夫婦財産契約(婚前契約)のメリットとは? 手続きの方法や注意点について解説
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結婚前であっても、離婚時のトラブルを懸念される方もいらっしゃるのではないでしょうか。海外では婚前契約を結ぶカップルも多く、ブラットピットとアンジェリーナ・ジョリーは結婚前に計101ページにもわたる婚前契約書を作成していたと報じられました。
一方で、日本における平成28年度の夫婦財産契約の登記件数は28件にとどまっており、海外に比べてまだ婚前契約の制度自体が浸透していないことがわかります。では、夫婦財産契約とはどういったものなのでしょうか。婚前契約の手続きと注意点について、岸和田オフィスの弁護士が解説していきます。
1、夫婦財産契約とは
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(1)夫婦財産契約は婚前契約と同義
夫婦財産契約とは、夫婦の財産について法定財産制とは異なる取り決めを行うことです。
明治32年に夫婦財産契約登記取扱手続として改正され、民法756条では「夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届け出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。」と規定されています。つまり、夫婦財産契約と婚前契約は同じ意味として使用されます。 -
(2)夫婦財産契約で決められること
夫婦財産契約で決めるのは下記のような内容です。
- 法定財産制の内容
- 婚姻費用分担金
- 日常家事債務の連帯責任
- 夫婦間の財産の帰属
- 法定財産制以外の内容
2、夫婦財産契約を締結するメリット
夫婦財産契約と聞くと、離婚を前提に契約を結ぶイメージが先行し、ネガティブな印象を抱く方もいらっしゃるかもしれません。しかし、夫婦財産契約にはメリットも多くあります。
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(1)円満な夫婦関係を維持することができる
夫婦財産契約の作成時には、お互いの財産を開示することになります。そして、開示した財産ついて夫婦で密に話し合いを行っていきます。そのため、お互いの価値観や考え方をより深く知ることができ、円満な夫婦関係を維持することにつながります。
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(2)離婚の予防にもなる
結婚前に夫婦財産契約を締結しておくことは、離婚の予防にもつながります。たとえば、浮気が原因で離婚する場合の慰謝料を事前に決めておくことで、精神的にブレーキがかかるでしょう。婚前契約が、浮気や離婚の抑止力になることもあるのです。
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(3)離婚時のトラブルを回避できる
夫婦財産契約は、夫婦間の約束事を明文化することです。責任の所在が明確になるため、離婚時の財産分与や親権問題といったトラブルを回避できるでしょう。
3、夫婦財産契約を結んだ方が良いカップルとは?
では、どのようなカップルが夫婦財産契約を結んだ方がよいのでしょうか。具体的なケースを挙げてみましょう。
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(1)再婚
一度離婚を経験すると、離婚時に相手ともめたことがトラウマ(心的外傷)になってしまう人もいます。特に離婚時にトラブルになりやすいのが、財産分与についてです。また、再婚の場合は元配偶者への慰謝料や子どもへの養育費などを支払うケースもあります。そのため、再婚の方はお互いの財産状況をあらかじめ共有し、夫婦財産契約を結んでおくことをおすすめします。
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(2)資産家
資産家の場合は、離婚時の財産分与や資産が多額になります。離婚時の夫婦の財産分与は基本的に半分です。一方の配偶者のみが資産家の場合、資産形成への貢献度が低い配偶者に、半分の資産を財産分与することは避けたいと思うのは当然です。そのため、結婚前に夫婦財産契約で財産分与の決め事を作成しておくとよいでしょう。
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(3)事実婚
事実婚の場合は、夫婦間での法的な拘束力は法律婚と比べて弱まります。法律上の保護が十分でない事実婚において、夫婦財産契約を行うことでお互いの希望をかなえやすくなる面もあります。
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(4)子連れ婚
離婚の際に、トラブルとなりやすいのは子連れの場合です。特に、親権や養育費の負担についてもめるケースが多いでしょう。すでに子どもがいて再婚する子連れ婚の場合も、あらかじめ夫婦財産契約で親権や教育費の負担について決めておきましょう。
4、夫婦財産契約を結ぶときの注意点
前述のとおり、夫婦財産契約を結ぶことはメリットが多いように思いますが、注意点についても解説していきます。
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(1)夫婦財産契約は婚姻届の前に登記する
民法755条では、「婚姻の届出をする前に契約を締結しなければならない」と定められています。夫婦財産契約は婚姻届を出す前に登記をする必要があるのを忘れないでください。
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(2)契約内容を登記する必要がある
2つ目の注意点は、夫婦財産契約の内容を登記する必要があるということです。民法756条において、「契約内容を登記しなければ、承継人や第三者に対抗することができない」と定められています。定型の書式はありませんが、不動産であれば不動産登記法に基づいた登記情報などを記載する必要があります。
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(3)契約内容は変更できない
3つ目の注意点は、婚前契約の登記事項や登記記録は、結婚後に変更できないということです。そのため、契約を締結する前に内容を吟味しておかなければなりません。
ただし例外的に、不適切な管理によって財産を危うくさせている場合は家庭裁判所に財産の管理者を変更する請求ができます。
5、夫婦財産契約の手続きと必要書類
では、夫婦財産契約の手続きについて解説していきます。
前述のとおり、夫婦財産契約は、結婚前に締結します。夫婦の住所地を管轄する登記所にて、登記申請1件につき1万8千円を支払い、申請を行います。
夫婦財産契約に必要な書類は以下の通りです。
- 登記原因証明情報……夫婦財産契約書
- 戸籍謄本……結婚前であるということを証明
- 住所証明書……住民票
- 印鑑証明書……3か月以内の証明書
ただし、結婚契約書を作成しただけは法的な強制力は生じません。相手が約束を守らない可能性がある場合や不安な方は、公正証書の作成をおすすめします。公正証書とは、当事者同士の契約に基づいて公証人が作成する公文書のことです。公文書なので高い証明力があります。
強制執行認諾条項付きの公正証書を作成しておけば、相手が約束を守らない時に強制執行手続きに移ることができます。
夫婦財産契約を行う際には、個々の状況や希望に応じて必要事項を記載しなくてはなりません。また、婚前契約書に法的拘束力を持たせて公正証書にする際も、各種手続きや決められた必要事項を記載する必要があります。夫婦財産契約の利用や公正証書の作成をお考えの方は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
6、まとめ
結婚前に夫婦財産契約を締結しておくことで、離婚時のトラブルを予防するだけではなく夫婦関係を円満にするメリットもあります。
しかし、夫婦財産契約の締結や公正証書の作成は、法的な知識がないと難しいでしょう。
正しく夫婦財産契約を締結し、離婚時のトラブルを回避したい方は、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士にご相談ください。個々の状況に合わせて、適切な夫婦財産契約の作成をサポートしてまいります。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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