介護休暇中の給料はどうなる?│ 介護休業給付金の申請方法も解説
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令和3年1月、改正育児・介護休業法が施行されました。大阪労働局の雇用環境・均等部 指導課では、「育児・介護休業法」がスムーズに施行されるように、相談・援助を行っています。
しかし、実際に会社に勤務する労働者が介護をしなければならない状況になった場合、十分に対応することは、まだまだ難しいことも多いでしょう。また、労働者には介護休暇を取得することが認められていますが、介護休暇をとると支払われる給与はどうなるのかも気になるところです。
今回は、介護休暇についての基本的知識から、介護休業給付金の利用まで、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。
1、介護休暇とはどのような制度か
介護休暇とはどのような制度なのでしょうか。まずは、介護休暇についての基本的な知識について説明します。
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(1)介護休暇とは
介護休暇は、育児介護休業法という法律に基づいて定められた休暇のひとつです。介護休暇とは、家族が要介護状態になった場合に、労働者に対して与えられる休暇のことをいいます。
家族の介護が必要になれば、さまざまな事情から会社を休むことが多くなるでしょう。有給休暇が残っている方は、有給休暇を消化して対応することもできますが、有給休暇だけでは足りないという場合や、そもそも有給休暇が残っていないという場合でも、介護休暇を利用することによって、家族を介護しケアするために休暇を取得することが可能になります。 -
(2)改正により時間単位での取得が可能になった
令和3年1月1日から改正育児介護休業法施行規則が施行されるようになりました。この改正によって、すべての労働者が介護休暇を時間単位で取得することが可能になりました。改正前は、1日単位や半日単位での介護休暇の取得しか認められておらず、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者については介護休暇の取得は認められていませんでした。
しかし、今回の改正によってすべての労働者を対象に1時間単位での介護休暇の取得が認められるようになりましたので、通院の付き添いなどで短時間の休みが必要な場合などには非常に便利な制度となっています。
2、介護休暇を取る条件
介護休暇をとるためには、一定の条件を満たしていることが必要です。具体的な条件と介護休暇の申請方法については、以下のとおりです。
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(1)対象となる労働者
介護休暇の対象となる労働者は、法で規定された家族を介護するすべての労働者です。対象となる家族については次章で解説します。
正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態の区別なく取得することができますが、雇用期間が6か月未満の労働者や日々雇用の労働者については除外されます。
また、労使協定を締結している場合には、以下の労働者を対象外とすることも認められています。- 入社6か月未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
- 半日単位での介護休暇の取得が困難と認められる業務に従事する労働者
なお労使協定とは、会社と労働者団体の代表の間に締結される、労働条件に関する定めです。
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(2)対象となる家族
対象となる家族は、
要介護状態にある- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母
- 子ども
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
です。
要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害によって、2週間以上の期間にわたって常時介護を必要とする状態にあることをいいます。詳しくは、厚生労働省の発表している「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」において確認ができます。 -
(3)介護休暇を取得できる日数
介護休暇を取得することができる日数は、対象となる家族が1人の場合は年間5日まで、対象となる家族が2人以上のときは、年間10日まで取得することができます。なお、年度は、会社が特に定めていない限りは、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間のことをいいます。
改正前は、半日単位が最小単位でしたので、1時間だけ休みたいという場合でも半日の休暇を取得しなければなりませんでしたが、改正によって、1時間単位での取得が可能になり、年間5日の休暇も有意義に利用することが可能になりました。 -
(4)介護休暇取得の手続き
介護休暇の取得の手続きについては、書面による申請に限定されておらず、口頭での申請も可能であるとされています。もっとも、会社によっては、所定の様式を定めていることが多いですので、まずは、会社の担当者に確認してみるとよいでしょう。
3、もし給与が出ないと言われたら
介護休暇を取得した場合の給与はどうなっているのでしょうか。会社から給与が出ないといわれたときにはどのように対応したらよいのでしょうか。
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(1)介護休暇中の給与については会社の規定次第
介護休暇中の給与をどうするかについては、育児介護休業法では特に規定がありません。そのため、介護休暇を取得した場合に、その期間を有給とするか無給とするかは、勤務先の規定次第となってきます。
福利厚生が充実している企業であれば、介護休暇の期間を有給扱いとして給与を支払うところもありますが、実際には、そのような企業はごく一部の企業に限られています。多くの企業では、介護休暇中の給与を支払わないという扱いをしていることが多いでしょう。
介護休暇を取得しようと考えている方は、まずは、自分の勤務先が介護休暇中の給与をどのような扱いにしているかを確認してみましょう。 -
(2)長期的に休むときは介護休業給付金の申請を
介護休暇と似た制度に「介護休業」というものがあります。どちらも育児介護休業法上の制度ですが、要件や取得できる日数などに違いがあります。
介護休暇では、雇用期間が6か月以上の労働者が対象ですが、介護休業では、雇用期間が1年以上の労働者が対象となっています。また、介護休暇では、対象家族が1人の場合は年間5日までの取得が認められていますが、介護休業の場合には、対象家族1人につき通算93日間の介護休業期間が認められています。3回まで分割して取得することが可能ですが、介護休暇のように年度が替わったことによって日数が増えるということはありませんので注意が必要です。
介護休業についても、その期間を有給にするか無給にするかは会社の判断に委ねられています。ただし、介護休業を取得した場合には国から「介護休業給付金」という補償を受けることが可能です。介護休業給付金の金額は、最大で賃金の67%が支給されますので、会社から給与が出ない場合でも、介護に従事する経済的負担が軽減されることになります。
長期間介護で仕事を休まなければならなくなったときには、介護休業の取得を検討するとともに、介護休業給付金の利用も併せて行うようにするとよいでしょう。
4、弁護士に相談すべきケース
介護休暇を取得しようとしたものの、会社からできないと言われたときには、弁護士に相談をするようにしましょう。
介護休暇は、育児介護休業法によって認められている労働者の権利です。介護休暇を取得するための所定の要件を満たす労働者から介護休暇取得の希望があった場合には、会社はこれに応じる義務があります。そのため、会社側から介護休暇の取得を拒否することは、認められません。
したがって、会社が介護休暇の取得を拒否する理由のひとつとしては、育児介護休業法についての正確な理解が欠けていることが考えられます。育児介護休業法は、何度も改正を繰り返しているため、専門家でなければ制度の正確な理解が難しいことがあります。
労働問題の実績が豊富な弁護士に一任し、会社と交渉をすることによって、制度の理解を促すことができ、結果として円満な介護休暇の取得につながるでしょう。
他にも、育児介護休業法では要介護状態にある家族を介護することになった場合には、所定労働時間の短縮や、始業・終業時間の繰り上げまたは繰り下げなどの措置を講じるようにされていますので、現在の勤務条件に不満があるときには、弁護士が交渉することによって改善されることもあります。
介護をしながら仕事も続けていくためには、会社の理解と協力も必要です。会社から介護を理由に理不尽な対応をされたときには、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
5、まとめ
高齢化社会を背景に、介護を理由に仕事を続けることができなくなる労働者は今後も増えることが予測されます。
しかし、介護休暇や介護休業などを利用することによって、仕事を続けながら介護を行うということも可能です。退職すれば、その後の復職も困難になりますし、何よりも介護期間中の経済的負担が大きくなってしまいます。
ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスには、労務問題についての実績が豊富な弁護士が在籍しています。介護休暇の取得でお悩みの方はまずはベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスまでお気軽にご相談ください。介護と仕事の両立に向けてサポートいたします。
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