傷害で被害届を出された! 逮捕の可能性や示談の効果は?
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大阪府警察が公開している統計によると、令和4年に岸和田市内で認知された傷害事件は32件、うち検挙された事件は27件です。単純に計算すれば「8割は検挙に至っている」ことになるため、傷害罪は検挙されやすい犯罪だといえるでしょう。
傷害事件の加害者になってしまうと「警察に逮捕されるのではないか?」と不安に思う方もいるでしょう。もっとも、傷害事件を起こしてしまい、被害者が被害届を提出したとしても、加害者が必ず逮捕されてしまうというわけではありませんし、必ず厳しい刑罰が科されるとも限りません。
本コラムでは、「傷害事件を起こして被害届を提出された場合の逮捕の可能性」や、「逮捕後の流れ」、「事件の穏便な解決に有効な“示談”の効果」などを解説します。
1、傷害罪で被害届を出されたら? 弁護士に相談するメリット
傷害事件を起こして被害者が被害届を提出すると、警察による捜査が進められます。そのまま放置していると、逮捕されたり、裁判にかけられたりして刑罰を受けてしまう危険があるので、素早い対応が必要です。
傷害事件を穏便に解決するためには弁護士のサポートが欠かせません。では、弁護士に依頼することでどのようなサポートが期待できるのでしょうか?
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(1)被害者との示談交渉による素早い解決が期待できる
「示談」とは、トラブルの当事者同士が裁判外で話し合って解決を図ることです。加害者が被害者に対して謝罪したうえで、被害届の取り下げを条件に慰謝料などを含めた示談金を支払うという流れが一般的です。
被害者との間で示談が成立して被害届が取り下げられると、警察や検察官は「すでに被害者には『加害者を厳しく罰してほしい』という意思がない」と判断します。
警察が逮捕に踏み切るよりも前に示談を成立させれば、逮捕される危険はほとんどなくなるでしょう。それよりも早く、被害者が警察に相談するよりも前に示談を成立させれば、そもそも警察に事件を認知されないまま、事件を解決してしまうことも可能です。
もっとも、傷害事件の被害者は加害者に対して「怖い」「憎い」といった負の感情を抱いているケースが多く、加害者本人が示談交渉をもちかけても、被害者は相手にしてくれないかもしれません。
被害者の警戒心を和らげたうえで円滑な示談交渉を進めるには、加害者本人ではなく、弁護士を代理人とした対応が必須となります。 -
(2)逮捕後の早期釈放が期待できる
警察に逮捕されてしまうと、簡単には釈放されません。
逮捕に引き続いて検察官の請求によって「勾留」を受けてしまうと、身柄拘束が延長され、起訴までに最長で23日間、起訴されるとそれに加えて刑事裁判が終わるまでの期間、自宅に帰してもらえないケースもあります。
早期の釈放は誰もが望むことですが、残念ながら逮捕された本人が「早く釈放してほしい」と求めても、そう簡単には聞き入れてもらえません。満期を迎えるよりも前に釈放されるためには、身柄拘束の必要がないことを捜査機関や裁判所に説得的に示す必要があります。
そのためには、裁判官の決定に対する不服申立てである「準抗告」や勾留の取り消し請求といった法的手続きをとる必要があり、弁護士のサポートが必要です。 -
(3)刑罰の軽減が期待できる
傷害罪で有罪になると、刑罰は避けられません。
実際の刑事裁判では、法律が定める範囲の中で、どの程度の刑罰が適切なのかが総合的に判断されることとなります。最大限に重い刑罰が科されることもあれば、思いのほか軽い刑罰で済まされるケースもあります。
できるだけ刑罰を軽減したいなら、罪を犯した動機に酌量の余地があることや、再犯可能性の低さ、反省の程度などを立証して、裁判官によい印象をもってもらう必要があります。
容疑をかけられている本人が口頭で説明するだけですと、説明の仕方によっては、「反省していない」「罪を逃れようとしている」などと誤解されてしまうおそれもあります。
深く反省していることやその他の有利な事情について、弁護士が証拠を用いて立証を尽くすことで、裁判官に対し、軽い刑罰が相当だと判断させることができるのです。
2、傷害罪で科せられる刑罰
傷害事件を起こすと、どのような刑罰が科せられるのでしょうか?
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(1)刑法で定められている傷害罪の刑罰
「傷害罪」は刑法第204条に定められている犯罪です。条文をみると、「人の身体を傷害した者」が処罰の対象で、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると明記されています。
刑法において懲役と罰金につき下限が定められていますので、傷害罪を犯して科せられる刑罰は、基本的には次のとおりとなります。- 1か月以上15年以下の懲役刑
- 1万円以上50万円以下の罰金刑
たとえば、どんなに凶悪な傷害事件を起こしたとしても、法律で定められている以上、死刑が選択されたりすることはありませんし、逆に、軽微な傷害事件であっても、拘留や科料といったごく軽い刑罰が選択されたりすることはありません。
なお、刑罰の上限・下限も法律が定めた範囲を超えることはありませんが、複数の犯罪で同時に審理された場合や、裁判官が「刑の減軽」を認めた場合は、その上限・下限が変動します。 -
(2)実際の科刑状況
裁判所が公開している令和4年版の司法統計によると、令和3年、傷害罪で有罪判決を受けて懲役に処された人数は全国で2032人、罰金に処された人数は全国で294人でした。
うち、それぞれの量刑状況は以下のとおりです。【懲役……2032人】 - 25年以下……1人
- 15年以下……8人
- 10年以下……18人
- 7年以下 ……23人
- 5年以下……68人
- 3年以下……実刑159人・一部執行猶予4人・全部執行猶予421人
- 1年以上2年未満……実刑258人・一部執行猶予3人・全部執行猶予655人
- 6か月以上1年未満……実刑183人・全部執行猶予196人
- 6か月未満……実刑34人・全部執行猶予8人
【罰金……377人】 - 100万円未満……22人
- 50万円未満……102人
- 30万円未満……135人
- 20万円未満……107人
- 10万円未満……11人
この統計をみると、傷害罪で処罰された人の中では、懲役刑を言い渡された人の数が圧倒的に多いのですが、そのうちの多くは、期間が6か月未満~3年で、その全部について執行猶予が認められていることがわかります。
つまり、傷害罪は厳しい刑罰が定められている犯罪ではありますが、必ずしも厳しい刑罰が科せられるわけではないのです。しかし、刑罰を軽くしたいと望むなら、事件を起こしてしまった後の適切な対応が必要です。
3、被害者が被害届を提出したあとの流れ
傷害事件において被害者が警察に被害届を提出したあとは、どのような流れで捜査が進むのでしょうか?
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(1)警察官が被害状況を確認する
まずは警察官が被害者から詳しい被害状況を確認します。
単に被害者が怪我をしているというだけでは、それが傷害事件によるものなのかが明らかではありません。
被害者は、いつ、どこで、誰から、どのような暴行を受けて負傷したのかといった、事件の詳細な状況を聴取されることになるでしょう。
また、なぜそのようなトラブルに発展したのかといった情報も聴取されるので、加害者との関係や事情なども警察官の知るところになります。 -
(2)被害届の受理に先立って捜査が進むこともある
警察は、被害届の受理に先立って、ある程度の裏付け捜査を進める場合があります。
その場合であっても、被害者に対して医師の診断書の持参を求めたり、目撃者から事情を聴取するなどして、捜査が進められることになります。 -
(3)被害届の受理後は本格的な捜査がはじまる
警察が被害届を受理すると、本格的な捜査がはじまります。
傷害事件において行われる具体的な捜査は、被害者や目撃者、その他の参考人から詳しい事情を聴取する事情聴取、警察官らが現場を訪れてその状況を詳しく観察する実況見分、そして加害者の取り調べなどが基本的な捜査です。 -
(4)逮捕の要否は慎重に判断される
傷害罪の容疑をかけられたからといって、必ず逮捕されるわけではありません。逮捕が可能となるのは、罪を犯したことを疑うに足りる「相当な理由」と、被疑者が逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあるという「逮捕の必要性」の2つの要件を満たしているときに限ります。
令和4年版の犯罪白書によると、刑事事件を起こして逮捕された人の割合を示す「身柄率」は、傷害罪で50%でした。
つまり、およそ半数は逮捕されているものの、残る半数は、身柄を拘束されずに捜査の対象となる「在宅事件」として処理されているのです。
傷害事件においても同様ですので、被害者が被害届を提出したとしても、逃亡や証拠隠滅を疑われない限り逮捕されません。
たとえば、警察からの出頭要請を正当な理由なく拒否した、被害者に「事件のことを警察に話してはいけない」などと言って圧力をかけた、などといった事情があれば、逃亡や証拠隠滅の危険があるとして、逮捕される可能性が高くなります。
そのため、警察から出頭要請があれば基本的には素直に出頭する必要があるのですが、警察での事情聴取に向けて弁護士のアドバイスを得てしっかりと準備すると安心です。
4、傷害容疑で逮捕されたらどうすればいい?
傷害容疑で逮捕されてしまうと、その後はどうなるのでしょうか?
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(1)逮捕されると長期にわたって社会から隔離されるおそれがある
警察に逮捕されると、まずは警察において48時間以内の身柄拘束を受けたあと、そのほとんどが検察へと送致され、さらに24時間以内の身柄拘束を受けることとなります。
ここまでが逮捕による身柄拘束で、その効力が合計72時間を超えることはありません。
ただし、検察官が勾留を請求して裁判官がこれを許可すると10日間、勾留延長がなされるとさらに10日間、合計で20日を限度に身柄を拘束されることとなるのです。
つまり、逮捕・勾留による身柄拘束は最長23日間にわたるのですが、その間、自宅へ帰ることや会社や学校へ行くことは許されませんし、家族、会社の上司や同僚、友人、その他の知人に直接連絡を取ることも困難です。逮捕・勾留が長引くと、社会復帰が難しくなり、離婚、解雇、退学といった不利益を招くおそれがあります。 -
(2)起訴されると刑事裁判が開かれて刑罰を科せられる
わが国の司法制度では、検察官が事件を起訴するか否か決定する権限をもっています。
検察官は、事件の捜査を行って証拠を集めた上で、「裁判になれば有罪判決が下されるだけの証拠がそろっている」と判断した事件に限り、起訴の判断を行うのです。そのため、裁判において無罪判決が言い渡される可能性は限りなく低いのが実情です。
令和元年、傷害罪で起訴されてその裁判が終了した被告人は全国で2619人いたのですが、そのうち、無罪判決を受けた人の数はわずか12人でした。
無罪判決が占める割合は全体のわずか約0.5%です。起訴されればほぼ有罪という状況が明らかになっています。 -
(3)逮捕を避けるためには素早い対応が重要
逮捕・勾留による不利益や厳しい刑罰を避けるためには、素早い示談交渉が欠かせません。
示談交渉が進まないまま捜査が進行してしまうと、それに伴って逮捕、勾留、起訴、そして有罪判決と、手続きがどんどん進んでいってしまうのです。
示談交渉を迅速に進め、示談を勝ち取ることで、手続きの進行を食い止めることができます。
被害者が被害届を提出するよりも前に示談が成立すれば、捜査機関に事件が発覚しないまま解決できるかもしれません。
警察が逮捕に踏み切るよりも前なら、逮捕の回避が可能かもしれません。逮捕された後でも、示談が成立すれば、検察官が不起訴処分を下す可能性が高いです。そうすれば、前科もつきませんし、身柄もすぐに釈放されることとなります。
仮に起訴されてしまっても、刑の減軽が期待できるでしょう。もっとも、ここまで手続きが進んでしまえば、示談が成立したとしても刑罰は免れません。
素早い示談成立に向けて、ただちに弁護士に相談して被害者との示談交渉を依頼するのが最善策です。
5、まとめ
傷害事件を起こして被害者に被害届を提出されてしまうと、逮捕・勾留による身柄拘束の危険や裁判にかけられて刑罰を科される危険が高まります。
逮捕・勾留や厳しい刑罰を避けるためには、これまで述べたように被害者との示談交渉を急ぐべきです。
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