイミングで、弁護士に接見を依頼することをおすすめします。接見とは、警察での面会や差し入れを行うことを指します。
警察などから取り調べを受け、本人は精神的につらい状態になっていることもあります。家族とは直接会えなくとも、弁護士を依頼すれば、逮捕後からすぐに接見が行えます。弁護士であれば、取り調べについて知りたいことを本人から聞いたり、あなたの思いなどを伝えたり、差し入れとしてあなたから預かった着替えを渡したりすることができます。
大麻の犯罪は、販売や栽培にかかわっていたケースでなければ、被害者がいない犯罪です。深く反省しているか、今後どう立ち直って社会生活を送ることができるか、送ることが可能な環境にあるのかなどを考慮して刑罰が決められていくことになります。
弁護士に相談することで、取り調べでどのような対応をすべきかなどの法的なアドバイスを受けることができます。家族では耳を貸せない精神状態であっても、弁護士と面会することで、不安な状況にある精神状態から冷静さを取り戻すことにも期待できます。 -
(2)家族だけで抱え込まない
単純な大麻の所持などだけでなく、使用による薬物中毒などに陥っている場合、家族や本人だけではもはや解決できないものです。依存症外来など、専門の相談窓口などに相談し、薬物問題を解決していくことをおすすめします。弁護士によっては、必要に応じ、専門家の紹介を行うこともできるでしょう。
6、まとめ
大麻取締法では、所持から譲り受け、譲り渡し、さらに栽培までさまざまなケースが想定されています。そして、量刑もかなり厳しいものが定められているのが特徴です。
初犯の場合は、起訴猶予処分や、起訴されて有罪判決が出たとしても執行猶予がつけられることもあるでしょう。しかし、弁護士による法的観点からのアドバイスがカギを握るシーンが多々あります。また、早期に身柄が解放されれば、社会復帰がスムーズに進む可能性が高まりますが、本人を取り巻く家族だけでなく専門家によるサポートが必要不可欠となるでしょう。
家族が大麻がらみの事件で逮捕されてしまったときは、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスへ連絡してください。刑事事件に対応した経験が豊富な岸和田オフィスの弁護士が、スムーズな社会復帰ができるよう、力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|