器物破壊で逮捕されてしまったら? 起訴される前の対応がカギ!

2019年05月10日
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器物破壊で逮捕されてしまったら? 起訴される前の対応がカギ!

2017年9月、知人の車を傷つけたとして、大阪府の男性が器物損壊の疑いで逮捕されました。その後、男性は略式起訴され、岸和田簡易裁判所から罰金を科されたと報道されています。

このように、器物損壊は比較的軽微な罪ですが、器物損壊等罪が成立した場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料を科されることになります。さらに、無実を争うこととなれば、身柄拘束が長期にいたる可能性もありえるでしょう。

器物損壊等罪の構成要件や早期解決のポイントについて、岸和田オフィスの弁護士が説明します。

1、器物損壊とは

器物損壊等罪とは、他人の物を損壊・傷害する行為をした場合に問われる罪です。
刑法上の定義と、具体的にはどのような行為が該当するのか、確認していきましょう。

  1. (1)器物損壊等罪の定義

    器物損壊等罪は、刑法第261条に定められています。他人の物を損壊し、または傷害した者は、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」もしくは科料(かりょう)に処されることが規定されているのです。

    なお、科料とは、1000円以上1万円未満の金銭を強制徴収する罰則です。また、条文における「損壊」と「傷害」の違いとは、行為をした客体(対象物)の違いを指します。具体的には以下のとおりです。

    ●損壊とは
    損壊は、「他人が所有している物」が対象物です。

    形として破壊されていなくても、「物の本来の効用を失わせしめる行為」とみなされた場合も損壊とみなされます。たとえば、食器に尿をかけるなどの行為も、器物損壊罪に問われる可能性があります。

    ●傷害とは
    一方、傷害は、「他人が点有している動物」が対象物とされます。

    ただし、愛護動物(牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、人が占有している動物で哺乳類、鳥類または爬虫類に属するもの)をみだりに殺しまたは傷つけた場合は、「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)」が適用される可能性が高いでしょう。

    動物愛護法に違反した場合、「2年以下の懲役」または「200万円以下の罰金」が科されることになります。なお、両生類以下の脊椎動物や無脊椎動物の殺傷には、動物愛護法は適用されず、動物傷害罪が適用されます。

  2. (2)器物損壊に該当するケース

    具体的に器物損壊に該当するケースを見ていきましょう。

    ●他人の建物に落書き・貼り紙をした場合
    落書き行為などにより壁などを汚損することで、建物の本来の価値を損なうことになるため、器物損壊罪に問われることになる可能性があります。過剰な貼り紙で、看板などの判読性が落ちることなども対象となるでしょう。

    ●他人が飼っているペットを故意に逃がした場合
    他人が飼っているペットを勝手に逃がした場合、逃がしたペットの生死に関わらず、動物傷害罪が適用される可能性があります。

  3. (3)器物損壊に該当しないケース

    状況によっては、他人の所有物を破損したが、器物損壊罪に問われないケースもあります。しかし、いずれのケースも、発生した被害に対しては当然、民事上の損害賠償責任は発生しますので注意が必要です。

    ●誤って他人のものを壊してしまった
    刑法は、故意犯にのみ適用されます。そのため、故意による行為でないものには器物損壊等罪は適用されません。

    ●加害者が14歳未満
    わざと器物を損壊したとしても14歳未満であれば罰則はありません。「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と刑法41条に定義されているためです。ただし、少年法に基づいた処分が下される可能性があります。

    なお、15歳以上の者による指示で14歳以下の未成年者が器物を損壊、損傷させたというケースでは、指示した15歳以上の者が器物損壊の罪に問われる可能性があります。

    ●心神喪失状態だった
    精神疾患や投薬・麻酔後の「せん妄」などによる幻聴や幻覚などが行為の原因となっている場合は、器物損壊等罪には問われない可能性が高いでしょう。

    「心神喪失」とは、精神疾患や薬物中毒などで行為の善悪判断がつかなくなっている状態、またその判断に従って行動する能力がない状態を指します。刑法第39条において「心神喪失者の行為は、いかなるものであっても罰しない」と定められているためです。

    ●被害者が告訴しなかった
    器物損壊罪は親告罪です。被害者が被害届を提出して処罰をのぞむ「告訴」することによって立件されます。告訴前に示談が成立し、被害者が被害届を取り下げ告訴しなければ、罪に問われません。

    繰り返しになりますが、上記の「器物損壊等罪に問われないケース」についても、刑事責任は問われません。しかし、民事上の損害賠償責任は発生します。したがって、損害賠償請求が起こされた場合には、賠償金を支払う義務が生じます。

2、器物損壊事件の早期解決に向けた3つのポイント

器物損壊事件において、早期解決のためのポイントは3つあります。

  1. (1)示談の早期成立を目指す

    もし他人の物を損壊もしくは傷害してしまった場合は、まずは示談を目指すことが有効な手段となります。器物損壊等罪は親告罪のため、被害者が告訴を取り下げれば、刑事罰には問われないためです。

    なお、示談交渉は賠償金の決定と、被害者が告訴に至る前に妥結することが最大のポイントです。交渉を迅速に行うには、これらの賠償金の相場に詳しく、交渉に長けた弁護士に依頼して、交渉を行うことをおすすめします。

    賠償金の支払い内容と謝罪に双方が納得すれば示談は成立します。さらに、被害者が告訴を取り下げてもらえたら、刑事事件化は避けられ、一件落着となるでしょう。

  2. (2)早期釈放を目指す

    犯行が悪質、被害額が高額、処罰感情が強いなどさまざまな理由から、被害者に告訴され、器物損壊等罪による逮捕に至ってしまうこともありえます。この場合、警察で取り調べを受け、48時間以内に検察官に送致されます。

    送致後は、さらに身柄拘束を続け取り調べる必要があると判断されたならば、24時間以内に、裁判所に対して「勾留(こうりゅう)請求」が行われます。勾留は、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるときにのみ認められます。罪を犯した嫌疑は晴れなくとも、勾留する必要がないと検察官に認められれば、「在宅事件扱い」として釈放され自宅に帰ることができます。以降は、出頭要請に応じ取り調べを受けます。

    他方、勾留が裁判所に認められた場合、最長で20日間という長期間にわたり身柄を拘束されてしまいます。したがって、逮捕から勾留請求に至る前、72時間以内に捜査機関に対し弁護活動を開始することが重要なポイントとなります。

  3. (3)不起訴の獲得を目指す

    逮捕や勾留に至った場合も、引き続き弁護活動や示談交渉を行い、不起訴獲得を目指します。

    取り調べの結果、「嫌疑なし」または「被害者による告訴状の取り下げ」が行われた場合は不起訴となります。勾留期間内であっても、不起訴の判断が下されれば、その時点で身柄は解放されます。前歴は残りますが、処罰はされません。つまり前科はつかないということです。しかしそれでも、民事上の賠償責任は問われます。

    早期の身柄釈放や起訴を回避するためには、刑事事件の実績豊富な弁護士の助けが非常に重要となるでしょう。特に逮捕から勾留が決まるまでの72時間は、家族ですら面会が許されません。外部との接触を絶たれた孤独な状況での取り調べが続きます。

    しかし、弁護士に依頼すれば、接見に制限を受けている期間中でも何度でも自由に接見することができます。状況を正しく知り適切な弁護活動を行えるだけでなく、状況を伝え聞くことも可能です。逮捕されて動揺している本人にとって、精神的な支えとなるでしょう。

3、器物損壊を否認する場合

以下のようなケースでは、器物損壊等罪を否認することが考えられます。

  • 器物損壊が故意ではなかった
  • そもそも損壊行為をしていない


器物損壊を否認するならば、警察官や検察官の取り調べに対し、どのように応じるか慎重にならなければいけません。取り調べで作成される調書は、ひとたび署名と押印をしてしまうと、その後の裁判によって撤回することは極めて困難となるからです。

それでも逮捕されてしまえば、警察や検察に対し、たったひとりで取り調べ受けなければなりません。状況によっては非常に厳しい言葉による取り調べを長時間受けねばならない可能性もあるでしょう。そのため、黙秘や否認を続けるには、弁護士との接見を通じて、法律の知識を背景にしたアドバイスと支えが必須となると考えられます。

また、無罪を証明するための証拠を集めるなど、自分の代わりに動いてもらうことができます。当然ながら、裁判となった際の弁護も引き続き依頼することができます。

4、まとめ

器物損壊等罪であっても、有罪となれば前科がつきます。将来への影響を最小限にとどめるには、弁護士に依頼することがもっとも確実です。

失業や退学など、社会的制裁を受ける事態にならないためにも、万が一、器物損壊の疑いをかけられたならば、すぐにでも弁護士にご相談ください。ベリーベスト岸和田オフィスでは、示談交渉や刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士があなたために力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています