共働きを理由に生活費を渡さない夫への対策は? 離婚は認められる?

2024年05月23日
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共働きを理由に生活費を渡さない夫への対策は? 離婚は認められる?

大阪府岸和田市のデータによると、令和5年度の同市における離婚件数は402件となっています。

夫婦共働きであるにもかかわらず、相手の収入に家計を依存し、生活費等を一切支払わない方が一部に見受けられます。夫婦で管理する共通口座を作ったものの、結局自分ばかりが生活費を負担し続け、貯蓄もままならず口座残高は減る一方という方もいらっしゃるかもしれません。

本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・夫婦には婚姻費用の分担義務があり、共働きでも生活費の支払いを拒否する行為は、特別の事情がない限り違法。
・生活費を渡さない配偶者と離婚できるのか?
・離婚についての話し合いが難しい場合の対処法。

共働きであるにもかかわらず、生活費を渡さない配偶者に悩んでいる方や、離婚を考えている方に向けて、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「岸和田市オープンデータカタログサイト」人口動態)


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1、夫婦には婚姻費用の分担義務がある

民法上、夫婦には婚姻費用の分担義務があります(民法第760条)。そのため、共働きで自分の収入があるにもかかわらず、生活費の支払いを拒否することは違法である可能性が高いです。

  1. (1)婚姻費用は資産・収入に応じて分担する

    民法第760条では、夫婦は資産・収入等に応じて婚姻費用を分担する義務を負う旨が明記されています。

    婚姻費用に含まれるのは、家賃・食費・水道光熱費などの夫婦の生活費や、子どもの養育費などです。

    なお、夫婦が別居中であっても、同居中と同様に婚姻費用の分担義務が発生します。夫・妻がそれぞれ負担すべき婚姻費用の金額を求める際には、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」が参考になります。

    (参考:「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」(裁判所))

  2. (2)共働きで収入があるのに、生活費の支払いを拒否するのは違法

    専業主婦(主夫)で収入がない場合は、婚姻費用を全く分担しないことも考えられるでしょう。しかし、共働き夫婦の場合はそういうわけにはいきません。

    前述のとおり、夫婦は資産・収入等に応じて、婚姻費用を分担する義務があります。そのため、共働きで自分の収入があるならば、配偶者との収入バランスを踏まえて、相応の婚姻費用を負担する必要があります

    婚姻費用の分担方法は、夫婦の合意によって自由に決められますので、配偶者が支払わなくてよいと言ってくれるのであれば、生活費を支払わなくても構いません。

    しかし、配偶者が生活費の支払いを求めているのに、収入に応じた生活費の支払いを拒否する行為は、特別の事情がない限り違法となります。

2、生活費を支払わないことを理由に、配偶者と離婚できる?

共働きなのに生活費を支払わない配偶者とは、「悪意の遺棄」を理由に離婚できる可能性があります。

また、離婚請求と併せて、配偶者に対して慰謝料を請求することも可能です。

  1. (1)協議離婚・調停離婚であれば、夫婦の合意により離婚できる

    夫婦が離婚する方法には、主に「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあります。

    このうち、協議離婚と調停離婚については、離婚の理由を問わず、夫婦が合意さえすれば離婚を成立させることができます。

    協議離婚は夫婦間の話し合いによって、調停離婚は家庭裁判所の調停手続き(家事調停)を通じて、それぞれ離婚に関する夫婦間の合意を目指す手続きです。

    生活費の不払いが原因の場合も、協議または家事調停を通じて配偶者と合意すれば、離婚が認められます。

  2. (2)生活費の不払いは「悪意の遺棄」に当たる|裁判離婚も可能

    離婚について配偶者が同意しない場合には、離婚訴訟を通じた「裁判離婚」を目指すことになります。

    裁判離婚を成立させるためには、法定離婚事由(民法第770条第1項各号)のいずれかを、離婚訴訟の中で主張立証しなければなりません。

    生活費の不払いについては、法定離婚事由の一つである「悪意の遺棄」(同項第2号)に該当します。悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居義務または協力扶助義務(民法第752条)を履行しない行為です。

    資産・収入に応じて生活費等の婚姻費用を分担することは、夫婦の協力扶助義務の内容に含まれます。

    そのため、共働きで収入があるにもかかわらず、生活費を全く支払わない行為は「悪意の遺棄」に当たり、裁判離婚が認められる可能性が高いです。

  3. (3)生活費の不払いについて慰謝料も請求できる

    共働きの配偶者が生活費を支払わず、経済的な苦境を強いられた場合、配偶者に対して、離婚と併せて慰謝料の支払いも請求できます。

    生活費の不払いは、夫婦の協力扶助義務を不当に履行しない違法行為であり、それによって配偶者に精神的損害を与える行為は「不法行為」(民法第709条)に該当するためです。

    生活費の不払いに関する慰謝料の金額は、50万円~200万円程度が標準的です。不払いの期間が長ければ長いほど、慰謝料の金額は高額になる傾向にあります。

    なお慰謝料の請求については、離婚に関する協議・調停・訴訟の中で争われることになります。

3、生活費の分担について、夫婦間の話し合いが難しい場合の対処法

配偶者が頑なに生活費を支払おうとせず、分担に関する話し合いがまとまらない場合には、第三者の協力を得ることが賢明です

最終的には離婚を請求することもやむを得ませんが、早い段階で弁護士にご相談のうえ、適切な方針をもってご対応ください。

  1. (1)弁護士を代理人として協議する

    当事者同士での話し合いは、感情的にヒートアップし話し合いが膠着状態になることが少なくありません。

    この場合は、弁護士に生活費の分担協議を代行してもらうことが効果的です。

    弁護士は、法律論に立脚した客観的な論拠に基づいて、配偶者に生活費の分担を求めます。
    第三者的な立場にいる弁護士であれば、冷静かつ説得力を持って話し合いを進められるため、配偶者が任意に生活費を支払う可能性が高まるでしょう。

    また、弁護士に協議を一任することで、なかなかまとまらない話し合いを続けるストレスも軽減されます。

  2. (2)婚姻費用の分担請求調停を申し立てる

    弁護士を代理人として交渉してもなお、生活費の分担に関する協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てることも考えられます(※)。

    婚姻費用の分担請求調停では、調停委員が夫婦双方の主張を聴き取り、適宜双方への働きかけ・調整を行って、生活費等の分担に関する合意形成を図ります。
    最終的に、裁判官が提示する調停案に夫婦双方が同意すれば調停は成立となり、双方は調停の内容どおりに生活費等を分担する義務を負います。

    仮に調停が不成立となった場合でも、家庭裁判所が審判を行い、生活費等の分担に関する結論を示します。審判が確定すると、調停成立時と同様に、双方は審判の内容どおりに生活費等を分担する義務を負います。

    このように、婚姻費用の分担請求調停を申し立てると、最終的に生活費等の分担に関する問題について、一定の結論を得ることが可能です。調停・審判の手続きには法律上の厳格なルールが適用され、不慣れな方には対応が難しい部分が多いので、弁護士にご相談ください。

    (※)(参考:「婚姻費用の分担請求調停」(裁判所))

  3. (3)離婚を請求する

    配偶者に生活費等を支払う気が全くない場合には、離婚を請求することもやむを得ないでしょう。

    前述のとおり、離婚を実現する方法には、主に協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つがあります。

    どの手続きが適しているかは、生活費不払いの期間や、離婚請求を受けた配偶者の対応などによって異なります。弁護士に相談し、円滑かつ早期の離婚成立を目指しましょう。

4、離婚問題を弁護士に相談すべきタイミングは?

離婚問題は、相手に離婚を拒否された場合や、離婚条件について意見が対立した場合など、配偶者との間で紛争に発展する可能性が生じたタイミングで、早期に弁護士へ相談することが大切です。

早い段階から弁護士が関与することで、トラブルの無用な拡大を防ぎ、早期・円滑に離婚が成立する可能性が高まります。また、どの方法により離婚を目指すべきか、どの程度の離婚条件を要求できるかなどについても、弁護士のアドバイスを踏まえたうえで十分な検討を行うことができます

配偶者が生活費を支払わないなどの理由で離婚を検討している方は、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

配偶者が生活費等を支払わない場合、離婚や慰謝料を請求できる可能性があります。夫婦同士の離婚や慰謝料請求に関する協議がまとまらない場合には、早い段階で弁護士にご相談いただき、離婚を含めた解決の早期実現を目指しましょう。

ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。早期に離婚を成立させることに加えて、財産分与などの離婚条件につき、依頼者に少しでも有利な結果を得られるように尽力いたします。

配偶者との離婚をご検討中の方は、まずはベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています