銃刀法改正│クロスボウ(ボウガン)は許可がなければ所持禁止に!
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「クロスボウ」とは、西洋で用いられた弓の一種で、引き金を引くことで矢を発射できることから、弓の扱いを練習しなくても正確に狙って射撃できる武器です。日本では矢を意味する「bow(ボウ)」と銃を意味する「gun(ガン)」を組み合わせた「ボウガン」という名称でも知られています。
人を容易に殺傷できる危険な武器でありながら、法律による強い規制は敷かれていませんでしたが、令和4年3月の法改正によって所持が原則禁止となりました。大阪府警察のホームページでも「クロスボウの所持が原則禁止されました!!」と題されたページが公開されており、法改正の内容が広報されているところです。
本コラムでは「クロスボウ」に関する規制の内容や今後も所持するための条件、すでに持っているクロスボウの扱いなどを解説します。
1、銃刀法改正でクロスボウの所持は原則禁止
クロスボウは「銃砲刀剣類所持等取締法」、いわゆる「銃刀法」の規制対象に加えられました。ここでは、クロスボウに関する銃刀法の改正内容を確認していきます。
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(1)法律で規制される「クロスボウ」の要件
クロスボウには、スポーツ競技で使用する本格的なものがあれば、子ども用の玩具(おもちゃ)として販売されているものもあります。
では、子ども用の玩具も法律で規制されるのかといえば、そうではありません。銃刀法の規制対象となるクロスボウは、次の2つの要件を満たすものに限られます。- 引いた弦を固定し、これを解放することによって矢を発射する構造を有する弓である
- 発射された矢の運動エネルギーの値が6.0ジュール以上になるものである
「6.0ジュール」とは、人の生命に危険を及ぼし得る値であり、市販されているクロスボウは玩具を除いてこの数値を超えることが確認されています。構造上はクロスボウにあたるものでも、発射された矢の運動エネルギーが基準値以下の場合は規制対象には含まれません。
また、構造上、引いた弦を固定する仕組みでなければクロスボウにはあたらないので、弓道で使用する和弓やアーチェリーで使用する洋弓は規制の対象外です。 -
(2)クロスボウの所持は令和4年3月から原則禁止
銃刀法の改正で、拳銃などの「銃砲」や刀などの「刀剣類」と並んでクロスボウも所持が禁止されることになりました。
改正銃刀法第3条では、所持を禁止する対象を「何人(なんぴと)も」と明記しているため、すべての人が所持禁止となります。
クロスボウの規制を含んだ改正銃刀法は、令和4年3月15日に施行されているため、すでに現時点でも所持していれば違法です。
ただし、令和4年3月15日午前0時までに所持していたクロスボウについては、そのクロスボウに限って同年9月14日までの6か月は、違法状態を解消するための所持を認めるという経過措置が取られています。
あくまでも違法状態を解消するための所持であり、新たにクロスボウを購入したり、単なるコレクションとして所持したりといった行為は認められません。
2、所持するためには「許可」が必要
クロスボウの所持は広く誰もが禁止されることになりましたが「許可」を受けることで限定的に所持が認められます。
ただし、誰でも許可を受けられるわけではありません。クロスボウの所持許可を受けるための条件や許可の流れなどを確認していきましょう。
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(1)許可を受けるための条件と許可の流れ
クロスボウの所持が許可されるためには、許可を申請する人や対象となるクロスボウについて「許可できない」という「欠格事由」に該当しないことが必要です。
クロスボウ所持に対する人的な欠格事由- 18歳未満である
- 禁錮以上の刑の執行を終えてから5年が経過していない
クロスボウ所持に対する物的な欠格事由- クロスボウの構造や機能が一定の基準に適合しない
これらの条件を満たしてクロスボウの所持許可を希望する場合は、住所地を管轄する警察署の「講習会」を受講したうえで、都道府県公安委員会への申請が必要です。
たとえば岸和田市内に住んでいる方なら、岸和田警察署生活安全課が講習会・申請の窓口になります。
許可申請の際には、所定の証明書類などの提出が必要です。
初めてクロスボウの所持許可を申請する、または以前からクロスボウを所持しており法改正を受けて許可を申請する場合は、以下の書類・資料を用意しなくてはなりません。必ず用意しなくてはならないもの- 申請者の証明写真
- 精神保健指定医などの診断書
- 譲渡等承諾書
- 講習終了証明書
条件次第で省略できるもの- 住民票の写し
- 本籍地の市区町村長発行の身分証明書
- 同居親族書
- 経歴書
許可用途によって用意しなくてはならないもの- 射撃・射撃予定場所の資料
- 鳥獣捕獲許可証や従事者証
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(2)クロスボウの所持が許可される具体例
欠格事由にあたらない場合でも、必ず所持が許可されるわけではありません。クロスボウの所持が認められるのは、次のような目的がある場合に限られます。
- 狩猟のため
- 鳥獣管理の目的で動物麻酔を発射するため
- クジラなどを対象に生物の生態調査研究をおこなうため
- スポーツ競技のため
観賞用、武器コレクションの収蔵といった目的はもちろん、護身用・防犯用といった目的では所持が認められません。
3、現在クロスボウをもっている場合はどうするべき?
銃刀法が改正されるまでは、クロスボウの購入について特段の許可を必要としなかったため、さまざまな目的・用途でクロスボウを所有している方もいるでしょう。
法改正よりも前からクロスボウを所有している場合は、どうすればよいのでしょうか?
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(1)所持許可を申請する
法改正後も引き続きクロスボウを所持したいと望む場合は、都道府県公安委員会による許可を受ける必要があります。
欠格事由の有無や提出した書類にもとづいた審査を経て許可を受けられれば、法改正後も所持が可能です。狩猟・動物管理・調査研究・スポーツ競技といった目的がある場合は、これらを継続するためにも所持許可を受けるのが現実的でしょう。
ただし、正当な目的がある場合でも令和4年9月15日までに許可を受けなければ違法になってしまうので注意が必要です。 -
(2)廃棄処分する
今後はクロスボウを所持しておく必要がない、あるいは所持を望むが要件を満たさないといった場合は、クロスボウを手放すしかありません。
警察では、クロスボウの無償回収を実施しています。大阪府警察のホームページから「クロスボウ等処分依頼書」をダウンロードして必要事項を記載したうえで最寄りの警察署の生活安全課に持ち込めば無償で処分できるので、廃棄処分に困ったら警察に相談しましょう。
なお、クロスボウの所有者から処分を依頼された人が廃棄処分のために警察へと持ち込む場合は委任状も添える必要があります。委任状も大阪府警察のホームページからダウンロードできるので、あわせて作成しましょう。 -
(3)所持許可をもっている人に譲渡する
クロスボウを手放すといっても、本格的なクロスボウは数万円もする高価なものです。
廃棄処分することに抵抗がある方は、売却を含めて譲渡を考えることにもなるでしょう。
クロスボウを譲渡する場合は、有償・無償にかかわらず、所持許可を持っている相手でなければ譲渡できません。
相手の所持許可を確かめずに譲渡すると、譲渡した人も違反になってしまいます。
4、クロスボウの所持などで逮捕されるとどうなる?
公安委員会の許可を受けずにクロスボウを所持・使用したり、無許可の相手にクロスボウを譲渡したりといった行為は、銃刀法違反にあたります。
違反が発覚すれば、逮捕・刑罰という厳しい処分を受けるおそれが高いでしょう。
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(1)身柄拘束や実名報道などの不利益を受けるおそれがある
銃刀法違反は犯罪です。
容疑をかけられれば警察に逮捕されるおそれがあります。
警察に逮捕されると、逮捕・勾留によって最長で23日間にわたる身柄拘束を受けてしまいます。
自宅に帰ることも、会社や学校に通うことも許されないので、解雇・退学といった不利益につながることもあるでしょう。
また、刑事事件の容疑者として逮捕されると、ニュースや新聞などで実名報道されてしまう危険があります。
事情を知らない近隣の住民や知人・親戚などにも逮捕の事実が知れ渡ることになれば、多大な不利益につながってしまう事態は避けられません。 -
(2)厳しい刑罰を受けるおそれがある
銃刀法に定められているクロスボウに関する違反行為とその罰則は次のとおりです。
- 不法所持……3年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 矢の発射……3年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 矢の装填(そうてん)……20万円以下の罰金
- 正当な理由のない携帯・運搬……2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 携帯・運搬方法の違反……20万円以下の罰金
- 保管方法の違反……20万円以下の罰金
- 無許可の相手への譲渡……6か月以下の懲役または20万円以下の罰金
刑事裁判で厳しい判断が下されれば、懲役が言い渡されて刑務所に収監されてしまうおそれがあります。
悪質な違反でなければ罰金で済まされる可能性もありますが、罰金で済まされたとしても前科がついてしまうので軽視してはいけません。
厳しい刑罰を避けるために大切なポイントとなるのは「検察官による起訴を避けること」です。検察官が不起訴処分を下せば、刑事裁判が開かれないので刑罰も科せられません。
不起訴処分を得るためには、検察官への積極的なはたらきかけが不可欠です。容疑をかけられてしまっている本人での対応は難しいので、弁護士に相談してサポートを依頼しましょう。
5、まとめ
銃刀法の改正によって、令和4年3月から「クロスボウ(ボウガン)」の所持が原則禁止となり、許可を得ないと所持できなくなりました。
また、申請すれば誰でも許可を受けられるというわけではなく、所持の目的などを含めて厳正な審査をクリアする必要があります。
法改正よりも前からクロスボウを所持していた場合でも、経過措置が取られている期間に所持許可を得る、廃棄処分する、所持許可を得ている相手に譲渡するといった対策が必要です。
また、銃刀法では所持だけなく運搬・保管方法なども厳しく規制されており、法律の定めを正しく理解していなければ違反してしまう危険が高くなります。改正直後でクロスボウの所持や許可申請などについて疑問を感じることも多いはずなので、不明なことがあるなら放置せず速やかに弁護士などに相談しましょう。
クロスボウの所持などに関して銃刀法違反の容疑をかけられてしまった場合は、ただちにベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。逮捕や厳しい刑罰の回避に向けて全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています