再婚したら養育費は減らされる? 減額されないケースとの違いとは

2020年08月24日
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再婚したら養育費は減らされる?  減額されないケースとの違いとは

統計局によれば、令和元年の岸和田市の離婚件数は425件でした。子どものいる夫婦の離婚において、養育費について話し合うことは、子どもの将来のために重要です。特に、シングルマザーとして子どもを引き取って育てるケースであれば、元配偶者から養育費を確実に受け取れるかどうかは、切実な問題です。

ところが「再婚した」「収入が減少した」などを理由に、養育費の減額を元配偶者が要求してくることは少なくありません。

しかし、相手の事情によって当然のように養育費を減額されれば、生活に大きな影響がでてきます。このような状況に対し法的な対応はとれるのでしょうか。

今回のコラムでは、養育費を払っている元配偶者が再婚した場合、または養育費を受け取っている自分が再婚した場合、養育費は減額されるのか等について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、養育費は「再婚」だけでは減額されない

結論からいえば、再婚しただけでは養育費は当然には減額されません。養育費とは、未成熟の子どもが安全かつ適切な環境で成長できるように支払われるものです。

したがって、元配偶者の再婚により養育費が減額されて、子どもの健全な成長が妨げられることは好ましくないとされます。

養育費の減額が認められるには、単に再婚したという事情だけでなく、再婚に関連して養育費を減額するのが相当といえるような事情があることが要求されます。

2、養育費が減額される可能性があるケース

養育費の減額が認められる可能性があるのは、どのようなケースでしょうか。養育費の減額の調停や審判の手続きと併せて解説します。

  1. (1)支払う側が再婚して扶養家族が増えた

    養育費を支払う側が再婚し、かつ扶養家族が増えた場合は、養育費の減額が認められる可能性があります。扶養家族が増えると支出の負担が増加し、これまで同額の養育費を支払うことが困難になる場合があるからです。

    つまり、単に再婚しただけでなく、扶養家族が増えることが必要です。再婚して子どもができた場合や、再婚した相手の連れ子と養子縁組をした場合が該当します。

  2. (2)支払う側の収入が減った

    養育費を支払う側の収入が減少した場合、養育費の減額が認められる可能性があります。

    自営業者が病気で働けなくなる、会社をリストラされるなど、収入が激減して養育費を支払うのが困難になる場合があります。収入が大幅に減少した、失業して無収入になったなどは、減額が認められることがあります。

    ただし、失業による養育費の減額は認められないケースもありますので、減額の申し出があってもすぐに同意はせず、弁護士などへ相談することをおすすめします。

  3. (3)受け取る側が再婚して養子縁組した

    養育費を受け取る側が再婚し、かつ再婚相手が養子縁組をした場合は、養育費の減額が認められる可能性があります。

    たとえば、養育費を受け取る側の元妻が再婚し、再婚相手が元妻の連れ子と養子縁組をするなどです。この場合、子どもの扶養義務を主として負うのが、前夫から再婚相手になります。

    ただし、再婚相手が就労できないなど、子どもを扶養するのが困難な事情がある場合は、養育費の減額が認められないこともあります。

  4. (4)受け取る側の収入が増えた

    養育費を受け取る側の収入が増加した場合は、養育費の減額が認められる可能性があります。

    収入が増加する事情は、受け取る側が就職した、パートなどの非正規雇用から正社員にかわった、起業に成功して収入が増えたなどです。ただし、収入が増えただけで必ず減額が認められるわけではありません。

    将来的に収入が増えることを見込んで養育費の額を決めた、生活費や学費などで子どもに多額の費用がかかる、などのケースでは、養育費の減額が認められない可能性があります。

3、養育費減額の決め方

  1. (1)養育費の減額について話し合う

    養育費を減額するかどうかは、当事者の話し合いで決めることができます。話し合いの結果双方が合意すれば、調停や裁判をせずに円満に解決できる可能性があります。

    ただし、話し合いで相手が主張することはあくまで相手の側の事情であり、養育費の減額を受け入れるかどうかは、受け取る側の自由です。相手の主張に納得できない場合は、減額請求に応じる義務はありません。

    また、話し合いの結果、養育費の減額などの内容が決まったら、後のトラブルを防ぐために必ず書面にしておきましょう。強制執行認諾約款つきの公正証書として書面を作成すると、養育費が支払われなくなった場合に、裁判などの手続きをせずに、強制執行(差し押さえ)ができます。

  2. (2)話し合いが決裂したら(調停・審判・訴訟の流れ)

    養育費の減額について話し合いがまとまらなかった場合、減額したい側が家庭裁判所に調停を申し立てる可能性があります。

    養育費減額請求調停は、当事者が裁判官や調停委員とともに養育費の減額について話し合い、解決策を探っていく手続きです。双方が解決策の結論に納得すれば調停が成立し、その内容にしたがって養育費の支払いが行われます。

    調停で話がまとまらずに不成立になった場合は、自動的に審判の手続きに移行します。審判は、調停に関与した裁判官が養育費の減額を認めるかどうかを、調停で話し合われた事情を考慮して判断します。

    審判の結果に納得ができなかった場合、最終的に訴訟によって養育費の減額の是非を争うことになります。

4、養育費の支払いを拒否されたら

養育費の支払いを拒否された場合、債務名義があるかどうかで対処法が異なります。それぞれ解説します。

  1. (1)債務名義がある場合

    債務名義とは、債務が存在することを明確にする公文書のことです。

    以下が、債務名義になります。

    • 強制執行認諾約款つきの公正証書
    • 調停調書
    • 審判書
    • 判決書など


    債務名義があれば、裁判所に申請して強制執行の手続きをすることができます。

    強制執行とは、裁判所を通して、養育費が不払いになった相手の給料や不動産などの財産を差し押さえ、養育費の支払いを強制的に実現する方法です。

  2. (2)債務名義がない場合

    債務名義がない場合、家庭裁判所に養育費の支払いを申し立てて手続きをする必要があります。手続きは調停、審判、訴訟の3種類があり、それぞれの手続きの特徴は養育費の減額請求と基本的に同じです。

    調停で話し合いがまとまれば調停調書、審判が確定すれば審判書、訴訟が確定すれば判決書が債務名義になります。

    養育費の未払いを防ぐには債務名義があることが重要ですが、裁判所の手続きによって債務名義を獲得するのは、手間や費用がかかりがちです。

    養育費について話し合いで合意した場合、話し合いの内容を強制執行認諾約款つきの公正証書にしておけば、養育費が支払われなくなった場合に回収しやすくなります。

5、弁護士に依頼するメリット

離婚した相手に養育費の減額を主張されたら、弁護士に依頼して交渉や手続きを任せるのがおすすめです。養育費の交渉を弁護士に依頼すると、さまざまなメリットがあります。

  1. (1)相手と冷静に話し合える

    離婚した相手と話し合うのは、精神的な負担が大きくなるケースが少なくありません。感情的になってしまい話し合いが進まないこともあります。

    弁護士に依頼すれば、第三者の立場から冷静かつ的確に相手と交渉することができます。当事者同士では話がこじれる場合でも、弁護士が入ることで話し合いがスムーズに進む場合があります。

  2. (2)適切な養育費の金額を主張ができる

    養育費の減額について個人で話し合いをすると、相手の主張に押されたり、同情してつい減額に同意してしまったりして、後で悔やむような場合もあります。

    弁護士は相手の主張を吟味し、主張に矛盾点がないかを入念にチェックしながら、適切な養育費になるよう交渉することができます。また、法解釈を含めて養育費の必要性を相手に主張できるので、交渉を有利に進めやすくなります。

  3. (3)裁判所への対応もスムーズにできる

    相手がどうしても養育費を減額したい場合、裁判所に申し立てをされて調停や訴訟になる可能性があります。

    調停や訴訟では、自分の主張が認められるような証拠を提出できるかが重要ですが、限られた期間で十分なものを用意するのは簡単ではなく、時間的にも精神的にも負担になります。

    弁護士に依頼することで、スムーズな手続きのサポートや証拠収集に関する適切なアドバイスを受けることができ、負担の軽減が期待できるでしょう。

6、まとめ

養育費を支払う側、受け取る側、それぞれが再婚したとしても、それだけでは養育費を減額できる理由にはなりません。養育費の減額が認められる可能性がある事由は、再婚による扶養家族の増加や、収入の大幅な減少などです。

養育費を減額するかどうかは双方の話し合いで決めることができますが、話し合いで決着がつかなければ家庭裁判所に申し立てられて、調停、審判、訴訟などの手続きをしなければならない可能性があります。

養育費の減額を請求されてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。離婚問題の経験が豊富な弁護士が、納得のいく養育費を確保できるように尽力します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています