詐欺は厳罰化される? オンラインサロン詐欺・給付金詐欺などの新たな手口も解説

2021年06月29日
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詐欺は厳罰化される? オンラインサロン詐欺・給付金詐欺などの新たな手口も解説

大阪府警察が公表しているデータによると、令和2年中に岸和田市周辺において詐欺罪で検挙された地域別人員は次のとおりでした。

岸和田市18人、和泉市10人、貝塚市10人、泉佐野市15人、泉南市5人、阪南市4人、泉北郡忠岡町5人、泉南郡熊取町3人、泉南郡岬町0人

詐欺にはさまざまな手口があり、意外にも身近なところで発生しています。ちょっとした出来心や美味い儲け話だと思って乗った話が実は詐欺で、とくに悪意があったわけではなくても思いがけず詐欺の加害者になってしまうケースもめずらしくありません。

社会情勢や流行を逆手に取った新手の詐欺の現状に注目しながら、詐欺罪が成立する要件や刑罰、詐欺罪の容疑で逮捕されたときに取るべき対応を、岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、特殊詐欺をはじめとした新手の詐欺の現状

犯罪を実行するにあたって幾通りもの方法や目的が存在するものを「手口犯罪」と呼びます。
国家公安委員会が定めた「犯罪手口資料取扱規則」によると、手口犯罪に分類されるのは、殺人・強盗・放火・誘拐・恐喝・窃盗・詐欺・性的犯罪の8種類です。
8種類のなかでもっとも多くの手口が存在するのは窃盗罪ですが、常に新しい手口が登場し、犯人と捜査機関のいたちごっこが続いているのは詐欺罪だけでしょう。

旧来は「振り込め詐欺」と呼ばれていた「特殊詐欺」の認知・検挙状況や近年になって新たに登場した手口の詐欺の現状を解説します。

  1. (1)特殊詐欺の認知・検挙状況

    警察庁が開設している「特殊詐欺対策ページ」に掲載されている情報によると、令和2年中に全国の警察が認知した特殊詐欺事件の件数は1万3526件で、被害の合計額は277億8160万7633円でした。

    過去10年のデータと比較すると、認知件数のピークとなった平成29年から4686件が減少していますが、依然として巨額の被害が発生している状況です。同年中に検挙された特殊詐欺の件数は7424件で、前年から607件増加し、過去最高を更新しました。

    日ごろの警察活動だけでなく、幅広い世代への広報などによって特殊詐欺の防止・撲滅を呼びかけるほか、金融機関などとの連携を強化する取り組みが進んでおり、今後もますます取締りが強化されるものと予想されます。

  2. (2)急増するオンラインサロン詐欺

    月々の会費を支払うことでウェブ上のコミュニティに参加できる「オンラインサロン」は、専門知識の習得や同じ趣味・目的をもっているユーザーとの交流が可能であるため利用者が急増しています。
    一方で、オンラインサロンを悪用した詐欺や悪徳商法も登場しています。

    • 月額制と聞いて入会したが、途中退会を申し出たところ「1年契約だ」と言われて返金してもらえない
    • 有名企業の経営術を学べると聞いて入会したが、主宰者の経歴詐称が発覚して返金トラブルになっている
    • ほかの会員から投資話をもちかけられて大金を失った
    • 入会後に高額な商品の購入を指示された


    主宰者側が詐欺まがいのオンラインサロンを開設しているケースだけでなく、ほかの会員から儲け話をもちかけられて詐欺被害に遭うケースもあるようです。

  3. (3)逮捕者が続出している持続化給付金詐欺

    新型コロナウイルス感染症の拡大によって売上が減少した中小企業や個人事業主を救済する目的で実施された政府の財政支援策である「持続化給付金」をだまし取る「持続化給付金詐欺」が大きな問題になっています。

    • 事業を実施していないのに事業主であるかのように装って給付金を申請する
    • 「売上が減少した」と偽って給付金を申請する
    • 売上減少の理由が新型コロナウイルス感染症に無関係であるのに給付金を申請する


    これらはすべて詐欺罪に問われる行為です政府は不正受給の調査を進めており、不正の内容が悪質な場合は刑事告発をすると明言しています

    全国の事例に目を向けると、おもに申請代行業者や指南役を名乗る人物を介して不正受給に手を染めた人の逮捕が目立ち、令和3年5月には、SNSを通じて全国およそ160人に不正受給を持ちかけた5人が警視庁に逮捕されました。

    素早い給付を実現するために申請方法や必要書類が簡素化されていたため、大学生など事業実態のない人が申請代行業者などにそそのかされて不正受給をはたらいたケースも多数です。もちろん、申請代行業者などにそそのかされたといっても実際に持続化給付金をだまし取った本人が厳しく罰せられることになります

2、詐欺罪の成立要件と刑罰

詐欺罪は刑法第246条に規定されている犯罪です。
「人を欺いて財物を交付させた者」が罰せられます。

詐欺罪が成立する要件と刑罰を確認しておきましょう。

  1. (1)詐欺罪が成立する要件

    詐欺罪が成立するのは以下の4つの要件を満たす場合です。

    • 欺罔(ぎもう)
    • 錯誤
    • 処分行為
    • 財産の移転


    「欺罔」とは、嘘を言ってだます行為です。欺罔には故意が求められます。
    たとえば「いい儲け話がある」と持ちかけた場合、そもそも儲け話があるという話自体が嘘であれば欺罔となりますが、儲けを期待できる話が実在していたにもかかわらず結果が得られなかっただけであれば故意がないため欺罔にはなりません。

    「錯誤」とは欺罔を受けた被害者が嘘を信じ込んでだまされている状態をさします。
    「処分行為」とは、錯誤に陥った被害者がみずから金品を差し出す行為です。

    ここまでの欺罔・錯誤・処分行為に因果関係があり、処分行為によって金品が加害者の手に「移転」した時点で、詐欺罪が成立します。

    なお、詐欺罪には未遂を処罰する規定があるため、欺罔する行為を行っただけでも、逮捕や処罰されるおそれがあります

  2. (2)詐欺罪の刑罰

    詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
    罰金刑は規定されていないので、刑事裁判で有罪となった場合は必ず懲役が言い渡されます。

3、詐欺罪は厳罰化傾向にあるのか?有罪率と実刑の割合

特殊詐欺をはじめとした詐欺行為は社会的に強く非難されるものであり、厳しい処罰を求める声も多数です。
ここでは、詐欺罪が厳罰化の傾向にあるのかをみていきましょう。

  1. (1)詐欺罪の有罪率と実刑の割合

    令和元年の司法統計によると、全国の地方裁判所で開かれた第一審事件のうち、詐欺罪で有罪判決が下された人員は3543人で、無罪は0人でした。
    令和元年に限っては、第一審の有罪率は100%です。

    有罪判決を受けた3543人のうち、1696人に実刑判決が下されています。
    刑期別の人員は次のとおりです。

    • 10年以下……22人
    • 7年以下……98人
    • 5年以下……416人
    • 3年以下……175人
    • 2年以上……527人
    • 1年以上……386人
    • 6か月以上……70人
    • 6か月未満……2人


    全部執行猶予を受けたのは1847人でした。
    実刑判決を受けた人の割合は47.8%なので、およそ半数が実刑判決を受けたことになります。

  2. (2)詐欺罪は初犯でも実刑の危険がある

    詐欺罪は最高で10年にわたって刑務所に収監される危険のある重罪です。過去に前科・前歴のない初犯であっても、多数の被害者からお金をだまし取っている、被害が多額にのぼるといったケースでは、実刑判決が下されるおそれがあります。

    特殊詐欺のように組織的な詐欺事件では、さらに実刑判決が下される危険が高まります。
    その場合、刑法の詐欺罪ではなく「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(通称:組織犯罪処罰法)」第3条1項13号の「組織的詐欺罪」が成立し、懲役1年以上20年以下の刑罰が下されるのです

    3年を超える懲役には執行猶予がつかないため、組織犯罪処分法が適用されると実刑判決を受ける危険が極めて高くなると心得ておく必要があります。

  3. (3)悪質な詐欺事件は厳罰化される危険がある

    現在のところ、刑法改正による詐欺罪の厳罰化は予定されていません。
    しかし、社会情勢が変化するたびに新たな手口の詐欺が登場し、被害が多発している現状から、世間は厳罰化を求めています。
    悪質な詐欺事件には、刑事裁判で厳しい刑罰が下される危険が高いでしょう。

4、詐欺容疑で逮捕されたらただちに弁護士に相談を

詐欺の容疑をかけられて逮捕されてしまった場合は、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。

  1. (1)逮捕後は最長23日間にわたる身柄拘束を受ける

    警察に逮捕されると、警察・検察官の段階で合計72時間にわたる身柄拘束を受けます。
    さらに、検察官の請求によって勾留が認められた場合は、最長20日間を上限に身柄拘束が延長されます。
    逮捕から検察官が起訴するまでに最長で23日間にわたる身柄拘束を受けてしまえば、解雇や退学といった不利益な処分を受ける危険が高いでしょう。

    弁護士に依頼すれば、逮捕直後で面会が認められない期間でも弁護士による接見の機会を通じて取り調べに際してのアドバイスが得られます取り調べで不利な供述をしてしまわないためには、弁護士のアドバイスが欠かせません

  2. (2)厳しい処罰を回避するためには弁護士のサポートが必須

    詐欺事件で厳しい処罰を回避するためには、被害者との示談交渉が必須です。
    しかし、詐欺事件の被害者は加害者に対して強い怒りや嫌悪の感情を抱いていることが多いため、加害者本人や家族が示談をもちかけても交渉のテーブルにさえついてもらえないおそれがあります。

    示談交渉の実績がある弁護士が代理人として交渉を務めることで、被害者の警戒心が和らぎ、示談交渉が円滑に進む可能性が高まるでしょう。

    特殊詐欺をはじめとした詐欺事件は世間の非難を集めやすく、初犯であっても実刑判決が下されてしまう危険があります執行猶予などの有利な処分を期待するなら、弁護士に依頼することをおすすめします

5、まとめ

特殊詐欺をはじめとした詐欺事件には、世間の強い非難が集まりやすく、厳しい刑罰が下される可能性があります。
悪質だと判断されれば初犯でも実刑判決を受けてしまうことがあるため、容疑をかけられたら早い段階で弁護士に相談してサポートを受けるのが賢明です。

詐欺事件の容疑をかけられてしまいお困りであれば、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。
詐欺事件を含めた刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、早期釈放や厳しい処罰の回避に向けて全力でサポートします。

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