執行猶予中に逮捕されたらどうなる? 再犯率の高い犯罪や対処法まで解説

2019年08月08日
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執行猶予中に逮捕されたらどうなる? 再犯率の高い犯罪や対処法まで解説

岸和田市の更生保護サポートセンターでは、非行や犯罪に陥った人に対し、保護司らを中心として生活上の助言・指導、情報提供などをおこなっています。しかし、更生は簡単なことではありません。中には執行猶予中にもかかわらず、再び犯罪に手を染めてしまう人もいます。特にご家族が執行猶予中の場合、再犯の心配をされている方も多いでしょう。
もし執行猶予期間中に逮捕されてしまったら、執行猶予は取り消され、ただちに刑務所へ収監されてしまうのでしょうか。今回は岸和田オフィスの弁護士が、執行猶予中の逮捕とその後について、ご家族の対処法を含めて解説します。

1、執行猶予とは

執行猶予とは、刑事裁判で有罪となっても、一定期間、刑の執行が猶予される制度です。期間中に罪を犯さなければ、判決の効力は失われます。
たとえば「懲役3年」の実刑判決では、3年間刑務所へ収監され刑務作業に服します。
一方、「懲役3年、執行猶予4年」では、有罪ではあるものの身柄は解放され、その後4年間事件を起こさず無事に過ごせば刑が免除されます。
いずれも前科がつくことに変わりはありませんが、刑務所に入るか、ご家族とともに日常生活を送れるかという点で大きく異なります。

2、執行猶予期間中に逮捕されたらどうなる?

  1. (1)執行猶予を取り消される可能性が高い

    犯した罪が「禁錮・懲役刑」で実刑判決になると、前の犯罪の執行猶予は取り消されます。たとえ交通違反であっても、飲酒運転や無免許運転のように悪質な違反の場合には該当することがあります。

    そして、前の罪の刑期と、新たに犯した罪の刑期を合算した期間、刑務所へ収監されます。
    たとえば、前の犯罪が「懲役2年、執行猶予3年」、新たな犯罪が「懲役3年」だった場合は合計5年間の刑期となります。
    また、執行猶予中の犯罪は実刑判決となる見込みが高く、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるため、判決までの保釈も認められにくくなります。

    執行猶予は、罪の重さを認め二度と同じ過ちをしないことを条件に設けられた制度です。執行猶予中に犯罪をおこなえば、社会生活の中で更生するという目的がなされなかったわけです。そのため、刑務所への収監によって更生の目的を果たす必要があると理解しておきましょう。

  2. (2)執行猶予の取り消しを免れる場合

    ただし、次の3つのうちいずれかに該当する場合、取り消しを免れるケースもあります。

    1 不起訴または無罪
    逮捕されたとしても、罪が確定したわけではありません。
    不起訴、あるいは起訴されても無罪となればこれまでの生活に影響はないので、ご家族は諦めずに対処しましょう。ただし、日本では起訴されると99%以上の確率で有罪となりますので、実質的には不起訴処分の獲得を目指すことになります。

    2 新たな罪が罰金刑
    もっとも罰金刑で済めば必ず執行猶予が取り消される、ということではありません。あくまでもケース・バイ・ケースとなり、裁判官の判断に委ねられます。そのため、弁護士の弁護活動が重要な鍵を握ります。

    3 再度の執行猶予がつく
    新たな罪が次の条件を満たしていた場合、再度の執行猶予がつくこともあります。

    • 1年以下の懲役刑または禁錮の判決
    • 特に情状酌量すべき点がある
    • 前の執行猶予に保護観察がついていない


    ここでいう情状は、初犯の罪に対して執行猶予がつく場合よりも厳しいものとなっています。たとえば、悪質性がなく再犯防止に向けて本人が多大な努力をしていた、被害者に十分な弁済が済み許されていたような場合です。
    しかし、執行猶予中に罪を犯すことは情状酌量の余地があるとは考えにくいため、該当する可能性は低いでしょう。

3、再犯率の高い犯罪とは

平成30年版『犯罪白書』によると、平成29年に刑法犯で検挙された者のうち、それ以前に刑法犯で検挙されたことのある再犯者は48.7%にものぼります。一度犯罪に手を染めると、半数近くの割合で再度罪を犯していることが分かります。
そのうち、恐喝、強盗、詐欺犯においては特に再犯率が高く、恐喝は58.9%、強盗は45.1%、詐欺は39.3%の人が過去に何らかの罪で検挙されています。
また、同一罪名の再犯については、覚せい剤取締法違反の再犯率が66.2%と極めて高く、薬物犯罪の再犯者が多いとされる根拠をまさに示す結果となっています。ほかにも、窃盗罪が20.3%、恐喝罪が18.3%と、こちらも同一罪名の前科者が多い犯罪となっています。
前回と同一の罪を犯した場合には、実刑判決になり、前の執行猶予も取り消されるおそれが高い点も知っておきましょう。

こうしたデータを踏まえ、ご家族としては、再犯防止のためにできる限りの対策を実行することが大切になります。

4、執行猶予中に逮捕されてしまったら、弁護士へ相談を

刑事事件を起こして逮捕されてしまったら、初犯であっても弁護士の支援を受けることををおすすめします。執行猶予中の逮捕であればなおさらです。
ご家族ができることとして、まず速やかに弁護士を依頼し、取り調べ対応について本人へアドバイスしてもらいましょう。執行猶予中である以上、取り調べの際に厳しい追及を受けることは必至であり、本人が耐えられず不利な供述をしてしまうおそれがあるからです。
前の罪に付された執行猶予を取り消されないためには、新たに犯した罪について不起訴または無罪とするか、要件を満たす程度にまで量刑を軽くしてもらわなければなりません。これをご家族のみで実現させるのは現実的に難しいでしょう。
弁護士であれば、法的知識や経験をもとにあらゆる手を尽くすことができます。

具体的に弁護士は次のような活動をおこない、検察官や裁判官に対して粘り強く交渉します。

  • 事件の様態や証拠から、犯罪に悪質性や計画性がないことを主張する
  • 被害者へ十分な謝罪と弁済を済ませる
  • 本人へ反省文の指導をし、提出させる
  • 被害者との示談を成立させ、宥恕(ゆうじょ)条項(被害者から許しを得た旨の条項)を盛り込む
  • 家庭内における生活環境を整え、ご家族の監督を約束する
  • 医療機関や更生施設のプログラムを受ける準備を整える


前の犯罪について執行猶予の取り消しがなされてしまった場合でも、量刑を軽くしてもらうことで少しでも早い社会復帰につながります。

5、まとめ

今回は、執行猶予中に逮捕されてしまった場合、どのようなことが起こり得るのかを解説しました。執行猶予中の犯罪は、初犯や猶予期間をまっとうした場合と比較して厳しい結果が待ち受けていることを覚悟しなければなりません。
しかし、必ずしも執行猶予が取り消されるわけではなく、日常生活を送りながら引き続き更生を目指せるケースもあります。そのためには弁護士のサポートが不可欠です。ご家族としては速やかに弁護士へ相談されることが最善の方法だといえるでしょう。
ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士も力を尽くします。身内の方が執行猶予中に逮捕されてしまいお困りであれば、まずはご一報ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています