詐欺罪で逮捕されたらどうなる? 前科がつかないようにするには?

2019年03月18日
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詐欺罪で逮捕されたらどうなる? 前科がつかないようにするには?

大阪府警察のサイトなどで振り込め詐欺に関する注意喚起が常時行われているとおり、詐欺事件の手口は多様化しています。振り込め詐欺のほかにも、岸和田市内でも、交通事故を偽装して保険会社から約600万円をだまし取ったとして、22歳~30歳の男性4人が書類送検される事件があったと報道されています。

役割を分担して行われる詐欺はさまざまな種類があります。もし、詐欺の一端に家族が関わって逮捕されたとしたら……。家族が詐欺罪で逮捕と聞いて、まず気になるのは刑罰の種類や重さ、いつ自宅に帰ってこられるかなどではないでしょうか。

そこで、今回は詐欺罪の概要や逮捕後の処遇について、岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、詐欺罪とは?

詐欺といえば、振り込め詐欺を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、詐欺罪に該当する行為は意外と幅広いものです。

まずは詐欺罪の概要と構成要件について、説明します。

  1. (1)詐欺罪の概要

    詐欺罪とは刑法第246条にて、人を欺いて、財産や、財産上の利益を得たり、その利益を他の人に与えたりすることを犯罪と定められています。有罪となれば「10年以下の懲役」を科されます。罰金刑はありません。なお詐欺行為によって得た利益は没収、もしくは追徴されます。

    「財産上の利益」とは、サービスの提供も含みます。したがって、無賃乗車や無銭飲食も、もともと支払う気がないのにあとでお金を払うものと思わせてサービスを提供させながら、対価を支払わずに立ち去ることでサービスを詐取する行為であるため「詐欺」に該当すると考えられます。

  2. (2)詐欺罪の構成要件

    詐欺罪が成立する条件は以下の4点から判断されます。

    • 詐欺の実行行為がある……人を欺いて財物を交付させた、または人を欺いて財産上の利益を得た事実があること
    • 詐欺の結果が生じた……だまされた人から財産やサービスを受け取っている
    • 実行行為と結果に因果関係がある……だました内容が、財産の処分の判断に影響を与えたことがはっきりしている
    • 故意があること……人から財産をだまし取っている、だまし取ろうとしていることを認識していること


    たとえ、自らの行為が詐欺である確信がなくても、その可能性を考えていた時点で故意があると認定される可能性があります。

  3. (3)詐欺罪の実行行為とは

    「実行行為」は人を欺いて財物を交付させること、または人を欺き財産上の利益を得ることですが、さらに以下の5段階に分けられます。

    1. a)被害者をだます
    2. b)被害者がだまされて錯誤(さくご)におちいる
    3. c)被害者が自分の意思で財物や財産上の利益を処分する
    4. d)財物や財産上の利益が加害者や第三者へ移転する
    5. e)被害者に損害が発生する


    なお「錯誤」とは、だますことによって相手が事実ではないことを事実と認識することを指します。

    実行行為の最初の段階である、財産をだまし取る目的で相手をだました時点で、刑法250条によって、詐欺未遂罪が成立します。したがって、相手が途中で詐欺に気づいた、つまり錯誤にいたらなかった場合でも、詐欺行為によって利益を得るに至らなくても、詐欺未遂として処罰を受ける可能性があります。

2、詐欺罪の刑期は?

詐欺で逮捕された場合、悪質性や重大性、初犯であるかどうかなどが量刑に影響します。具体的に、どれくらいの刑罰が科されるのか解説します。

  1. (1)詐欺罪の刑期

    詐欺罪の刑期は「10年以下の懲役」と定められています。したがって、初犯で一度の詐欺であれば、基本的にはこの範囲内の刑期が言い渡されると考えてよいでしょう。

    ただし、具体的な刑期は、被害額の多寡や、詐欺の悪質性によって判断されます。

    組織的に詐欺を行った場合は、「1年以上の有期懲役」と罪が重くなります(組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律第3条第1項第13号)。組織的な詐欺は被害者も多数にのぼり、被害額も巨額になるケースが多いものです。その重大性にかんがみ、量刑も重くなる傾向にあります。

    また、一度の逮捕でも、複数の詐欺事件を起こしていた場合は「併合罪」として、刑期の上限は1.5倍になり、初犯でない場合は「累犯(るいはん)」として刑期の上限が2倍になります。最長で懲役20年もの量刑が科せられる可能性があるということです。

  2. (2)詐欺罪で執行猶予になる可能性は?

    もちろん、詐欺罪で起訴されても執行猶予になるケースもあります。

    詐欺事件の被害額が少ないなど、事件が軽微なものや悪質でないケースでは、初犯は執行猶予になる可能性が考えられます。詐欺未遂罪で被害が実際には発生しなかったケースも、状況によっては執行猶予となる可能性があるでしょう。

    なお、執行猶予を獲得するには、被害者に謝罪と賠償を行い、示談を成立させることも重視されると考えてよいでしょう。

3、詐欺罪で逮捕された場合、どのような処遇を受けるのか

詐欺罪で逮捕される場合、現行犯逮捕と通常逮捕の2パターンが考えられます。

  1. (1)現行犯逮捕と通常逮捕

    現行犯逮捕とは、犯行中や犯行直後に限って、逮捕状なしに犯罪実行者の身柄を拘束することをいいます。だまされたふりをして、捜査員が金品の引き渡し現場で待ち構えて犯人を取り押さえる場合も、現行犯逮捕にあたります。また、警察官でなくとも、一般の目撃者でも現行犯逮捕は可能です。

    通常逮捕の場合は、逮捕状の発行をもって逮捕に至るケースです。詐欺が発覚したのち、警察は捜査によって罪を犯したと疑われる人物「被疑者(ひぎしゃ)」を洗い出します。該当の犯罪の証拠をもとに、警察は裁判所に対して逮捕状の発行を申請し、その嫌疑が妥当であり、なおかつ、逃亡や証拠隠滅の可能性があると裁判所が認めた場合にのみ、逮捕状が発行されます。

    警察官は、発行された逮捕状をもって被疑者のもとへ向かい、逮捕状を示して、被疑者の名前と疑われている罪状を読み上げて、身柄を拘束します。

  2. (2)詐欺罪で逮捕された場合の拘束期間は?

    現行犯逮捕でも、通常逮捕でも、逮捕後の処遇は基本的に同じです。

    逮捕後、警察署に連行され取り調べを受けて、48時間以内に検察官に送致するかどうか決定します。送致を受けた検察官は送致から24時間以内に、裁判所に対して「勾留(こうりゅう)請求」を行うか判断します。

    勾留が認められた場合、通常は10日間拘束され取り調べを受けます。ただし延長請求があれば、最長で20日間ものあいだ自宅に帰ることはできず、留置所で生活しなければなりません。

    勾留期間中に、検察官は起訴するか不起訴とするか判断します。起訴された場合、保釈請求がなされなければ、裁判が終了するまでさらに身柄拘束は続きます。不起訴になれば釈放されます。

    身柄拘束を受けているあいだは、家族との面会であっても制限を受けるケースがほとんどです。しかし、弁護士であれば、いつでも、警察官の立ち合いなしに接見することができます。したがって、逮捕された場合は、すぐに弁護士を依頼することをおすすめします。

    弁護士は、家族との連絡の仲介を行うとともに、逮捕容疑について、取り調べにどのように応じていくかを相談することができます。逮捕から72時間で勾留が決まってしまうため、長期の身柄拘束を避けるためにも、それまでに何らかの対応を行う必要があるでしょう。

  3. (3)証拠隠滅や逃亡の可能性が低い場合は逮捕されない?

    詐欺罪には身柄の拘束を受けないケースがありえます。

    刑事訴訟法で定める「逮捕」とは、身柄の拘束を行う処分のひとつに位置づけられるため、次のようなケースで身元保証人がいるときは、不合理に否認していない限りは、証拠の隠滅や逃亡の可能性が低いとみなされて、逮捕されないことがあります。

    • 被害額が軽微
    • 共犯者がいない
    • 定職があり同居している家族がいる


    ただし、罪を犯したことが明らかであれば、在宅事件として身柄拘束はしないまま捜査や取り調べが行われることがあります。警察から呼び出しがあった場合は警察署に出向き、捜査や取り調べに協力する必要があるでしょう。

4、詐欺事件で前科がつかないようにするには?

逮捕後、起訴されて有罪となった場合に前科がつきます。日本の裁判においては、起訴となった事件の99.9%以上に有罪判決が下されているため、前科がつかないためには、まず不起訴となることを目指します。

そのために取れる手だてとしては、弁護士に依頼して、示談交渉を行うことが非常に重要となるでしょう。

  1. (1)示談成立を目指す

    示談とは、加害者が謝罪と被害の賠償を約束し、その実行をもって被害者は罪をゆるし刑罰を望まないとすることをいいます。

    刑事事件の手続きにおいて、捜査機関は被害者の処罰感情の有無を重視します。示談により、処罰感情がないことが示された場合、当事者間で解決済みとして不起訴となる可能性が高まります。

    ただし必ず不起訴になるわけではありません。重大で悪質な犯罪であると判断された場合は起訴される可能性があります。その場合も、判決での執行猶予や量刑の軽減が望めます。

    他方、被害者側が示談に応じるメリットには、裁判などの面倒な手続きを経なくても賠償金を受け取れるという点や、事件が早期解決しやすいという点が挙げられるでしょう。

  2. (2)示談に応じてもらえない場合

    被害者の処罰感情が強い、また賠償額で折り合いがつかないなどで示談が成立しないケースもありえます。その場合も、謝罪と賠償のために交渉の努力をした事実は、反省を示す態度として弁護士を通じて捜査機関や裁判所に訴えかけることができます。

    また、被害者に賠償金を受け取ってもらえない場合は、犯罪被害者支援団体などに贖罪(しょくざい)寄付を行い、反省を示すこともできます。いずれも、検察官への送致や勾留、判決などの判断の際に、ある程度は考慮される可能性があるでしょう。弁護士と相談しながら、対応を決めることをおすすめします。

5、まとめ

詐欺で逮捕されてしまった場合は、まずは弁護士に依頼し、状況をすべて話し、今後の対策を相談しましょう。

詐欺の自覚がなくても、ただ容疑を否定するだけでは、取り調べで非常に厳しい尋問を受けることもありえます。弁護士のサポートを受けて、重すぎる刑罰を避けるための弁護活動をすぐにはじめましょう。

また、もしかしたら詐欺の手伝いをしてしまったのではないか、と不安な場合も、ぜひ弁護士にご相談ください。相談の秘密は守りますし、最善策を一緒に考えることができます。必要に応じて、警察へ同行することも可能です。

ベリーベスト法律事務所・岸和田オフィスでは、刑事事件における示談交渉の経験が豊富な弁護士が状況に適した弁護活動を行います。不当に重い罪が科されないようにしたい、いち早く日常を取り戻したい……と考えるのであれば、まずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています