子連れ再婚するとき養子縁組しない場合、養育費の扱いはどうなる?

2023年05月29日
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子連れ再婚するとき養子縁組しない場合、養育費の扱いはどうなる?

岸和田市が公表する統計データによると、令和4年中に岸和田市で離婚の届け出を受理した件数は360だったことが公表されています。離婚した夫婦に未成年の子どもがいれば、一方が親権者になり、他方から養育費の支払いを受けて養育していくことになるケースがほとんどでしょう。

しかし、離婚後に、親権者が再婚するというケースも起こりえます。この場合、「元配偶者からの養育費は再婚後どうなるのか」という問題が生じます。特に、再婚相手と子どもが養子縁組しない場合には、法律上両者の間に親子関係は生じないため、このまま元配偶者から継続して養育費をもらいたいと考える方もいらっしゃるでしょう。

本コラムでは、「再婚相手と子どもが養子縁組しない場合、元配偶者からの養育費はどうなるのか」について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、養育費の基礎知識

再婚後の養育費の支払いについて考える前に、まずは養育費について押さえておきましょう。

  1. (1)養育費とは

    養育費は、未成年の子どもの監護や教育のために必要な費用です。

    法律上、親には未成年の子どもを扶養する義務があり、その扶養義務に基づいて父母は養育費を負担することになります。
    たとえ離婚して非親権者となっても、子どもとの親子関係は法律上継続するため、扶養義務も変わることはありません。そのため扶養義務に基づいて、親権者へ養育費を支払うことになります。

    なお扶養義務の内容は、子どもに対して、自分の生活を保持するのと同程度の生活水準で生活できることが求められます。

  2. (2)取り決め後の養育費の変更

    養育費の支払期間は長期になるため、その間に、支払い義務者や権利者にさまざまな事情が生じる可能性があります。その場合、当事者は、増額や減額変更を請求することができます。

    ● 増額請求の主な事情
    • 子どもが病気になり治療費がかかる
    • 子どもの入学金・授業料など進学の費用が必要になった
    • 権利者(受け取る側)が病気や失業などで収入が減少した など

    ● 減額請求の主な事情
    • 支払い義務者が病気や失業などで収入が減少した
    • 権利者の転職や起業によって収入が大幅に増加した
    • 権利者が再婚して経済環境が大幅に向上した など


    養育費の増減については、基本的に任意で双方が話し合うことになります。しかし、話し合いで合意できなければ、家庭裁判所に養育費増額調停または養育費減額調停を申し立てて解決を図ります。

    調停では、調停委員が双方から話を聞き取った上で必要資料等を確認し、解決案の提示やアドバイスを行います。しかし双方が合意できなければ調停は不成立になり、自動的に審判手続きに移行します。審判では、裁判官が収入や再婚の有無なども含めて、養育費の金額などを決めることになります。

2、再婚相手と養子縁組しない場合の養育費はどうなる?

再婚すると、元配偶者からの養育費がどうなるかは、再婚相手と子どもが「養子縁組するか」「養子縁組しないか」によって異なります。
まずは養子縁組の制度について、つぎに養子縁組しない場合に養育費はどうなるのかを解説していきます。

  1. (1)養子縁組とは

    養子縁組は、養子と養親の間に法律上の親子関係を成立させる手続きです。法律上の親子関係が成立すれば、養親と養子の間に相続権や扶養義務などが生じ、実親と変わらない親子関係が結ばれます。

    なお養子縁組は、実の親との関係を断って養子になる「特別養子縁組」と、実の親との関係が継続する「普通養子縁組」の2種類に分けることができます。

    ● 特別養子縁組
    生みの親が養育できない子どもの福祉を守ることを目的とした養子縁組です。そのため、養親になるためには、さまざまな要件を満たし、家庭裁判所の審判を経た上で成立します。

    ● 普通養子縁組
    養親や養子に制限が少なく、養子縁組届を役所に提出することで成立する手続きです。再婚相手と子どもが養子縁組するときには、「普通養子縁組」のケースが多いでしょう。


  2. (2)再婚と養子縁組

    親権者が再婚した場合には、子どもと再婚相手や元配偶者は、どのような関係になるのか、例を挙げてみていきます。

    たとえば、A(夫)とB(妻)のもとにC(子ども)が生まれましたが、離婚し、Bが親権者としてCと暮らしているとします。そしてBがDと再婚することになったとします。

    このようなケースでは、BとDが婚姻届を提出するだけでは、Bの子どもCと再婚相手Dの間に法律上の親子関係は生じません。つまりBが再婚しても、Cの法律上の父はAだけです。一方、CとDが養子縁組をしたときには、Cには、A(実父)D(養父)の両方と親子関係が生じることになります。

  3. (3)再婚時に養子縁組しないときにおける養育費の扱い

    では、元夫から養育費の支払いを受けていた場合、再婚すれば養育費はどうなるのでしょうか。

    再婚によって、子どもと新しい夫がともに暮らしていても、養子縁組をしなければ法律上の扶養義務は負いません。したがって、再婚後も継続して、親権者と元配偶者が扶養義務者になります。つまり、再婚相手と子どもが養子縁組しない場合には、基本的に今まで通り元配偶者から養育費を受け取ることができます

    ただし、再婚相手から多額の援助を得られているような場合には、再婚相手と子どもが養子縁組していなくても、元夫から養育費の減額請求が認められる可能性はあります。

3、再婚相手と養子縁組した場合には養育費はどうなる?

再婚相手と子どもが養子縁組した場合には、子どもの扶養義務者になります。その結果、扶養義務者間の順番は、子どもとともに生活する再婚相手が第一次的扶養義務者となり、元配偶者は第二次的扶養義務者となります。

したがって、再婚相手と親権者が生活費や養育費を負担できるだけの資力があれば、元配偶者からの養育費減額・免除の請求を裁判所で認める可能性が高くなります。ただし再婚相手が病気や怪我などで働けないなどの事情があるときには、元配偶者が養育費を継続して負担をすることになります。

4、再婚後の養育費に関する注意点とは

最後に、再婚後の養育費に関する注意点をみていきましょう。

  1. (1)養育費以外の問題にも注意が必要

    元配偶者からの養育費を継続して受け取りたいがために、再婚相手と子どもの養子縁組をしないことを安易に選択することはおすすめできません。再婚相手と子どもが養子縁組をしないことによって、子どもに相続権が生じなかったり、子どもと親権者の名字が異なったりして不利益が生じる可能性があるためです

    また、戸籍の問題や健康保険などの取り扱いについても、検討する必要があります。養育費のことだけでなく総合的に勘案した上で、再婚の際に養子縁組するかどうかを選択する必要があります。

  2. (2)元配偶者に再婚を伝えることも大切

    再婚して子どもが再婚相手と養子縁組しても、元配偶者にその事実を伝えなければ、養育費をもらい続けることができるのではないかと思う方もいるかもしれません。

    確かに、元配偶者に再婚や養子縁組を伝えることは法律上の義務ではありません。また、養育費の減額や免除は、基本的には当事者間の話し合いや養育費減額調停などで決めることが望ましいとされます。つまり、再婚や養子縁組の事実によって、当然に養育費の減額や増額が生じるものではないということです。

    ただし、再婚の事実をあえて元配偶者に知らせずに養育費をもらい続けたような場合は、もしも相手が養育費の減額請求調停を申し立てた場合、調停委員の心証を害する可能性は高くなります心証は審判の結果を大きく左右する可能性もあるため、元配偶者にも、事情が許す限り誠実な対応をとることをおすすめします

  3. (3)養育費トラブルは弁護士に相談

    再婚後の養育費をめぐりトラブルになった場合には、弁護士に相談することもひとつの選択肢です。弁護士は、代理人として直接相手と適正な養育費について交渉を行います。また、養育費の減額請求調停を申し立てられたときも、煩雑な裁判所の手続きをスムーズに進め、有利な結果を得られるよう調停員や相手方に働きかけます。

5、まとめ

再婚相手と子どもが養子縁組しない場合には、基本的に、元配偶者からの養育費は再婚前と同様に受け取ることができます。ただし再婚相手と子どもが養子縁組をしないことによる不利益もあるので、その点も考慮した上で養子縁組をするかどうかを決めることが大切です

ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスでは、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が、養育費はもちろん親権や財産分与など離婚に関するさまざまなご相談に応じます。まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています