親からの贈与や遺産は財産分与の対象か? 離婚前に確認すべきこと
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- 岸和田
離婚する際、相手に対して財産の分け合い(=財産分与)の請求を行うことができます。
裁判所が公表する「令和4年 司法統計年報」によると、離婚調停成立もしくは審判離婚をした際、財産分与の取り決めを行ったケースは7368件あり、うち支払い内容は100万円以下の案件が約21%を占めているようです。
離婚において、金銭や不動産など、親からの贈与や遺産相続で受け継いだ相続財産も分け合わなければならないのかと疑問に思う方も少なくありません。
相手からはそのような財産についても財産分与することを要求されたけれど、それに応じないといけないのだろうか、と悩んでいる方もいるでしょう。
本コラムでは、親から贈与されたもの・遺産相続で引き継いだものなどでも離婚時の財産分与の対象になるのかについて、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。
財産分与の割合や進め方なども紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
1、財産分与とは? 割合や対象となる財産は?
財産分与とは、離婚の際、夫婦ふたりで財産を分けることをいいます。
対象となる財産は、婚姻期間中に取得したものや増やしたお金です。具体的には、現金、預貯金、有価証券、不動産、家具家電、生命保険返戻金、給与、退職金、借金、自動車などが該当します。現金や有価証券などそれぞれの財産に名義がありますが、どちらの名義になっていようと婚姻期間中に得たものであれば等しく財産分与をしなければなりません。
財産分与の割合は、裁判では5:5という基準がよく使われます。夫が外で働き、妻が家を守る専業主婦という場合、同額にするのはおかしいのではないか、という声もありますが、妻が家を守っていたからこそ、労働に専念し財産を形成できたとみなされます。つまり、よっぽどの夫婦格差や特別な理由がない限り、裁判などに至った場合は、5:5で対処されると考えてよいでしょう。
ただし、片方の配偶者が上場企業の社長や取締役などで、もう片方の配偶者と桁違いの給与を受け取っている場合は、例外的に所得が多い配偶者の割合を増やすこともあります。協議や調停で割合を話し合う場合は、5:5にこだわらず双方が納得する割合で財産分与を行うことも可能です。
2、親からの遺産相続や贈与は財産分与の対象?
原則、離婚時に発生する財産分与の対象は婚姻後に形成した財産が該当します。それでは、どちらかが婚姻中に相続によって遺産を受け取っていたり、贈与を受けたりしていた場合は、どうなるのでしょうか。
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(1)親からの贈与や相続された不動産や金銭は財産分与の対象外
親から受け取った贈与や遺産相続分は、財産分与の対象外になります。たとえば夫が父親から生前贈与を受けた場合は、全額財産分与の対象外です。金銭以外にも住宅や土地などの不動産や有価証券なども、親からの贈与や遺産相続であれば財産分与の対象外となります。
なぜならば、いずれも婚姻していなくても受け取ることができる「特有財産」であるからです。
双方が「親からの贈与された財産」と認識していれば問題ありません。しかし、認識に差があったり、もしくは贈与であると配偶者が認めなかったりする場合は、確かに親から贈与されたという証拠が必要となります。
たとえば「現在、住んでいる土地建物などは親からの贈与財産なのに配偶者が認めない」などのケースは、早めに弁護士に相談しましょう。 -
(2)共有財産と特有財産とは
親から贈与を受けた財産のように、財産分与の対象外となるものを「特有財産」といいます。それに対して、夫婦が婚姻期間に築いた財産分与の対象となるものを「共有財産」と呼びます。
親から贈与された財産以外にも、結婚前から所有していた財産や、結婚後でも個人の才覚のみで殖やした財産などは特有財産とみなされて、財産分与の対象外になります。共有財産と特有財産の区別が難しく、一概にいえないものもあります。判断に迷ったり、もめごとの種になりそうな状態であったりすれば、離婚問題の知見豊富な弁護士に助言を求めてみましょう。
3、親に住宅購入時の頭金を援助してもらった場合の財産分与
ここで問題となるのは、親から住宅購入資金を援助してもらっていたケースです。
<どちらかの親が全額住宅資金を全額出していた場合>
該当の住宅は、贈与を受けた本人の特有財産とみなされます。つまり、離婚に伴い発生する財産分与の対象外となります。
<どちらかの親が一部だけ資金援助していた場合>
離婚時の評価額から、ローンの残債と援助額を差し引いた額が、財産分与の対象となります。住宅の評価額すべてが財産分与の対象とならない点に注意が必要です。
なお、ローンの残債よりも住宅の評価額が上回っていれば、財産分与の対象とすることに受け取る側も異存はないでしょう。しかし、住宅の価値が下落し、ローン残債を下回っている場合、その住宅に価値はないということになります。その場合は、親から贈与してもらった特有財産を差し引くことは難しくなるでしょう。
住宅ローンは、名義などもケース・バイ・ケースです。財産分与の計算が複雑になることも多いため、ひとりで解決しようとせず、離婚問題の豊富な経験がある弁護士に相談することをおすすめします。
4、財産分与の方法・進め方
財産分与の方法や進め方は、離婚が成立する前に決めていくことが一般的です。
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(1)協議離婚
協議離婚とは、話し合いによって離婚することです。
通常、財産分与は離婚の話し合いと同時並行で行うため、まずはご夫婦で諸条件について話し合いましょう。慰謝料、子どもがいる場合は親権や養育費、そして財産分与です。財産分与の条件を含めた上で、合意できれば離婚届に署名捺印してください。
納得いかないまま離婚届を提出してしまうと、離婚を条件に交渉することができなくなるので、財産分与もそれ以外の条件も妥協しないことが大切です。すでに、関係が冷え切っている、お互いに感情的になって冷静に話ができない、というような状態であれば弁護士に依頼して交渉を一任したほうがよいかもしれません。
協議で財産分与に合意した場合は、離婚の諸条件を記載した「離婚協議書」を作成するとともに公正証書にしておくことをおすすめします。 -
(2)調停離婚
話し合いで合意できなかった場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停とは、男女1名ずつの調停員が、夫婦の主張を個別に聞いた上で、調整し、着地点を探ってくれる制度です。原則、夫婦が顔を合わせて話し合うことはないため、自分の主張を落ち着いて行うことができます。
調停の結果、双方が納得すれば、離婚が成立し、財産分与も確定します。調停での決定は、裁判の判決と同じ効力を持つことになり、決めたことを記載した調停調書が発行されます。相手が、財産分与の決定に従わず、支払ってくれないときは、強制執行などの法的手続きをとることも可能です。また、決まった以上の支払いを求められたとき、これを証拠に拒むこともできるでしょう。 -
(3)審判離婚
調停で合意できなければ、審判か訴訟で離婚の可否や諸条件を争うことになります。審判は実務上あまり使われることがありません。想定されるケースは、離婚には合意しているものの、財産分与や子どもの親権にわずかな争いがあるため調停が成立しないケースや、嫌がらせ目的で調停に配偶者が出頭せず意見がまとまらないときなどです。
審判は、内容に不服がある場合は即時抗告を行うことができます。即時抗告を行うと審判の効力は簡単に失われてしまいますが、即時抗告をしなければ、判決と同じ効力を持つことになります。
審判に即時抗告を行うと、残された道は裁判しかありません。 -
(4)裁判離婚
裁判は、調停で合意できなかった場合や審判に即時抗告が行われた際に行われます。離婚の可否とともに財産分与の割合なども決められるので、判断が難しい財産についても明確に切り分けてもらえます。
ただし、離婚そのものについて争っている裁判では、法律が認める離婚の原因がなければ離婚ができないということになりかねません。法律が認める離婚の原因のことを「法定離婚事由」と呼ばれています。具体的には、不貞行為や悪意の遺棄、3年以上の生死不明、婚姻を継続し難い重大な事由、などです。 -
(5)離婚後の財産分与の方法
離婚後に分けるべき財産が見つかった場合や、離婚時に財産分与を行っていなかった場合、離婚後2年間は財産分与が可能です。
基本的には離婚前に財産分与の内容を決めるときと同じ流れで、分与する内容を決めていきます。つまり、まずは話し合いを行い、そこで合意できなければ調停を行います。調停といっても、すでに離婚は成立しているので、財産分与について話し合うための調停、「財産分与請求調停」を申し立てることになります。
調停員が財産の取得や維持のために、夫婦がそれぞれどれくらい貢献したかを確認して、解決案を提示してくれます。調停がまとまらない場合は、自動的に審判手続きがスタートします。なお、財産分与のみで裁判を起こすことはできないので注意が必要です。
手続きや調停員への説明などに心配があるときは、弁護士に相談してから対応することをおすすめします。
5、まとめ
離婚の際の財産分与は、複雑になればなるほど、もめる原因となります。共有財産か特有財産かという判断だけでなく、何割で分けるのか、住宅はどちらの所有とするのか、など話し合う問題は山積みです。
財産分与を進める際に親からの贈与問題が加わると、話し合いが冷静に進まないだけでなく、正しい財産分与の方法がわからずに不利益を被る可能性もあります。親権や養育費、慰謝料などその他の金銭問題も絡めば、ますます複雑化することでしょう。
住宅ローンの問題や親からの贈与などが絡む財産分与問題は、ひとりで抱え込まず弁護士に相談することがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスでは、あなたが抱える離婚問題をいち早く解決できるよう、離婚問題の知見豊富な弁護士が全力でサポートします。まずは一度、お気軽にお問い合わせください。
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