夫婦関係調整調停って何? できることや準備について弁護士が解説

2020年10月21日
  • 離婚
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夫婦関係調整調停って何? できることや準備について弁護士が解説

大阪府が公表している「平成30年人口動態調査結果 離婚件数、届出月・市町村別」によると、岸和田市における同年度の離婚件数は400件でした。また、裁判所が公表している「平成30年度 家事事件の種類別新受、既済、未済件数 家庭裁判所別」によると、大阪府内における同年度の家事調停新受件総数は9269件でした。

いま現在でも、大阪・岸和田市内で、離婚するべきかどうか迷っている方がいらっしゃることでしょう。
「離婚をしたい。でも、できれば子どものためには回避したい。誰か第三者が夫婦の間に入って調整してくれないものか……」。

そんな悩みを抱える夫婦のために、家庭裁判所には夫婦関係調整調停という制度があります。夫婦間の調停については、離婚調停をイメージする方が多いと思いますが、実は夫婦関係の修復の目的もあります。

本コラムでは夫婦関係調整調停について、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

1、夫婦関係調整調停とは

  1. (1)夫婦関係調整調停には2種類ある

    夫婦関係調整調停とは、夫婦関係が円満でなくなった時に、家庭裁判所で調停委員(男女2名)のサポートを受けながら話合いを行う手続きです。

    「離婚したい」という場合にも、「夫婦関係を修復したい」という場合にも、「離婚すべきか迷っていて判断しかねる」という場合にも利用できます。

    そのため、夫婦関係調整調停には、離婚調停と円満調停の2種類があります。

    円満調停とは、その名の通り夫婦関係が円満に戻ることを目的とする話合いです。
    たとえば、
    ●夫婦関係の現状の把握
    ●夫婦関係が円満でなくなった原因は何なのか
    ●夫婦関係を修復するためにはどこを改善すればいいのか
    といった事柄について、調停委員が解決策を一緒に考えます。

    なお、円満調停を進めていても、「やはり修復は無理だ」と思ったら、円満調停は不成立として離婚調停に移行することも可能です。その場合は、子どもの親権・面会交流、財産分与、養育費等といった離婚の条件について話し合うことになります。

  2. (2)調停で合意したことは強制力を持つ

    円満調停も離婚調停も、基本的には夫婦の自由な話合いの場なので、裁判のように命令されることはありません。

    普段は面と向かって言えない思いを、調停という場を借りて相手に伝えるのが目的です。また、調停委員を介することで、第三者の客観的な意見を聞き、配偶者に対する気持ちに変化が生まれることが期待できます。

    調停で双方の合意が成立すると、調停調書が作成されます。調停調書には、確定判決と同じく強制的に内容を実現させる力があります。

    もし、養育費や財産分与の支払いなど、記載した内容を相手が守ってくれない場合に申し立てると、家庭裁判所から相手へ約束を守るよう告げてもらう履行勧告や相手の財産を差し押さえる強制執行などが可能です。

    なお、強制執行の手続きをする際には、相手の財産の特定や銀行・市区町村などからの財産情報の取得が必要です。個人で進めるには、負担が少なくないため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

  3. (3)夫婦関係調整調停のメリット

    夫婦関係調整調停の主なメリットとしては、
    ●第三者から客観的かつ冷静な意見がもらえること
    ●調停委員には守秘義務があること
    ●面と向かって言えないことも伝えられること
    などが考えられます。

    夫婦関係のトラブルは、他人には相談しにくいセンシティブな内容が多いものです。調停委員には守秘義務がありますので、安心して話合いをすることができるでしょう。また、誰にも相談せずにひとりで悩んでいると偏った結論になりがちです。数多くの夫婦トラブルを見てきた調停委員なら、冷静かつ客観的な意見が期待できます。自分ひとりで考えていたのとは違った視点で、夫婦問題に向き合うことができるかもしれません。

    なお、調停には弁護士が同席することも可能です。すでに離婚の意志が固まっている離婚調停であれば、弁護士が同席することで、養育費や財産分与について有利な主張をすることが期待できます。

2、夫婦関係調整調停の流れ

  1. (1)およそ月1回のペースで行われる

    夫婦関係調整調停の流れは、離婚調停も円満調停も基本的には変わりません。
    相手方の住所地または夫婦で合意した家庭裁判所に申し立てて行います。

    • 申し立て
    • 家庭裁判所から調停期日の呼出状が届く
    • 第1回期日(申し立てから約1か月半後)
    • 第2回期日~(約1か月半に1回のペース)
    • 調停成立(調停調書作成)または調停不成立(離婚調停へ移行することもある)


    調停の回数は内容によって異なりますが、およそ2~4回のケースが多いとされています。ただし、互いに合意できない場合は回数が多くなることもあるでしょう。

  2. (2)調停は夫婦別室で調停委員と話す

    調停期日には、夫婦別室で交互に調停委員と話すことになります。待合室も夫婦で別になっているので、直接顔を合わせて気まずくなる心配はありません。

    調停委員からは、
    ●夫婦関係の現状
    ●配偶者に対する不満の内容
    ●今後どんな夫婦関係を望んでいるのか
    等を質問されます。

    調停が行われるのは平日なので、平日に仕事がある方は休んで出席しなければならない点に注意してください。1回にかかる時間は、約2時間です。調停全体にかかる期間は夫婦によってケース・バイ・ケースですが、目安は約半年間とされています。

    なお、大阪家庭裁判所 岸和田支部の受付曜日・時間は、以下の通りです。

    • 月曜日から金曜日(祝祭日・年末年始を除く)
    • 午前9時30分~午前11時30分、午後1時~午後3時30分
  3. (3)調停が成立した場合

    双方が納得する結論に達すると、調停成立となります。調停が成立した場合、原則として夫婦が同席して合意内容を確認します。

    次に、裁判所書記官が合意内容を記載した調停調書を作成します。調停調書の内容をどちらか一方が守らない場合には、履行勧告または強制執行を申し立てることも可能です。

  4. (4)調停が不成立の場合

    双方が全く譲歩せず話合いがまとまらない、相手方が調停に出席しない等の場合には、調停が不成立となり、終了します。円満調停が不成立になり離婚を決意した場合には、離婚調停に移行することが可能です。

3、夫婦関係調整調停の費用・必要書類

  1. (1)費用は総額約2000円

    夫婦関係調整調停は、離婚調停でも円満調停でも、費用は以下の通りです。

    • 収入印紙1200円分
    • 連絡用の郵便切手800円(家庭裁判所によって異なる場合があるので要事前確認)

    ※その他必要書類の発行手数料が各数100円
    ※弁護士に調停を依頼する場合は、別途弁護士費用がかかります
  2. (2)手続きに必要な書類

    夫婦関係調整調停の手続きに必要な書類は、以下の通りです。

    • 夫婦関係調停申立書(離婚調停申立書)
    • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書、裁判所によっては住民票も必要なので要事前確認)
    • 収入印紙、連絡用郵便切手

    ※その他、陳述書、照会回答書、事情説明書など話合いの内容による


    申立書は家庭裁判所で入手できます。また、裁判所ホームページからダウンロードも可能です。戸籍謄本は、市区役所やコンビニで取得できます。詳細は、お住まいのエリアの家庭裁判所に確認しましょう。

4、夫婦関係調整調停前の準備

夫婦関係調整調停に出席する前の準備としては、夫婦関係の現状や主張を記載したメモを作成しておくことがおすすめです。裁判所という慣れない場所で、精神的に緊張している中、約2時間というタイムリミットで調停委員に対して的確に説明を行うということは、多くの人にとってハードルが高いでしょう。

調停委員からの質問を想定して、あらかじめ話すことをある程度メモしておけば、調停の場で言葉に詰まった時もそれを読み上げることができます。どんな質問をされるのか、どのように答えたらよいのか、相手に対して的確な主張をしたい、などお悩みの場合は、離婚問題の解決実勢が豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。

5、弁護士ができること

  1. (1)現状や今後について法的アドバイスができる

    円満調停の場合、夫婦関係の修復が目的ですので、弁護士への依頼は必要ないと思われるかもしれません。

    しかし、円満調停の場合でも弁護士に依頼するメリットはあります。
    たとえば、現在抱えている夫婦間トラブルは法律的に見てどのような状況にあるのか、円満調停が不成立となった場合にどうすればよいのか、夫婦のどちらが法律的に有利・不利な立場にあると言えるのか、など、夫婦関係の現状や今後の道筋について、法律的なアドバイスをもらえるということです。


    あらかじめ弁護士に相談して現状を整理しておくことで、円満調停から離婚調停に移行した場合にも、スムーズに対応できる可能性が高くなるでしょう。

  2. (2)調停委員に対するアドバイスができる

    家事調停を多数扱ってきた弁護士の場合、調停委員に対する効果的なコミュニケーションの方法についてもアドバイスをできます。

    家事調停では、調停委員を味方につけるような話し方をすることも非常に重要なポイントとなります。
    調停委員自身もさまざまな人生経験を重ねてきたひとりの人間ですから、夫婦のどちらかに同情したり共感したりすることがあります。調停委員を味方につけることができれば、配偶者に対して説得をしてくれることも期待できます。

    そのため、「もともと説明するのが苦手」「夫婦関係で非常につらい思いをしているので、感情的になってしまわないか心配」という方は、弁護士に話し方・交渉の仕方の相談をしてみるのも有効な手段です。

6、まとめ

家庭裁判所で行われる夫婦関係調整調停には、いわゆる離婚調停と円満調停の2種類があります。円満調停は、夫婦関係の修復を目的とする話合いの手続きです。もし円満調停が不成立に終わった場合には、改めて離婚調停を申し立てることも可能です。

調停には弁護士が同席することも可能なので「自分の考えを相手に主張できるか不安」「相手と面会することが苦痛」という場合や、的確な主張をするために、調停委員に対する話し方のアドバイスをもらうこときます。

大阪・岸和田市で夫婦関係調整調停をご検討の方、もしくは調停でお困りの方は、ベリーベスト 法律事務所 岸和田オフィスの弁護士までご相談ください。離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が親身にお話を伺います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています