家族が闇金(ヤミ金)で逮捕されたらどうする? 問われる罪と罰則

2021年04月15日
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家族が闇金(ヤミ金)で逮捕されたらどうする? 問われる罪と罰則

令和2年7月、大阪府警は「給与ファクタリング」と称した闇金業者を貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕しました。

給与ファクタリングとは、一定の手数料を差し引いた額の給与を即日現金で入手できる仕組みで、法外な手数料をとる違法業者に対して金融庁や警視庁が警鐘をならしています。

岸和田市を擁する大阪府警察のホームページでも、闇金のさまざまな手口や形態を紹介しています。テレビドラマや漫画、小説などでは闇金という言葉を聞くことがあっても、まさか自分の家族が闇金にかかわって逮捕されるとは予想していない方がほとんどではないでしょうか。

家族が闇金で逮捕されたと聞けば、動揺されるのは当然のことです。具体的にどのような罪に問われるのか、罰則はどの程度なのか、これからどうすればよいのかと、不安に感じることが多いはずです。本コラムでは、家族が闇金で逮捕された方へ向けて、問われる可能性がある罪や罰則、今後の対処法を、岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、闇金で逮捕されたらどのような罪に問われるのか

  1. (1)闇金とは何か

    一般に闇金とは、無登録で営業したり、法律の規定をはるかに超えた利息で貸し付けたりする業者を指します。

    昨今では闇金の手口も多様化しています。たとえば闇金業者が勝手にお金を振り込み、後になって高額な利息をつけて返済を要求する「押し貸し」や、価値のない物品を質にとり、実際は高齢者の年金などを担保として高金利の貸し付けを行う「偽装質屋」などがあります。

    また、利用者の職場や自宅前で大騒ぎをする、脅迫や暴力を用いたり、器物を損壊したりするなどして執拗な取り立てを行う闇金業者も存在します。

    では、闇金で逮捕されると具体的にどのような罪に問われるのか、次項から確認しましょう。

  2. (2)貸金業法、出資法違反

    そもそも、お金を貸す行為を業として行うときは、貸金業法の規定にもとづく貸金業登録が必要です。簡単にいえばお金を貸して金利を得る商売をしていたとみなされる状態であるにもかかわらず、登録をしていない場合は貸金業法違反に問われ、「10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、または併科」が科されます。(貸金業法第3条、11条、47条)

    貸金業登録をしてはいるものの、実際には上限金利を超える利息で貸し付けていたというケースもあるでしょう。この場合は出資法違反に問われます。出資法では、貸し付ける場合の上限金利を年20%、個人が貸し付ける場合の上限金利を年109.5%としています。これを超えた利息で貸し付けることができません。

    業者が法で定められた上限金利の20%を超えた利息で貸し付けた場合は、「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科」に処されます。年20%どころか、年109.5%を超えた利息で貸し付けた場合には「10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金または併科」となります。

    業者ではなく、個人間の貸し付けにおいて上限金利の109.5%を超えた利息で貸し付けた場合は「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科」となります。(出資法第5条1項~3項)

  3. (3)そのほか問われる可能性のある罪

    組織的に闇金業を営み、違法な収益を他人の口座に隠すなどした場合には、組織犯罪処罰法の第10条(犯罪収益等隠匿)違反に問われるおそれもあります。罰則は「5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科」です。

    また、闇金として執拗な取り立てをする中で、たとえば次のような罪を犯していることも考えられます。

    • 住居侵入罪、不退去罪……3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法第130条)
    • 脅迫罪……2年以下の懲役または30万円以下の罰金(刑法第222条)
    • 信用毀損(きそん)罪、業務妨害罪、威力業務妨害罪……3年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法第233条、234条)
    • 恐喝罪……10年以下の懲役(刑法第249条)
  4. (4)闇金の罰則は厳しい

    闇金行為によって有罪になれば、非常に厳しい罰が科されるおそれがあります。有罪になれば前科がつきますし、懲役刑となり、刑務所に収監される可能性は否定できません。たとえ罰金刑で済んだとしても、高額の場合には支払えないことがあるでしょう。仮に罰金が支払えないと労役場留置となり労役で支払うこともあり得ます。

    また、闇金は複数の法律に抵触している可能性が高い行為です。その場合には刑が加重されることもあります。闇金で逮捕されたとの情報だけでは見通しを判断することは困難であるといえるでしょう。まずは、弁護士へ相談されることをおすすめします。

  5. (5)利用者として罪に問われることも

    闇金容疑で逮捕されたと聞いたが、お金を持っていた様子がないうえ闇金業者をしていたわけではない……というケースでは、きっとご家族も困惑されるでしょう。実は、闇金の利用者であっても罪に問われることがあるのです。

    たとえば、闇金業者に銀行口座(口座番号、暗証番号、通帳など)を渡してしまった場合、犯罪収益移転防止法第28条違反に該当します。有罪になれば、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される犯罪です。闇金業者に犯罪利用ができる口座を渡したという行為が、犯罪の片棒をかついだとして罪に問われることになるのです。

    また、アルバイトと称して携帯電話を契約し、闇金業者に売ってしまっていたというケースも考えられます。この場合、詐欺罪として「10年以下の懲役」や、携帯電話不正利用防止法第7条違反として「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」として罪に問われる可能性があります。

2、闇金で逮捕された後の流れと家族の面会について

闇金で逮捕されると、48時間を限度に警察官から取り調べを受け、検察庁へ送られます。その後、検察官は24時間以内に裁判所に対して勾留請求を行い、裁判所がこれを認めると勾留されます。勾留とは、身柄の拘束を行ったまま取り調べを行う措置を指し、期間は最長で20日間です。

ここまでの間に起訴、不起訴処分が決定し、起訴されると裁判へと移行します。通常は、裁判までの間も身柄拘束が続きます。

いち早く逮捕されてしまい被疑者となった本人と会って状況を聞きたいと思うかもしれません。しかし、ご家族が被疑者と面会できるのは、早くても勾留段階に入ってからになります。警察官に逮捕されてから検察官によって勾留の必要性が判断される72時間は、原則としてご家族であっても接見できません。なお、接見とは、身柄拘束中の被疑者が、家族など外部の方と面会を行うことを指します。さらには、組織的な犯罪にかかわっていた可能性が高い場合には、共犯者による証拠隠滅などを防ぐため、勾留段階でも接見禁止となることがあります。

接見の制限を受けている状況下において、唯一制限なく面会できる立場の者が弁護士です。いち早く依頼して、状況を確認するとともに取り調べに際してのアドバイスをしてもらうことが肝要です。

闇金は高齢者や破産者を狙うなど悪質な犯罪であるため、厳しい取り調べが予想されます。逮捕された本人がやってもいないことを認めてしまったり、反省の態度を見せずに身柄拘束が長引いてしまったりすることを防ぐためにも、弁護士から注意点を説明してもらいましょう。

3、家族が闇金で逮捕されたらどうするべきか

家族が闇金で逮捕されてしまったとき、残されたご家族ができる対処法としてまず考えられるのは、まずは弁護士を依頼することです。前述のとおり、家族や友人では逮捕中の被疑者と接見することができません。弁護士が接見をしなければ、状況を理解することができないでしょう。

次にすべきことは、被害者との示談です。示談が成立すれば起訴、不起訴の決定や量刑判断に際して考慮される可能性があるでしょう。警察や検察、裁判所は、被害者の被害回復と処罰感情をもっとも重要視するためです。不起訴となれば前科がつきませんし、有罪になっても執行猶予がつけば日常生活を送りながら更生できます。

しかし闇金の場合、1人あたりの被害額がかなり高額になるケースや、被害者が多数いるケースが想定されます。警察庁の資料によれば、平成29年に闇金被害に遭った人の数は1万3044人、被害総額は約91億円にものぼっています。そのうえ、多くの場合、被疑者は加害者や加害者家族と顔を会わることを拒否します。無理に示談交渉をしようとすることで、新たなトラブルとなってしまう可能性も考えられます。示談成立のハードルは極めて高いといえますので、弁護士へ相談することが賢明な選択です。

弁護士であれば示談を進めるとともに、裁判になった際にも弁護を続け、量刑の軽減に向けて動くことができます。

また、ご家族にしかできないサポートとして、今後、再び罪を犯さないことが何よりも大切です。ご家族としては本人を監督し、犯罪組織とのかかわりを絶つなどして更生をサポートしていくことが求められます。この点についてもあわせて弁護士にアドバイスを仰ぐようにしましょう。

4、まとめ

今回は闇金と逮捕をテーマに、問われる罪や罰則、ご家族ができる対処法を解説しました。

闇金は複数の犯罪に該当するおそれがあり、またそれぞれに重い罰が用意されています。身柄拘束期間も長引く可能性がありますので、ご家族としては迅速な行動が求められます。早期の身柄釈放や不起訴処分、量刑の軽減につなげたいとお考えであれば、弁護士に相談されることをおすすめします。依頼を受けた弁護士は、本人へのアドバイスや今後の弁護を依頼し、少しでも事態を悪化させないために行動します。

刑事事件に対応した経験が豊富なベリーベスト法律事務所・岸和田オフィスの弁護士が力を尽くします。家族が闇金で逮捕されてしまいお困りであれば、早期にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています