2回目の任意整理で再和解はできる? 再び返済が苦しくなったら

2022年03月17日
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2回目の任意整理で再和解はできる? 再び返済が苦しくなったら

任意整理したにもかかわらず、再度返済が苦しくなってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。長引くコロナウイルスの流行によって事業が停滞し、生活のめどが立てられず、借金に苦しむ方は少なくありません。

再び借金を返済するのが難しくなった場合、債権者ともう一度話し合って、2回目の任意整理(再和解)をする方法もあります。再和解によって借金の返済が可能になれば、自己破産をしなくても借金を完済できる可能性があります。

そこで今回は、2回目の任意整理として再和解をする方法や注意点について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、任意整理後に返済を滞納するとどうなるか?

債権者と和解をして任意整理をした後に、借金を再び滞納してしまった場合に、どのような不利益があるのでしょうか。

  1. (1)任意整理後に滞納すると“期限の利益”がなくなる

    任意整理とは、債権者と交渉して将来の利息を減らしたり、返済期間の延長をして月々の返済を減額したりすることで、毎月の返済負担を軽くする手続きです。

    たとえば、本来は月に10万円返済しなければならないところ、債権者と話し合って返済期間を延長し、月の支払いを5万円に減額するなどです。

    ただし、任整理後にさらに何らかの理由で返済が困難になる可能性もあるでしょう。

    もしも任意整理後に返済を滞納してしまうと、“期限の利益”を喪失してしまう危険性があります。期限の利益とは何か、次のとおり解説します。

  2. (2)期限の利益とは?

    期限の利益とは、約束した期限までに支払いをすればいい(約束した期限までは支払いをしなくてもいい)という権利です。

    たとえば、「7月15日までに100万円を弁済する」という条件で債権者から金銭を借りた場合、債権者は7月15日までは取り立てを行うことはできません。

    また、分割払いにおいても「合計100万円を毎月10万円ずつ返済する」という条件であれば、毎月10万円のみ返済すればよいという権利(期限の利益)が債務者にあります。

  3. (3)期限の利益の喪失とは?

    期限の利益を喪失すると、債務者には以下のような不利益が生じます。

    • 借金を期限前に返済しなければならなくなる(返済しなければ遅延損害金が発生する)
    • 借金を一括で返済しなければならなくなる


    期日までに分割払いで返済できるという契約において、期限の利益を喪失した場合、以降は分割払いができなくなり、借金を一括で返済する義務が生じます

  4. (4)期限の利益を喪失するケース

    どのような場合に、債権者が期限の利益を喪失するかは民法に規定されています(民法第137条)。

    1. 一、債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
    2. 二、債務者が担保を滅失させ、損傷させ、または減少させたとき
    3. 三、債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき


    ただし、民法の規定以外にも、契約において期限の利益を喪失する条項を盛り込むことができます。

    たとえば、任意整理の契約(和解契約)において、「借金の返済を2か月滞納した場合は期限の利益を喪失する」という条項のある契約を締結するなどです。この場合、借金を返済せずに2か月分滞納した場合、債務者は期限の利益を喪失してしまいます。

    任意整理の契約においては、一定の滞納があった場合に期限の利益を喪失するという規定が契約に盛り込まれることが通常です

    期限の利益を喪失については契約によって異なりますので、任意契約の契約書を確認しておきましょう。

2、再和解(2回目の任意整理)は可能か?

任意整理をした後に返済が苦しくなり、借金を滞納してしまうと、期限の利益を喪失して借金の全額を一括で返済しなければならなくなる危険性があります。

それでは、返済が苦しい場合には、どのような対策があるのでしょうか。

対策のひとつとして、任意整理を認めてもらった債権者と相談して、2回目の債務整理を認めてもらう方法があります。

1回目の任意整理が行き詰まったあとに、2回目の任意整理をすることを、一般に再和解といいます。

任意整理の回数に法的な制限はなく、2回目の任意整理として再和解することは可能です。また、2回目だけでなく、3回目、4回目と再和解を繰り返すことも理論上は可能です。

ただし、任意整理をするには債権者の同意が必要です。一度結んだ任意契約(和解)を守れなかったことで、債権者からの信用は低くなっていると考えられます。そのため、2回目の任意整理には1回目にはなかった注意点があります。

3、2回目の任意整理の注意点

再和解をする注意点は、債務者が再和解に同意したとしても、以前の任意整理と同じ条件で再和解できるとは限らないことです。

債権者からすると、合意した条件で返済できなくなったとなれば、本当に信用できるのか心配になることでしょう。

そのため、再和解をすること自体には応じるものの、1回目の任意整理よりも条件が厳しくなる可能性があります

条件が厳しくなる例としては、以下のものがあります。

● 猶予期間の短縮
(例)1回目の任意整理では2か月以上滞納すると期限の利益喪失の対象であったところ、再和解後は1か月の滞納でも期限の利益を喪失することになった

● 返済期間の短縮
(例)1回目の任意整理では48万円の借金を4年間(月1万円)で返済すればよかったところ、再和解の条件として返済期間を短縮し、2年間(月2万円)で返済しなければならなくなった


再和解を認めてもらったとしても、1回目の任意整理よりも条件が厳しくなった結果、再び返済できなくなってしまえば元も子もありません。

再和解をするにあたって条件が厳しくなる場合には、本当にその条件で返済を続けられるかどうか、慎重に検討することが大切です

判断が難しい場合はもちろん、返済が難しくなった時点で、早急に債務整理の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

4、2回目の任意整理を債権者に断られたら?

再和解を断られてしまったら、期限の利益を喪失し、借金を一括で返済しなければなりません。

そのため、再和解を断られた場合には自己破産や個人再生など、再和解以外の方法をすみやかに検討する必要がでてきます。

  1. (1)自己破産を検討する

    自己破産は、裁判所に申し立てて行う債務整理のひとつです。自己破産によって債務の支払い義務が免除(免責)されれば、借金はゼロとなります。

    任意整理では借金を返済しなければならないのに対し、自己破産は借金自体が免除されるという強力な効果があります。借金の負担からの解放は、新たな生活再建のために大変有効な手段といえるでしょう。

    ただし自己破産をする場合、必要と認められる財産以外はすべて手放さなければなりません。もしも、自宅をどうしても手放したくない場合には、以下の個人再生を検討してみましょう。

  2. (2)個人再生を検討する

    個人再生とは、裁判所に再生計画を提出して認可してもらうことで、借金の総額を大幅に減額できる手続きです。

    個人再生が認められると、借金の額によって最大で10分の1まで返済が減額されます。減額された借金は原則として3年の分割払いで返済していきます。

    個人再生のメリットのひとつは、自宅を手放さなくてもよい住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の手続きを利用できる可能性があることです。

    ただし、個人再生は、計画に沿って借金を毎月必ず返済していかなければならないため、安定した収入源があることが必須となります

  3. (3)再和解を断られたら弁護士に相談すべき

    2回目の任意整理をすべきか、自己破産や個人再生を選ぶべきか、適切に判断するのは難しいところです。そのため、任意整理後に再び返済が苦しくなった場合はできるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

    債務整理の経験が豊富な弁護士であれば、依頼者の生活状況や今後の展望などのさまざまな要素を考慮して、借金問題を解決するために最も適した方法を提案することができます。

    また、2回目の任意整理では債権者と交渉のテーブルにつくことも難しい場合が少なくありません債務整理の経験が豊富な弁護士に交渉を依頼すれば、債権者が再和解の交渉に応じてくれることが期待できます

5、まとめ

任意整理をしたものの収入の減少などで返済ができなくなった場合は、債権者と相談して2回目の債務整理をして再和解をする方法があります。

ただし、再和解が認められたとしても、1回目の債務整理よりも返済の条件が厳しくなる可能性もあります。

本当に再和解がベストな方法かお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。債務整理の経験が豊富な弁護士が、状況にあわせて適切な解決方法を提案いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています