事情聴取(取り調べ)で嘘をつくとバレる? 供述で気を付けるべきこと

2024年04月25日
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事情聴取(取り調べ)で嘘をつくとバレる? 供述で気を付けるべきこと

警察官が「事情聴取」を行う場面は、ドラマなどフィクションの世界でもたびたび登場します。いずれも警察官が厳しく犯人を追及するものとして描写されていますが、これはフィクションの世界に限りません。

何らかの容疑で警察による事情聴取を受ける可能性がある方は、「どんなことを尋ねられるのだろう?」「嘘をついたらバレないだろうか?」と不安を感じているかもしれません。実際の事情聴取は、どのような流れで進むのでしょうか。

本コラムでわかることは、大きく以下の3つです。
・事情聴取の意味、取り調べとの違い
・事情聴取で嘘をつくとどうなるのか
・事情聴取の際に気を付けるべきこと

事情聴取を受ける可能性があり不安を感じている方へ向けて、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスの弁護士が解説します。


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1、警察の「事情聴取」とは?

突然、警察から連絡を受けて「事情を聞かせてほしい」と言われれば、誰でも焦ったり緊張したりするものです。多くの人は、警察官から事情聴取を受けた経験もなければ、警察官に声をかけられるようなトラブルに見舞われたこともないでしょう。

では、警察の事情聴取とはどのようなものなのでしょうか?

  1. (1)事情聴取の意味

    警察の事情聴取とは、犯罪の容疑がある者や、犯罪についての何らかの事情を知っている者に対して、警察官がその事情を尋ねるという活動です。

    ニュースなどで登場するのは主に罪を犯した疑いがある人物に対するものですが、容疑がきわめて低い、あるいはまったくない人物から、捜査に有用な情報を引き出そうとするときにも、事情聴取が行われます。

    事情聴取の対象となるのは、まだ逮捕に至っていない被疑者や、事件の被害者、目撃者、および参考人などです。

    つまり、警察から「事情を聞かせてほしい」という連絡を受けただけでは、自分に容疑がかけられているのか、それとも単に関係者としての情報を聞きたいだけなのか、断定することはできません

  2. (2)「取り調べ」との違い

    事情聴取と似た使われ方をする用語に「取り調べ」があります。取り調べといえば、ドラマなどにおいて容疑者が警察官による追及を受ける描写がたびたび登場するので、どのようなものか想像しやすいでしょう。

    しかし、取り調べの対象となるのは被疑者だけではありません。実は、警察捜査の基本的なルールを定めている「犯罪捜査規範」によると、被害者や参考人から詳しい事情を尋ねることも、取り調べと呼ばれています。
    つまり、「取り調べ」と「事情聴取」に明確な違いはないのです。

    とはいえ、「警察による取り調べを受けた」というのと「警察から事情聴取された」というのとでは、明らかに印象が異なります。一般的には、逮捕や勾留によって身柄を拘束されている者に対する聴取を「取り調べ」と呼び、身柄拘束を受けていない、あるいはそもそも容疑がなく捜査に協力している者に対する聴取を「事情聴取」と呼ぶことが多いでしょう。

2、事情聴取で嘘をつくとどうなるのか?

警察による事情聴取において、自分が知っていることについて、それを素直に話すわけにはいかない事情がある場合もめずらしくはありません。罪を犯したのなら、逮捕や刑罰を恐れることも当然であり、真実を述べることには大変な勇気が必要になるでしょう。

事情聴取で嘘をつくと、その後はどうなるのでしょうか。

  1. (1)事情聴取で嘘をついても「偽証罪」に問われない

    前提として確認しておきたいことは、たとえ警察の事情聴取に対して嘘をついたとしても、そのことをもって直ちに犯罪にはならないということです。

    刑法第169条には「偽証罪」という犯罪が定められているので、事情聴取で嘘をつくと偽証罪になってしまうのではないかと心配する方も少なくありません。

    偽証罪として罰されるのは「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき」であり、裁判の場に呼ばれ、宣誓をした証人が嘘をついたときにのみ適用されます。事情聴取はあくまでも捜査の途中段階であり、裁判ではないので、偽証罪とは無関係です。

  2. (2)罪に問われなくても嘘をつくべきではない

    事情聴取で嘘をついても罪には問われませんが、だからといって嘘をついてもよいとはいえません。
    できる限り真実を述べるようにしましょう。

    すでに警察が証拠を確保しておりきわめて容疑が濃厚であるのに、「やっていない」「知らない」などと嘘をついていると、警察は「逃亡や証拠隠滅を図るおそれがある」と判断します

    ある程度の容疑があれば、事情聴取という名目で呼び出しを受けた場合でも「供述調書」が作成されるおそれがあります。

    供述調書とは、警察官が供述人から聞き取った内容をまとめる書類です。嘘を述べて警察に供述調書を作成されてしまうと、あなたが「嘘をついた」ことの証拠になってしまいます。ほかの捜査とあわせて容疑が固まれば、「任意の事情聴取では罪を認めなかった」として、裁判官が逮捕状を発付する理由になってしまうかもしれません。

    逮捕を避けたいと考えるなら、嘘をつくのは危険です。当初から容疑を認めて素直に供述していたという事情があれば、逮捕を回避できるかもしれないだけでなく、反省しており更生の可能性が高いとして、検察官による処分や裁判官が下す判決が軽い方向へと傾く可能性もあります。

3、事情聴取を受けるときに気を付けたいポイント

警察から事情聴取を受けることになった場合は、ここで挙げるポイントに留意しましょう。

  1. (1)むやみに出頭を拒否しない

    事情聴取から逃れたいという思いがあっても、正当な理由があるわけではないのに出頭を拒むのは危険です。容疑が強いにもかかわらず事情聴取に応じないと、「任意捜査では事件の真相が明らかにならない」として、逮捕の要件を満たしてしまうおそれがあります。

    なお、事情聴取はあくまでも任意の方法です。仕事の都合がつかなくても、勤務後の時間や休日などを指定すれば大抵は調整してもらえます。くれぐれも、「そのうち出頭する」などとだけ答えて日程調整に取り合わない、警察からの連絡を無視するといった対応は控えましょう

  2. (2)参考人でも嘘の供述をしない

    自分に容疑が向けられていない立場でも、嘘をつくべきではありません。犯人をかくまう目的で嘘をついた場合は、刑法第103条の「犯人隠避罪」に問われるおそれがあります。

    また、無実の人に容疑を仕向けるような嘘をつくと、刑法第172条の「虚偽告訴罪」に問われて厳しく処罰されるかもしれません。

  3. (3)供述調書の内容を確認する

    事情聴取の内容が供述調書として録取された場合は、どのような内容でまとめられているか慎重に確認しましょう。

    供述調書は、供述人が署名・押印し、作成者である警察官が署名・押印した段階で公文書として成立するので、その後から訂正をすることはできません。もし、警察にとって都合のよい内容にまとめられていても、後から調書の内容を変えることは不可能なのです。

    供述調書が作成されると、署名・押印の前に内容の読み聞かせや閲覧の機会が与えられます。ここで訂正を求めないと、そのまま誤った内容の供述調書が作成されてしまうので、納得できる内容になるように訂正してもらったうえで署名・押印しましょう。

    どうしても納得できる内容にならなければ、署名・押印を拒否することも可能です。

4、事情聴取や取り調べに不安があるなら弁護士に相談を

警察から事情聴取のための呼び出しを受けている方、なかでも犯人として容疑をかけられており厳しい取り調べが予想される方は、すぐに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)取り調べに対する対策についてアドバイスが得られる

    事情聴取や取り調べに無策で臨むのは利口とはいえません。容疑をかけられている本人には、不利益な供述を強いられないという「黙秘権」や、暴力・脅迫を受けない権利が保障されています。もちろん、参考人としての事情聴取であっても暴力や脅迫、誘導などがあってはなりません。

    不当な事情聴取・取り調べに備えるため、供述人に保障されている権利を十分に理解する必要があります。場合によっては、取り調べの様子を録音・録画するよう申し立てるなど、取り調べの状況を証拠に残す必要もあります。

    個々人でこれらの対策を講じるのは難しいので、警察の捜査方法や刑事事件の進み方を理解している弁護士にアドバイスを求めましょう。

  2. (2)違法な事情聴取・取り調べに対抗するためのサポートが得られる

    暴力や脅迫など、取調官の違法な手段によって引き出された供述は証拠として認められません。
    しかし、警察はまるで正当な事情聴取や取り調べによって供述を得たかのように刑事手続きを進めようとします。

    違法な事情聴取・取り調べがおこなわれた場合は、捜査機関への抗議や裁判官に証拠を示すといった対抗策が欠かせません。個人での対応は難しいので、弁護士に相談してサポートを求めましょう。

5、まとめ

警察による事情聴取では、たとえ罪を犯したことが事実であり、正直に話すことが自分にとって不利益をまねく危険があっても、基本的に嘘をつくべきではありません。嘘をついてしまうと、さらに不利な状況に追い込まれてしまう危険があります。

とはいえ、策を講じることもせず、警察に従ってありのままを述べてもいいものか、対応に悩んでしまうでしょう。警察から事情聴取を求められているなら、事前のアドバイスや対策が欠かせません。

事情聴取や取り調べの際には、ベリーベスト法律事務所 岸和田オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が全力でサポートします。

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